第2章狸のお仕事
ある日、私が仕事を終えて部屋に戻る途中、狸達とすれ違った。
狸たちは私の方を見ると言った。
「忙しい。忙しい。」
私は狸たちと少し会話をしてもいい気分だったが、忙しいようなのでそのまま通り過ぎた。
すると、狸たちは私の方をじっと見つめて、さきほどより大きな声で言った。
「忙しい。忙しい。」
もしかして、話を聞いて欲しいのだろうか。
私はそう思い狸達に話しかけた。
「何か。忙しいのか?」
すると狸たちは嬉しそうに言った。
「陛下の質問にはお答えできないほどに忙しいのです。」
私は言った。
「本当は聞いて欲しいのだろう。言ってしまえよ。」
すると、陸が顔を真っ赤にして手で顔を隠して言った。
「陛下は意地悪だ。」
海が言った。
「これは言わざるを得ない。」
空が言った。
「煮干を運んでいるのです。」
私は狸が煮干を運ぶ理由が分からなかった。
それで、偉そうに話す理由も全く分からなかった。
そこで、私は狸に尋ねた。
「お前達。何でそんな事をしているんだ?」
すると陸はがっかりした様子で答えた。
「陛下にはがっかりだ。」
海が言った。
「煮干を運ぶ理由など一つしかないでしょう。」
空が言った。
「祭りですよ。祭り。」
祭り?
もしかして私が祭りを開催しようとしていることに狸達が気付いたのだろうか。
怪異の中には、祭りを好む者も多い。
私の祭りの便乗してなにか行なうことを企画しているのかもしれない。
そこで私は言った。
「意外だな。お前達が働くとは思わなかった。」
すると陸は青ざめた顔で言った。
「当然ですよ。」
海は、変な顔で言った。
「我々は陛下の身内のような者です。」
空が真顔で言った。
「祭りの失敗は陛下の顔に泥を塗る事になります。」
私は狸たちの言葉になんだか嬉しくなった。
たしかに、よく顔を見る気はするが、狸達がそこまで私のことを大切に思ってくれているとは思わなかったためである。
私はかがんだ体勢になり狸に手を伸ばしていった。
「ありがとう。なんだか嬉しいぞ」
すると、陸、海、空は差し出した私の手にちょこんと自分達の手をのせた。
そして海が言った。
「これで李弘も終わりだな。」
私は言った。
「お前達が私についたところで形勢に影響はないぞ」
私は狸たちのいつも通りのおかしな様子に苦笑いを浮かべたのだった。




