第22章お節介狐と契約者
それからというもの、楊玉環は悠基の下へ度々訪れるようになった。
二人は、下らない話しから、食事、おしゃれの話、恋の話まで様々な話をした。
そんなある日、楊玉環が悠基の部屋に入ると驚いた表情をうかべた。
悠基が涙を流していたからである。
楊玉環は言った。
「悠基。どうしたのよ。何かつらい事でもあったの。」
悠基は楊玉環を見つけると言った。
「楊ちゃん。お義兄ちゃんが。お義兄ちゃんが。殺されちゃうよ。」
楊玉環は驚いて言った。
「どういう事?」
悠基は言った。
「分かんない。でも、殺されるみたい。それが嫌だったら、宮廷まで出て来いってお母さんが言ってる。」
楊玉環は言った。
「まだ、殺されたわけじゃないのね。」
悠基は楊玉環の言葉に再び涙を浮かべた。
「無理だよ。お母さんは私の命乞いを受け入れるほど甘い考えはしてない。どうせ、私を罠にはめようとしているだけ」
そして怒鳴るような声で楊玉環に言った。
「どうして?私はこれまで良い子にしてきたよ。真面目に生きてきたよ。そうすればきっと報われるって。私も幸せになれるかもしれないって。ようやく思えたのに。どうして、こんな目に遭うの。私が何をしたっていうのよ。」
楊玉環は人間の姿に変わると悠基を強く抱きしめた。
そして言った。
「悠基。あなたはきっと幸せになれる。それは私が保証するわ。でもね。今のままじゃ駄目。良い。世の中は真面目に生きてきたものが、全て報われるほど甘くはないわ。でも、真っ直ぐ生きてきた人が少しだけわがままを言ったとき、それをかなえたいと思う人はこの世界に沢山居るはずよ。私みたいにね。」
悠基は楊玉環の言葉に何かを感じたようだった。
そして言った。
「楊ちゃん。私ね。力が欲しい。私や私の大切な人を虐げる者たちから、守る事が出来る力が。」
その言葉に楊玉環は言った。
「いいわ。与えましょう。私と契約しなさい。私の力のすべてをあなたに与えるわ。」
その言葉に悠基は言った。
「ありがとう。楊ちゃんにだったら何をあげても良いよ。代償に私のすべてをあげる。」
しかし、楊玉環は首を横に振った。
「いらないわよ。言ったでしょ。自分を大切にしなさいと。私ごときの契約じゃ、あなたとは全くつりあわないわ。」
悠基は言った。
「何が欲しいの?」
楊玉環が言った。
「そうね。まず、ライチよ。私に定期的にライチを届けなさい。あと、私の尻尾の手入れも必須ね。それに、私を放っておいては駄目よ。私が遊びたいといったら一緒に遊びなさい。辛気臭いのも駄目よ。毎日楽しそうに生きなさい」
悠基は涙を流して言った。
「何それ。そんな条件で契約する怪異なんて聞いた事ないよ」
楊玉環は笑って言った。
「当然よ。私はその辺の並みの怪異とはものが違うもの。」
こうして楊玉環と悠基は契約を結んだのだった。




