第16章李林甫の疑問
楊玉環が李憲の暗殺を謀ったが失敗し逃走したという報告を受けた李林甫は悠基から楊玉環を捜索するという命令を受けた。
しかし、命令を実行せず、陽国忠とともに庭でくつろいでいた。
陽国忠は大きくあくびをした後、言った。
「働かなくていいのか?」
すると李林甫は答えた。
「ええ。陛下が好む人間は一人でも少ない方が良いですから。」
李林甫の言葉に陽国忠は笑みを浮かべた。
「なるほどな。お前は本当にあの女が好きだな。」
陽国忠の言葉に李林甫も笑みを浮べ答えた。
「否定はいたしません。それよりもあなたに聞きたいことがあります。」
李林甫の言葉に陽国忠は言った。
「良いぞ。ほかならぬお前の質問だ。たとえ本当は言ってはならないことだったとしても、何だって答えよう。」
すると李林甫は言った。
「実は、楊玉環が李憲殿の暗殺を試みた際、陛下が楊玉環との契約を切ったと聞きました。本当でしょうか。」
楊国忠は言った。
「本当だろうな。少なくとも今、あの女と妹の契約が切れているのは確かだ。」
楊国忠の言葉に李林甫は首をかしげた。
「だとすると、大変疑問です。つまりは、陛下はいつでも自らの意思で楊玉環との契約を切る事ができたという事ですよね。楊玉環は陛下との契約により陛下に強大な力を与えました。おそらく陛下は怪異と比較しても上位に行くほどの強さでしょう。それだけの力を人間に与え、契約も人間の意志でいつでも切れるようにする。一体彼女はどうしてそんな陛下に都合の良い契約を結んでいるのでしょう。彼女は怪異でそれも相当な大物だ。陛下は最終的に彼女との契約でどの様な代償を支払う事になるのですか?」
李林甫の言葉に陽国忠は呆れた様子で言った。
「代償か。特にはないな。」
すると李林甫は驚いた様子で言った。
「代償がない?ではなぜ彼女は陛下に力を貸しているのですか?」
楊国忠は言った。
「さあな。多分、気に入ったんだろ。お前がどう思っているかはしれないが、怪異なんてそんなもんだ。人間を騙したり、罠に落とそうとする怪異も居ないわけじゃないが少数派だし、大抵は閻王と一緒に封印されている。今、活動してる怪異の大半は、なんも考えず適当に生きてるやつらだよ。」
李林甫は言った。
「適当ですか。私はそうは思えません。たしかに狸などはなにも考えていないのかもしれない。ですが、楊玉環は違う。彼女は閻王の妻です。今回も李憲の暗殺を企てましたし、彼女の存在には怪しい点が多い。結局のところ、彼女は閻王復活と言う大きな筋書きを実現させるために陛下を罠にはめようとしているのではないのですか?」
しかし、楊国忠は首を横に振った。
「それはない。あいつは怪異の中でも気ままな方だ。俺とかに比べると少ししっかりしているが根は変わっていない。美味しいものを食べて、寝て、ちやほやされれば満足なんだ。閻王なんていう封印されている男のために何かするようなお人よしじゃないさ。」
李林甫は楊国忠の言葉を飲み込み、自らに納得させるようにいった。
「そうですか。彼女は脇役なのですね。はー。閻王と陛下の戦いに私が加われるようになるのはまだ当分先の事になりそうだ。」
楊国忠が言った。
「かかわっても良いことなんてないと思うがな。ただまあ関わりたいなら玉は大事に持って置けよ。あの玉があるかぎり、お前はたんなる脇役にならずにすむ。」
李林甫は楊国忠の言葉に深く頷いたのだった。
今日の16時にも更新を行ないます
※追記。更新は17時半頃になります。すみません。




