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大切なお義兄ちゃんを守るために皇帝になりました  作者: 米田薫
第3編皇帝陛下と宗教改革
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第15章雪女衣の最終特訓(前編)

それからしばらく時間が経った。

雪女衣は相変わらず練習にいそしんでいた。

最近の練習は主に3つ、走り込み、太極拳、そしてお義兄ちゃんとの実戦練習である。

実戦練習ではお義兄ちゃんと戦ったり、悠々や鳥の置物による訓練も行なっていた。


そして試合が近づいたある日、私は実戦練習を行なっている雪女衣とお兄ちゃんの元へ向かった。

そしてお義兄ちゃんと雪女衣に言った。

「訓練ご苦労。今日は特別特訓をやるぞ」


私の言葉を聞くと雪女衣は驚いた様子を見せた。

「陛下。特別特訓とはどの様なものなんでしょうか?」


私は言った。

「特別特訓は言葉通り特別な特訓だ。雪女衣の羽にこの紙をくっ付ける。そして宮中の人間がこの水風船を投げつけて雪女衣を追いかける。時間内に紙をぬらさなかったら雪女衣の勝ちだ。」


雪女衣は私の言葉を聞いて、目を輝かせた。

「それは厳しい鍛錬ですね。」


すると横に居るお義兄ちゃんが言った。

「鍛錬は基礎が大切です。あまり奇をてらった練習には意味が無いのではないでしょうか」


お兄ちゃんのいう事はもっともだ。

しかし、残念な事に人生において大切な視点が抜けている。

そこで私は言った。

「意味はないかもしれないね。だけど、10年後鍛錬の日々を振り返った時に思い出すとしたらきっとこの特訓だと思うよ。」


そう。

私は雪女衣と思い出を作りたかったのだ。


すると私の意図を察したのかお義兄ちゃんが言った。

「そうですか。そういう事なら仕方ありませんね。」


私は笑顔で言った。

「当然お義兄ちゃんも参加するんだぞ」


お義兄ちゃんは言った。

「かしこまりました。」


そして私は、楊ちゃんの待つ私の部屋にお義兄ちゃんと雪女衣を私の部屋に連れて来た。

そして言った。

「じゃあ今から雪女衣は逃げて。私達もしばらくしたら追いかけるから。ちなみに、敵は私達だけじゃなくて宮中には他にも参加者が居るから気をつけてね。」


雪女衣は静かに頷いた。


私は言った。

「始めー」


雪女衣は合図を聞くと小さい足を動かして一生懸命走り出した。

それを見ながら楊ちゃんが言った。

「狩りなんて久し振りねえ。獣の血が騒ぐわ。」


私は楊ちゃんに言った。

「楊ちゃん。どっちが先に捕まえられるか勝負しようよ。」


楊ちゃんは私の言葉を聞いて不敵な笑みを浮かべた。

「あら。随分強気じゃない。良いわよ。」


「ミー。ミー。」

私達がそういう会話をしていると悠々が部屋を出て行った。


私は楊ちゃんに言った。

「あれ。悠々はやらないの」


楊ちゃんは言った。

「(こういう下らない遊びは遠慮させていただきます。)だそうよ。偉そうな猫ねえ。」


私は悠々が遊びに参加しないのは珍しいなと思ったのだった。


☆☆☆

(陛下がせっかくこの様な機会を設けてくださったのです。絶対に負けるわけにはいきません)

雪女衣は気合を入れると悠基の部屋を走って出た。

しかしその瞬間、扉の横から水風船が投げつけられた。

(危ない)


雪女衣はとっさに斜めに倒れ込み水風船を避けた。

そして、投げてきた方向を見た。

そこには李林甫が立っていた。

「よけられるとは想定外でした。陛下の部屋から始めると言っていたので、ここに居れば確実に当てられると思ったのですが。」


雪女衣は驚いた様子を見せたがすぐに覚悟を決めて言った。

「李林甫様。私の特訓に付き合っていただきありがとうございます。」


すると李林甫は笑みを浮かべて言った。

「気にしないで下さい。私は陛下に構っていただきたいだけなので。」


そして李林甫は大量の水風船を投げつけた。

雪女衣は特訓の成果かそれらを全て完璧にかわし、そのまま使用人の部屋の方向へ向かった。


「人間から逃げられるとお思いですか?」

李林甫は雪女衣を追いかけた。

しかし、体力の無さから最終的には付いていけず、雪女衣に巻かれてしまった。


雪女衣はそのまま使用人の間の方向へ走った。

しかし、要所、要所に使用人が待ち構えており徐々に先に進むことが出来なくなって行った。


そしてついに進む事も、戻ることも出来なくなった頃雪女衣は悠基の姿を見つけた。

悠基は従う官僚と使用人たちに地図を見ながら細かく指示を出していた。

「よし。次はこの甲の地点に使用人を配置。丙はもうこないから切っていいよ。」


(さすが陛下です。采配や指揮に優れています。これは頭を使わなくては勝てませんね。)

雪女衣はそう思い気合を入れた。

するとただの壁と思っていた場所から穴が開き、そこから声が聞こえた。

「こちらに逃げると良いと思います。」

狸の陸、海、空だった。


「ありがとうございます。」

雪女衣は感謝すると、その穴の中に入った。


中は小さな空洞となっており、そこに3匹と1羽は身を寄せ合って隠れた。


「おかしいなあ。もう逃げられる場所は無いはずなのに。何か想定外のことが起きたのかな?」

外からは悠基の声が聞こえた。


(危なかったです)


そして悠基が去り雪女衣が一息つくと陸が言った。

「もう。大丈夫です。危ないところでしたね。」


雪女衣は言った。

「ありがとうございます。」


すると陸が言った。

「気にしないで下さい。あなたは命の恩人ですから。」


雪女衣は思いがけない優しさに驚いた様子だった。

すると空が言った。

「情けは人のためならずだ。」


それに対して海が言った。

「狸は人ではないのでは?」


空が言った。

「じゃあ。助けなくても良い?」


空の言葉を聞き、海が思いついた言った。

「鳥を捕まえれば、陛下が喜ぶかも」


空が言った。

「世間の狸に対する冷たい目も解消されるかもしれない。」


そして海と空は何をするでもなく、じりじりと雪女衣に近づいて行った。

するとその間に陸が立ちふさがった。

「だめです。恩人を売ることは仁義に反します。」


海が言った。

「なにが駄目なんだ?」


空が言った。

「踊る事じゃないか。」


海と空は理由も無く踊りだした。

それを見た陸は厳しい表情を浮かべていたが、最終的には意味も無く踊りだした。


「皆様。ありがとうございます。」

雪女衣は3匹に礼を言い、隙間の空間から飛び出し、再び走り出したのだった。


後編は今日の16時に更新します。

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