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大切なお義兄ちゃんを守るために皇帝になりました  作者: 米田薫
第3編皇帝陛下と宗教改革
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第9章雪女衣の特訓(座学編)

ある日、私が部屋の戻るとお兄ちゃんの前に、雪女衣と悠々が座っていた。

私は言った。

「何してるの?」


するとお義兄ちゃんが答えた。

「座学ですよ。雪女衣に兵法を教えようと思いまして。」


私は闘鶏に兵法は少し大げさでは無いかと思った。

しかし、発想がお義兄ちゃんらしくて嫌いではないので話を聞いてみたいと思った。

そこで言った。

「私も聞いて良い?」


お兄ちゃんが答えた。

「ええ。構いませんよ。」


私は悠々や雪女衣の横に座った。

なんだか学舎に入ったようで少し新鮮な気分だった。


お義兄ちゃんは言った。

「では始めます。兵法は戦における勝ち方のみでなく、戦を回避する事や戦に拠らずして勝利する事にも重きを置いています。しかし、今回は我々に戦わないという選択はありません。そこで、兵法のうちで、実際の戦の行ない方について言及されている部分を中心に話を進めて行くことにしましょう。では質問です。戦において最も重要な事は何ですか?」


すると悠々が答えた。

「ミー。ミー。」


そして雪女衣が言った。

「悠々さんは爪の手入れだと仰っています。」


私は悠々の答えが猫らしくて良いなと思った。

また悠々は実際に毎朝必ず爪の手入れをしている。

朝起きたらとりあえず、前日の二日酔いのため水を飲みに行く楊ちゃんとは大違いだ。

常に戦を行なう準備が出来ているといえるだろう。


するとお義兄ちゃんが言った。

「発想自体は間違いではありませんね。最も重要な事は準備です。」


雪女衣が感心した様子で言った。

「準備ですか。戦いが始まる前に勝敗が決しているという事ですね。」


感心した様子の雪女衣に私が言った。

「どこかに書いて置いたら? 忘れちゃうかもしれないし」


それに対して雪女衣は困った様子で言った。

「そうですね。ですが、私は筆を持つ事が出来ないのです。」


私はそういわれて気付いた。

そうか。

雪女衣は鳥だから筆が持てないのか。

悠々は口で筆がもてるがくちばしでは難しいのだろう。


すると悠々が鳴いた。

「ミー。ミー。」


雪女衣はそれを聞いて嬉しそうな表情を浮かべた。

「えっ。代わりに覚書をして下さるんですか? ありがとうございます。」


悠々は鳴いた。

「ミー。ミー。」


私には悠々の言葉は分からない。

でもきっと気にするなと言った感じの事を言ったのだろう。

最初は雪女衣のことをもっとも警戒していた悠々だが、監視と称して寝食を共にする内に情が移ったらしい。

今では、真面目で一生懸命だが少し抜けたところのある雪女衣の面倒を熱心に見ている。

私から見たら二人(正確には一匹と一羽)はまるで姉妹のようである。

妹や姉の居ない私からすると少しだけ羨ましく感じられた。


するとお義兄ちゃんが言った。

「今回のあなたの敵は林雄です。前回の戦いを経て、あなたに必要な準備はなんだと思いますか。」


雪女衣は答えた。

「もっと強くなる事です。」


それを聞くとお義兄ちゃんは渋い表情をした。

「少し抽象的ですね。では少し考え方を変えましょう。悠基様ならどうしますか?」


私はお義兄ちゃんに当てられて何だか嬉しかった。

先生と生徒として一緒に勉強している事が時間できるからだ。

またお義兄ちゃんが私の先生だったらもっと私も真面目に勉強したのにと思った。

そして私は言った。

「そうだね。私なら林雄の食事に何かを仕込むかな。万全の状態だったら勝ち目はなさそうだし。」


私は自分が発言した後、周りの雰囲気が冷めていることに気付いた。

恐らく悠々、雪女衣、お義兄ちゃんという真面目な面子には毒を仕込むという発想が凄く悪いものに思えたのだろう。

ここに楊ちゃんが居たらまた違ったのだろうが、勉強の苦手な彼女は一向に私の部屋にやってくる気配がない。

そして私は思った。

もっと可愛い答えをするべきだったのではないかと。


しかし、焦る私をよそにお義兄ちゃんはいつも通りの冷静な顔で答えた。

「悠基様の仰る手段は勝利するためには最善手かもしれません。ですが雪女衣。あなたはそれでは満足できませんよね。」


雪女衣は答えた。

「はい。私はただ勝つのではなく、勝って人々を喜ばせたいのです。ですから陛下には申し訳ないのですが卑怯な手は使いたくありません。」


そしてお義兄ちゃんが言った。

「兵法において防御は、どの様な敵の攻撃も完全に防げるように、攻撃は、一撃でしとめられる様に、環境は自分にもっとも有利なように、策は常に先手を採る事が出来るようにする事が理想とされています。ではまずは防御についてですが、林雄の攻撃としてはどの様なものが考えられますか?」


私は名誉を挽回するために率先して答えた。

「私が見たところ、体が大きすぎて動きは鈍かった。攻撃は羽で叩くか、突進の二種類しかなくて、でも一打、一打は相当強力だったかな。」


それを聞くとお義兄ちゃんが答えた。

「私もそう思います。ではそれに対する防御としては何でしょう?」


悠々が鳴いた。

「ミー。ミー。」


雪女衣が言った。

「かわすことだと仰っています。」


それに対してお義兄ちゃんが答えた。

「そうです。かわすことです。ですから体力と瞬発力。これを重点的に鍛えましょう。正解した悠々にはまたたびを差し上げましょう。」


「ミー。ミー。」

悠々は嬉しそうに鳴いた。


そしておにいちゃんからまたたびを受け取ると半分を食べ半分を雪女衣に渡した。

雪女衣は嬉しそうにまたたびを食べた。


私は悠々の姉としての行動を可愛らしく思った。

だが同時に鳥がまたたびを食べるのだろうかと疑問に思った。

もっとも雪女衣は単なる鳥ではなく怪異である。

一般の鳥と同じ様に扱うことは出来ないのだろう。


さらにお義兄ちゃんが続けた。

「では次に攻撃です。見たところ、あなたの攻撃は全く効いていませんでした。また、短期間で力を鍛えるのは難しいでしょう。ここが一番の考えどころですね。」


それに対して私が答えた。

「合気道みたいなものを習えば。詳しくないけどあれって力の弱いものが強い者を投げ飛ばしたり出来るんじゃないの。普通の鳥には技の説明が出来なくて習得できないけど雪女衣は人間の言葉が話せるからいけるんじゃない?」


その言葉を聞いてお義兄ちゃんは目を輝かせた。

「それは良い。さすがは陛下だ。特に先程、陛下に仕え始めた高力士は太極拳の使い手と聞いています。指導が居ただけないか聞いて見ましょう。」


私はお義兄ちゃんに褒められて凄く嬉しかった。

そして言った。

「お義兄ちゃん。私もご褒美が欲しい。」


それを聞くとお義兄ちゃんは困った様子を見せた。

「そうは言いましても準備がないのですが」


勿論、それは想定内だ。

だから私は言った。

「じゃあ。頭を撫でた。」


私がそう言うとお義兄ちゃんは少し困った様子を見せた。

もしかしてやりすぎただろうか。

私は凄く不安になった。


しかし、お義兄ちゃんは不安そうな私を安心させるように優しい笑顔で言った。

「仕方がないですねえ。」


そしてお義兄ちゃんは私の頭を撫でてくれた。

私は嬉くてもう他の事はどうでもよくなり満面の笑みを浮かべていた。


するとお義兄ちゃんが言った。

「次に環境ですが問題は無いでしょう。前回の戦いを観客は見ています。おそらく次の戦いでは大きな声援が雪女衣に寄せられるでしょう。」


雪女衣が答えた。

「最後は先手を取る事ですね。」


お義兄ちゃんは言った。

「はい。常に先手を取るために必要なのは実戦経験です。これは模擬戦闘で養いましょう。そうするとこれからあなたがやることは、体力の強化、瞬発力の強化、合気道の鍛錬、模擬戦闘の4つになります。良いですか。」


雪女衣は言った。

「なんだか、勝てる気がしてきました。頑張ります。」


私はやはりお義兄ちゃんは優秀な官僚だと思った。

雪女衣の漠然とした夢を明確な目標に変えてしまった。

でも本当に大変なのはこれからだ。

私は雪女衣のつらく厳しい鍛錬が少しでも楽しいものになるように色々と案を考え始めたのだった。


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