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大切なお義兄ちゃんを守るために皇帝になりました  作者: 米田薫
第1編皇帝陛下の日常
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第10章牡丹の花

ある日、貴族も集る宴にて私は楊ちゃんに牡丹の花を渡した。

楊ちゃんは嬉しそうな顔で言った。

「綺麗な花ねー。私みたいだわ」


それを聞いて私はいった。

「そうだね、この花は楊ちゃんにこそ似合うよ。」


そして私は宴に来ていた張易之に言った。

「そういえばお前の所領には牡丹が生えているそうだな。」


張易之は突然の私の問いかけに驚いた様子だったが皇帝の発言を無視できず答えた。

「はい。美しい牡丹の花が咲いております。いつも牡丹の花が咲く頃になると、花見をして楽しんでおります。」


それに対して私は言った。

「それは羨ましい。なぜ私を誘わないのだ。私は李憲たちとは違い、風流を理解する皇帝だぞ。」


それを聞いて張易之は気を良くしたのか答えた。

「はい。では、すぐにでも皇帝陛下をお呼びいたします。」


私は楊ちゃんに言った。

「美しい牡丹の花は時に、金や宝石に勝るものだ。どれ程の対価を払っても手に入れたいものだな。」


楊ちゃんは言った。

「そうですね」


そして楊ちゃんは気が乗ったのか舞い始めた。

それは牡丹の花を連想させる清楚で美しい舞だった。

私だけでなく、張易之や、他の貴族達も、楊ちゃんの舞いに見とれていた。


しかし、次の日。

国中にある噂が流れた。

張易之の所領にある牡丹の花を皇帝が欲しがっており、持ってくれば、金や、場合によっては爵位を与えるというものである。

恐らく、前日の宴の内容が少し誤って伝わったのだろう。


しかし、その結果、張易之の所領は大変な事になった。

貧困にあえいでいた領民達は再起をかけて、必死に牡丹の花を刈り取ろうとした。

また、他の所領からも多くの人々が集り争う様に牡丹の花を取り合った。

その結果、田畑はあらされ、所領は見る影も無い有様となった。

張易之ははじめ私兵を用いてそれらを止めようとしたが私兵の中にも牡丹を取りに行ったものが多く、さらに所領に侵入する民衆は凄い数であったためとめ切れなかった。

それどころか私兵の一部はこれを好機と見て反逆し、蔵を襲って、張易之の私財を奪っていった。


張易之は急ぎ、検非違使を派遣してもらうため、朝廷へ向かった。

そこでは李林甫が応対した。


張易之は李林甫に言った。

「皇帝陛下のお言葉が誤って伝わり、うちの所領は大変な事となっております。すぐに検非違使を派遣して下さい。」


すると李林甫が言った。

「それはお気の毒ですね。陛下もきっと心を痛めておられるはずでしょう。しかし、検非違使の派遣は難しいです。なぜなら貴族の所領には国の官僚といえど立ち入る事が出来ないからです。」


それを聞くと張易之は焦って言った。

「領主である私が許可するのです。立ち入りに問題はありません。」


李林甫は張易之の激しい剣幕にも反応せず、笑顔で言った。

「そうでしたか。それならば、その旨の念書をお書き下さい。所定の手続きを経た後、1週間後には検非違使を派遣できるかと思います。」


張易之は言った。

「1週間?それでは私の所領の畑がめちゃくちゃになってしまうではないか。」


李林甫は言った。

「そうですね。ですが規則は規則ですから。それよりも租税のお支払いは大丈夫ですか。貴族に様々な特権が認められるのは租税を支払うからこそですよ。支払わない場合はお家断絶、処罰となりますからね」


所領の畑が全てめちゃくちゃになり、混乱で私財の入った倉庫も破壊された張易之にもはや税を払う宛てはない。

張易之はそこで始めて自らがはめられたと気付いた。


そして地面に崩れ落ちて言った。

「謀ったな」


それに対して李林甫は穏やかなしかし、どすの効いた声で言った。

「その様な態度は感心しませんね。もしかしてあなたは李弘殿が助けてくれるとでも思っているのですか?」


張易之は李林甫が李弘の名を出した事に驚き、目を見開いて李林甫を見た。

李林甫は言った。

「無理ですよ。李弘殿は李憲殿とは違います。使えない部下はすぐに切り捨てる。所領を失い、のろいの疑いまでかけられているあなたをわざわざ救いますかね」


張易之は李林甫の発言で少し考えた様子を見せた。

そして李弘に切り捨てられる自分が想像できたのか、頭を抱えた。

「そんな。俺はどうしたら良いんだ。」


すると李林甫は優しく、張易之に近づき声をかけた。

「俺が助けましょうか。勿論、俺が求めているものを下さればですが。」


張易之に選択肢は無く、李林甫の提案にうなずく他無かったのだった。


その頃。

私の元には、牡丹を持った多くの民衆が集った。

民衆達は口々にこの牡丹が張易之の所領からとってきたものだと知って私に献上したいと言った。


それを聞いて私は言った。

「お前達。その噂は嘘だ。民の畑を荒らしてまで牡丹の花を採れと入っていない。」


すると横に座っていた楊ちゃんが言った。

「陛下。でももったいないわ。たしかに畑が荒れたのは気の毒ですけど、牡丹の花には罪はありませんわ。このまま追い返したら牡丹は道に捨てられ枯れてしまう。それは耐えられないわ。」


私は言った。

「楊ちゃんは優しいね。よし。分かった。お前達。牡丹を採ってきた者はこちらに見せに来い。楊ちゃんに相応しい美しい牡丹を持ってきた者には金を払って牡丹を引き取ってやる。」


そして私は官僚達を使って、牡丹の仕分けを始めた。

もっとも実際に行なったのは、牡丹の美醜ではなく、持ってきたものの居住地の選抜だ。

官僚達は牡丹の選抜いう名目で、牡丹を持ってきた者達の、居住地を調べた。

そして張易之の領民達が持ってきた牡丹は美しい、それ以外の者が持ってきた牡丹は醜いと評価した。


その後、全てが終わると、私は、牡丹の対価として、張易之の領民達に、3年分の生活費と、田畑の再開墾や種籾を買うのに掛かる費用を渡した。

そして言った。

「そういえば、張易之は税が払えず所領を返還するそうだ。今後、張易之の領民は公民となり、口分田として、張易之の所領をお前達に与える。経過措置として祖は3年後からで良いから、しっかり励めよ。」


それを聞いて領民達からは歓声が上がった。

これにより私は張易之の打倒に成功したのだった。

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