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あなたの全てを愛しています

話はちょいと遡り作戦タイムに

 最初から地上へと下ったアリシエンティフィナさまとは違い、リーティアリスさまは今、とても不安定な状態であるという。


 本来なら神が人の住まう世界に降りるには一旦、霊格を下げなければならないがその処理を施しておらず、神の魂をこの世に馴染ませるための憑代も存在しない。


「……とはいえ、リーティアリスは異世界の勇者たちを束ねる女神です。たとえ本人にその気が無くとも、並大抵では討ち滅ぼすことは出来ません」


 しかし、アリシエンティフィナさまであれば可能だ。アリシエンティフィナさまは否定しないが、しかし、物憂げな表情を浮かべていた。


「……なるほど。道理であの妙に人間に甘いところのあるゼフェリアウスが動かないわけです」


「アリシエンティフィナさま……その、もしリーティアリスさまがこの世界で果てたなら、その時は」


「……安心してくださいリヒト。神の魂は滅びることはありません」


 アリシエンティフィナさまは力無く微笑んで言う。それに対して俺は、何かを隠しているような気がして、じっとアリシエンティフィナさまの顔色を窺った。


 アリシエンティフィナさまは、溜息を吐いてつづけた。


「滅びることはありませんが、一旦、生まれ落ちてしまった以上、輪廻転生の輪に入らねばなりません。しかも、魔王として、望んでいなかったとしてもその罪を洗い、清めねばなりません」


「早い話が地獄行きってことかな……情状酌量の余地ってあってしかるべきだと思うんだけど」


 リースが冗談めかすが、その目は笑っていない。


「神である以上、その魂には一定の純度が求められます。神の座の空白も本来、望ましくはありません。ですからより早く終わらせるため、通常の魂よりもより激しい洗礼を受けることになります」


「……神の魂は不滅だって言ってたよね。それってさ。その地獄の苦痛ってやつを、魂の形が残ってるまんまで味わえって。そう言うのかい?」


「あなたは随分と察しが良いのですね」


 そんな……そんなのって。


「アリシエンティフィナさま、どうにかならないのでしょうか」


「……リヒト、あなた、泣いて」


 頬が熱い。あぁ、情けない。アリシエンティフィナさまは、俺なんかよりもずっと、ずっと悩んで、それで決断を下してるって分かってるはずなのに。


 それでも、悔しい。


「――まあ、方法は無いわけじゃないよ」


 突然にリースが発した言葉に、俺は耳を疑った。


「本当か!? リース」


「ああ、ま、これを実行するにあたって、やらなきゃならない覚悟も多いけどね」


「覚悟?」


「ねえ、リヒト。リーティアリスさまを救う為に人生を懸けることは出来るかい? 終わりがないかもしれない戦いに身を投じることは……」


「ああ」


 リースが全てを言う前に、断じた。


「……いいのかい? 全部聞かなくて」


「俺はリーティアリスさまを救いたい。アリシエンティフィナさまに悲しい決断なんてさせたくない。て、リースとアリシエンティフィナさまにおんぶにだっこな俺が言えた義理じゃないのは、分かってるけどさ。それでも、俺はその為に後悔なんてしないよ」


「……そっか」


 そしてリースから聞いた作戦は、予想外のモノだった。


※※※


「なるほど、よく考えたモノです。確かにこれならばリーティアリスの現状を変えることが出来るでしょう」


「女神さまのお墨付きが出たところで、聞きたいんだけど……本当にイイのかい? 覚悟がいるってのはリヒトだけじゃあなくてアリシエンティフィナさまもそうだろう。

 アリシエンティフィナさまがリーティアリスさまを討伐するのが一番リスクが無くて確実な方法であることは変わりないさ。それに……」


「私はリヒトを愛しています」


「……あー、うん、知ってる。いや、だからこそ」


「何故でしょうかね。私は、今、とてもとても、嬉しくてたまらないのです。私はリヒトの生きる様全てを愛おしく思います。愚かさも弱さも無謀も強さも優しさも。リヒトの生き様全てを私は肯定し、時に迷えば導きましょう。リヒトの魂は今、光輝いているのです。もしそれを曲げてしまうのであれば、それは彼の女神としての名折れです。ですから、私はリヒトを見守ります。この先、どんな運命が待ち構えていようとそれは変わりません。祈りましょう、私の勇者を」



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