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魔王の正体

魔王の正体とリヒトの異世界召喚が不完全だった理由の説明回です

「異世界召喚によって呼び出された勇者っていうのは即ち神の御旗を得た正義そのものとして他国の尊敬を集める道具となり得る。実際そうじゃあなくってもね。人間の都合だけで異世界召喚を行えたらどれだけ便利だろう? そう考える者はいなくなったりはしない。そして今現在、魔王が出現しているこの国は数か月前まで『勇者を召喚する』と息巻いてたらしい。権力者たちのお墨付きでね」


「世界の危機に対して特別に許される異世界召喚を政治利用しようとするとは……何と愚かしいのでしょうね。人の欲望というものは」


「そうですねぇ。で、色々とこねくり回してはいたみたいなんですけどねぇワタシほどの魔法使いなんてそういるわけはない。結局この国の異世界召喚は失敗に終わったわけだけれどこの失敗のしかたが問題だったわけだよ」


 失敗の……しかた?


「別に儀式自体が不発に終わったわけじゃない。きちんと発動した。発動してしまった。ただ、手繰り寄せたのが異世界の勇者なんかではなかったと言うだけの話」


「じゃあ……俺と同じような異世界人、なのか? 魔王の正体は」


「んー、多分だけどそれもちょっと違うんだなぁ」


 リースももったいぶっているわけでは無くどう説明したらいいものか悩んでいるように思う。


「では何だというのです? 異界から来た、人ならざる化け物の類、と」


「アリシエンティフィナさま、それは」


 それだけは違う、と俺は言わなければならないという衝動に駆られた。


 俺に情けを掛けた魔王。俺が相対したその存在は、けして化け物と呼ばれていいような存在ではないのだと、俺が信じたかった。


「ずっと気に懸かっていたことがあるんだ。何でリヒトの異世界召喚でリヒトが本来賜るはずの異能チートが無かったんだろうってね」


「……そんなことが何の関係があるんだ」


 アリシエンティフィナさまの勇者である以上、今更そんなものどうでもいいんだけど。


「異世界召喚っていうのはね。本来であれば世界と世界の境界を繋ぐ神さまというのがいて、その神さまからの手助けによって適当な世界と交渉が行われ、人材を引っ張ってくるわけなんだよ。だから人間側からしたら、神さまとの交信記録しか手掛かりが残らないことになる……まあ、ワタシはその辺りもひっくるめてシステムを再構築して異世界召喚したわけだけど」


「何故それを……どうやら私のあなたに対する認識は少々甘すぎた様ですね」


 つくづくリースリット・アシュティという魔法使いはとんでもなかったらしい。その認識はとりあえず置いておいて、話は続く。


「じゃあ俺の異世界召喚が失敗したのは、その境界の神さまの頭越しに召喚されたから?」


「いいや。事後承諾の形になるけど結局、境界を通ることになるんだからそれは変わらないさ」


「……で、しょうね」


 アリシエンティフィナさまが頷いたのを確認して、やはりそうかとリースも頷いた。


「さっきも言ったよね? 人間側からすればいわば異世界召喚を司る神さまとの交信しか残らないって。けどそんなもの神さまが応じなければ無意味だ。しかし強引にでも成し遂げたい。そう企んだ人間は意味も分かっていない術式システムに手を加えた。その結果として、リヒトが異世界召喚されるときに異能が発現しないようになった」


 その結果として? 一体それが何の関係が……


 待て。待ってくれ。突拍子もない発想が浮かんで、まさか


「なるほど……そういうことでしたか」


 アリシエンティフィナさまは溜息を吐いた。それは、ひどく物憂げで、俺の発想が当たっているんじゃないかって不安になって、


「現れた魔王の正体は、強引にこっちの世界に召喚された境界の神さまだよ」


 リースがそれを現実へと変えた。


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