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魔法使いと女神さま

『リヒトが帰って来るまでの間に、この国をよりよき国へと変える様、努めていきたいと思います』


 イレーヌさまに送り出された俺達一行は魔王が現れたという隣国へと足を踏み入れていた。


「どうしてこうなったのでしょう……」


 アリシエンティフィナさまはこの前からずっとしきりにこんな風に呟いているのだけれど俺が尋ねても『何でもありません』とはぐらかされるばかりでその御心を知ることは出来ないのが何とも心苦しい。


「まあ色々あるんだよアリシエンティフィナ様にも」


 リースは何か知っているみたいだけれどこの調子で答えてくれないし。


「それにしてもアレだね。魔王が現れた国だっていうからどんな阿鼻叫喚かと思ったら、何だ。案外平和そうじゃあないか」


「ここは魔王の根城からも離れてるからね。それに影響がないわけじゃない」


 町中だというのに人影はほとんどない。買い物に出かける主婦の姿も、駆けまわって遊ぶ子供たちの姿も。辛うじて、閑古鳥が鳴きながらも客を呼び込むために声を張り上げる気力も失くした商店が軒を連ねているだけだ。


「まあにしてもだよ、本当に魔王が降臨したというのに、略奪が横行しないというのも不自然というものじゃないか?」


「それは……」


 言われてみればそう……なのか? いや、でもそうだ。



『今回は見逃してさしあげます。だから、人々に精々触れ回りなさい。魔王と言う存在が、私がどれだけ恐ろしい存在であるのかと』



 俺が出会った魔王。それは……

「まあいいさ。アリシエンティフィナ様からも話を聞いて、ワタシも少し調べておきたいことが出来たんだ」


「調べておきたいこと?」


「今回の魔王に関しては色々とおかしい点が多い。ワタシの推察が正しければ、もしかしたらこれはリヒトにも関係する事柄であるのかもしれない。ま、確証が持てない内は話したくないんだけどね」


 一体どういう……


「というわけでアリシエンティフィナ様。私は少々離れます。具体的には一日や二日……は、かかんないかな。とりあえず結構な時間留守にします」


 何でアリシエンティフィナさまに言うんだろう。いや、このパーティの最大戦力というかアリシエンティフィナさまに比べれば俺なんて誤差くらいなもんだけど。


「……なるほど。リースリット・アシュティ。私はあなたのことをどうやら誤解していた様です……よろしいのですね」


 何の確認?


「まあ正直、女神を出し抜こうとかぞっとしないしね。それに、何だかんだでリヒトと一番強いつながりを持つべきなのはあなただとワタシは思ってる。だからいい加減やることすませてくれないとこっちの申し訳が立たないというか……というわけで、んー。気まずい場面に出くわしたら気付かれないように回れ右するから。ただ、あんまりヤり過ぎないでよ常識の範囲内で」


 良く分からないやり取りの末、俺とアリシエンティフィナさま、そしてリースは別行動をとることになったのだった。

 

アリシエンティフィナさまは愛情深いですが根底のところで慈悲深く心優しいので王女さまの事情とかを鑑みてかろうじて許容しています

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