続く悪夢、歪む心
いじめ表現でてきます。
――病院で意識を取り戻した僕が見たのは、
制服のまま僕の手を握り涙を流す兄さんと、
隣のベッドで泣きじゃくる柚月の姿だった。
僕の意識が戻ったことに気がついた兄さんは僕を抱きしめて、
「よかった。緋月が生きていてくれて」泣きながら何度もそう言っていた。
柚月は泣きながら僕を親の仇のように睨みつけて泣き叫んだ。
「どうして!どうして!ぱぱとままが……
ひーちゃんのせいだ!私のパパとママを返してよ!!」
泣きながら僕を責める柚月を見て思い知らされた。
そうか……
僕が我儘を言ったから……
お父さんとお母さんがいなくなってしまった。
(ごめんなさい。ごめんなさい。我儘言ってごめんなさい)
泣きじゃくる柚月に、柚月を抱きしめて涙を流す兄さん――
(僕が……)
「僕が、柚月と兄さんからお父さんとお母さんを奪ったの?」
いつも笑っていた柚月も、
優しくてしっかり者の兄さんも、泣いていた。
僕が我慢していれば、あんなこと言わなければ、
僕の大事な兄妹は悲しまなかっただろうに。
両親も生きていてくれたかもしれないのに。
僕に残されたのは、
2人が悲しみ涙を流す姿と、グシャグシャになった両親。
僕はもう両親の顔は思い出せない。
柚月のもとへ向かう後ろ姿と、
事故の後に見たグシャグシャになった姿しか僕には残されていなかった。
退院後、学校に復帰した僕に周りは優しくは無かった。
「親を殺した子」「親のいない子」と言われ虐められた。
……確かにその通りかもしれないが、
なぜ僕はこいつらに責められなくてはいけない?
訳が分からなくなって、僕は学校をサボるようになった。
その度に兄さんは悲しそうな顔をして、学校に電話を掛けた。
兄さんのそんな顔は見たくなかった。
虐められるよりも、兄さんが悲しむ方が辛かった。
僕に残されていたのは、大好きな兄さんと柚月だけだったから――
僕は学校に行くようになった。
奴らに屈しない。やられてなどやるものか。許してなんてやらない。
僕はやり返した。虐めてきた奴らを言い負かし、返り討ちにしてやった。
この頃だっただろう。
僕は心が冷たくなっていくのを感じていた。
傷口がふさがる前に新しく傷がついていく。
そんなことを繰り返した僕の心は、醜く歪んでいった。
兄さんに甘えることも、柚月と楽しくしゃべることも
捻くれた僕にはもう、できなくなっていた――
目には目を、毒には毒をと言うことで、緋月は再び登校するようになった後、
虐めてきた奴らに、口には口で、嫌がらせには嫌がらせで返り討ちにしてます。
緋月から見れば「やってきたんだから、当然やり返される覚悟はできてるよな」ってことです。
引っ込み思案だった緋月はこの頃から狡猾に、性格が悪くなってます。