001.望んだ状況ではありません
要望をたくさん頂いたので連載始めました!
連載化にあたり、短編とは多少設定が変わってるところがありますので改めてお楽しみください。
あと冒頭は短編で省いたエピソードもたっぷり盛り込んでいます。
※誤字脱字のご連絡は活動報告の方ににお願いします。
私は、何を間違えたのだろう――
記憶を持ったままこの世に転生し、そして六歳でとある出来事から自分の運命を知って十二年。
最悪の事態を回避すべく努力をしてきた。
人を利用し、ときには人を欺き、結果生まれた噂にも耐え。
ついでにリアルな身体の痛みにも必死に耐えた。
自分はとても頑張った!
――なのにこの状況は如何とするか。
カレン・クォルツハイム、ぴちぴちの十八歳。
信じられないことに今、目と鼻の先には我が国の王太子がいる。
金髪碧眼、完璧美貌、無敵の王太子。
すでに王者としての威厳を感じさせるその顔には甘い笑みを浮かべ、日頃から令嬢、ご婦人方を無自覚に悩殺する瞳には自分一人にだけ向けられた熱が込められている。
後ろには壁。そして顔の両側には王太子の腕。
いわゆる壁ドンである。
女子ならときめいて叶わない壁ドン。
前世今世合わせて初めて経験する壁ドン。
抱かれたい男ナンバーワンのリアル王子様に壁ドンの上、至近距離で見つめられているこの状況。
並の令嬢なら一発陥落、腰砕けになるのは間違いない。
が、カレンはあまりの出来事に完全に魂を飛ばしていた。
なぜこんなことに……
遠い目をして、ほんの二時間ほど前の記憶を辿る。