第九話 アイス
ルミを見に行くとしゃがんで何だか真剣な様子で何冊かの本を見ていた。まだ俺に気付いてなさそうだ。
「ルミ何か良い本見つけたのか?」
「うわっ!シンヤいつからいたの!?」
「ついさっきから。で、何見てたの?」
そう聞くと少し間をおいてから本の表紙を見せてくれた。『誰でも料理を作れる!貴方も挑戦!』と書いてあるので料理本だろう。
まさか!と思いルミを見ると、とても真剣に頷いた。
「そうだよ。それで見てたんだけど...どれが良いのかな?」
それは真剣になるよなと思った。さて、ルミは何故こんなに真剣に料理本を選んでいるのだろうか?
ルミが料理が下手だから?いやいや違う。むしろ上手い。では何故か?答えは簡単だ俺達の尊敬すべき師匠のためにだ。
師匠の作る料理は...なんと言うか...芸術的な域だからである。
「............一番簡単なのが良いと思う」
「やっぱり?」
料理本でここまで真剣に選んだのは初めてだな...としみじみ思った。
その後お目当ての物を買いお使いで頼まれた物は終わったのだが、ルミがまだ見て回りたいと言うので適当に歩くことになった。
*
「あ、アレ何だろう!普段見ないお店だね!行ってみようよ!」
ルミが指差す先には移動販売形式のトラックがあった。何だか甘い匂いがする。
頷き近寄ってみると...アイスと書いてある。なんだか懐かしい。
「アイスだって。食べてみるか?」
「うん。初めて見るね!」
「そーだな。買って来るからそこら辺の長椅子に座ってて」
そう言い残して店主に交渉に掛かった。
交渉を終えルミを探すと長椅子に座り寝ていた。その肩に真っ白なハトが鎮座している。何処かで見かけたことがある様な気がするのは気のせいなのだろうか?
「ルミー買って来たぞ?」
声を掛けると驚いて逃げて行ったハトが見えなくなるときに小さくあくびをしてルミも起きた。
「あ、起きた?アイス買って来たけど...食べる?」
暫くとろんとした目をしていたが、時期に目が覚めて来たのか食べると言ってへにゃりと笑った。
「ん、美味い」
俺が選んだのはホワイトフルーツの味だ。ホワイトフルーツ自体は見た事ないのだが、皮は緑色をしていて中身の果実は白色らしい。青りんごの様な見た目らしい。
しかし、味は甘くなく多少酸味が効いている。俺がいた世界の菓子類だけでなく、品種改良された甘さが当たり前だったからなのかもしれない。何となく新鮮だ。
「美味しい〜!」
ルミが食べているのはプレーン。と言っても材料にミルクが入っているので味がない分けではない。
二口ぐらい食べてからルミの視線に気が付いた。じぃ〜と効果音を付けたくなるぐらい注視していた。
それは俺に向けられているのではない。俺の手元だ。
「...食べる?」
「食べ......る」
「今の間は何?」
「葛藤です」
素直だなと思いながらどうぞと言い差し出した。
ルミは木のスプーンで一口分取り食べた。そして、至福の笑みを浮かべていた。
その後綺麗に食べ終えてお皿をお店に返した。
「で、次は何処見るの?」
「上着見るの。そろそろ寒くなるから早めに見たくてねー」
「そっか。じゃあ見に行くか」
「当たり前だよ!」
次はルミの上着を見に行く事になった。
亀更新&駄作者のコットンです。
今回は少し恋愛要素を入れようとしましたが、失敗しました(泣)
個人的にはツンデレが好きd(殴
失礼しました。
次回も頑張りますのでよろしくお願いします。