宝探し
「 なあなあ
宝探しゲーム
やらない? 」
親友の高貴が声を
かけてきた。
特に用事もないし
たまには遊んで帰るか。
「 おう!!」
校門を出て
長い長い商店街をぬけると
大きな住宅街がある。
その住宅街の
ちょうど真ん中に
小さな公園があった。
「 着いたぜー。」
高貴は鞄を
ベンチに投げ
ズボンのポケットから
赤いハンカチを出す。
「 ……もしかして
宝ってそれ? 」
「 他に何が
あるんだよ……。」
「 やめようぜー
なんか不吉だ。」
「 …あぁ
先週の殺人事件のことか? 」
「 ……殺人?
死人なんかでてたっけ……
まあいいや。
そうだよ。先週の。 」
先週、この公園で遊んでいた
はずの小学二年生の男子たちが
集団で行方不明となる事件が
起きた。
彼らの荷物はベンチや地面に
置かれていたままで
誘拐されたんじゃないかと
警察はよんでいる。
「 不思議だよなー
集団で行方不明だろ? 」
「 叫び声くらい
聞こえてもおかしく
ないしな……。」
高貴が腕を組む。
視線は俺じゃなく端にある
大樹に向かっていた。
「 おい
どっち向いてんだよ。」
「 あっ
悪りい 悪りい 」
「 高貴ならどうする?
住宅街で囲まれた公園で
お前ならどう集団拉致する? 」
「 ……警察がこの公園を
調べているときに
赤いハンカチが見つかった
じゃん? 」
高貴がハンカチを
指でいじる。
「 ああ。 」
「 行方不明者誰の物でも
なかったんだってさ。
この間、警察に聞いたんだよ。」
俺には高貴のいいたいことが
わからない。
視線がまた大樹の方へ
向いている。
「 …そのハンカチは
結局、捨てられた物と
判断され警察にとっては
用済み…… 」
何がいいたいんだ……?
高貴の表情は少し…少しだが
大人びているような…
ずっと無表情だ。
腕時計の針が五時をさした。
「 ちょっと待てよ。
まさかお前……
そのハンカチ貰ってきたのか!?」
「 ああそうだ。
なぜなら
このハンカチは……」
日が沈み、辺りが一気に暗くなる。
街灯が光出した。
このハンカチは……なんだ?
「 このハンカチは
俺のものだから。」
高貴の…?
心臓の鼓動が早まる。
ドクン ドクン と体内に
響き渡る。
なぜだ? なぜ心臓が……
これは……
恐怖心?
「 や…やっべ…
もう五時半じゃん。
悪いが俺
家帰るな……じゃあ 」
「 なあ 水疾……
最後にこのハンカチを
見てくれないか? 」
高貴がハンカチを
俺に手渡す。
暗くてよく見えないが
このハンカチは……
藍染のような………
「 そのハンカチな…
元は白かったんだよ。 」
「 え………っ? 」
「 行方不明になった小学生…
あの大樹の根元の下に
いるんだ……。」
恐怖心…
わかった。
俺はこいつのことが
怖いんだ。
「 俺が殺したんだ。
一人ずつ…
草陰で…… 」
高貴がいい終わらないうちに
俺は自宅の方向へ
走っていた。
まずい……!!
こいつはまずい……!!
逃げなきゃ………!!!
「 だ…誰かあぁぁぁ!! 」
高校生にもなって…
しかも男が情けないと
思ったよ。
だが こんな恐怖感は
初めてだ。
幸いここは住宅街……
大声で叫べば一人くらいは
駆けつけてくれる。
「 どうした!? 」
「 大丈夫か!? 」
ドッ と溢れ出る
安心感と涙 。
「 う…うわあぁぁん 」
ああ……
恥ずかしい……
誰だかわからない
じいさんに俺は
抱きついた。
今は泣きたい。
次の日
朝のニュースで
あの事件とそれに関わった
新たなニュースが放送された。
昨日の公園で
高貴がナイフで手首を切って
自殺しているとのことだった。
「 高貴くんって……
水疾兄ちゃんのお友達だった
よね!? 」
弟と両親の視線が
俺に向けられたのがわかる。
その場の、空気に耐えられず
俺は家を出た。
その日だけ
俺は学校の屋上で
学校生活を過ごした。
先生も友達も何も言って
こなかった。
高貴の遺体の近くに
遺書と見られる紙切れが
置いてあったらしい。
その内容が今朝のニュースで
公開された。
《 小学生はツツジに囲まれた
大樹の下に埋まっています。
ストレス解消するために
殺しました。 》
屋上からはこの街の全てが
見える。
もちろん公園もだ。
昨日
あいつはなぜ俺に
宝探しをしようと誘ってきたのか
あいつが死んでようやく
わかった。
風が身体を包み込むように
吹いてくる。
それと同時に懐かしい
記憶が蘇ってきた。
『 なあなあ
宝探しゲーム
やらない? 』
小学校入学したての頃
友達ができずに一人で
本を読んでいた俺に
始めて声をかけてくれた。
涙が出るほど嬉しかった。
「 なあ…
もしかして
罪滅ぼしの為に
死んだのか ? 」
答える人は
いない。
空を見上げて
空に向かって
問いかける。
「 ……ふざけやがって…」
頬に冷たいものがつたる。
死ぬ前に……
宝探し しとけばよかった。
最後にいい思い出くらい
作りたかった。
殺しは最も最悪な犯罪だけど
遺族は許さないと思うけど
それでもお前は俺の
大切な友達だ。
E N D