表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こんな夢を観た

こんな夢を観た「真夜中に雪の原で遊ぶ」

作者: 夢野彼方

 ふと目を醒ます。

 いつもの習慣で枕もとの目覚まし時計に手を伸ばすと、まだ夜中の2時だった。

 それにしては窓の外が明るいな、とカーテンを引いてみてびっくり。

「わあ、いつの間に雪が!」

 もうやんでいたけれど、どこまでが道だったか思い出せないほど、一面、雪野原だった。遠くの山からのぞく満月の光が、まるで昼間のように辺りを明るく照らしている。


 わたしは居ても立ってもいられなくなり、隣の部屋で眠る2人の妹を叩き起こした。

「……もう。まだ夜じゃん、なんで起こすのさ」妹1がまぶたをこすりながら文句を言う。

「まだ夢ん中だし――」妹2は、まるで寝言のようにむにゃむにゃと答える。

「外を見てみ。その後で、寝るか起きるか考えればいいのさ」わたしは布団を引っぺがしながら、そう促した。


 2人は面倒くさそうにベッドを降り、ガラス窓に顔を押しつける。

 たちまち、息の合った歓声が上がった。

「雪だっ、雪があんなに積もってるよっ!」

「もう一眠りする?」わたしはおどけて聞いてみた。

「寝ないよー。寝るわけないじゃんっ」

「もっと、早く起こしてくれたらいいのに。ねーっお姉ちゃん」


 わたしたちはパジャマのまま表に飛び出した。新雪は柔らかく、ぱすぱすと腰まで潜る。不思議なことに、少しも寒いとは感じない。きっと、夢中になり過ぎているせいだろう。

 いきなり首の後ろに雪玉が飛んできた。続いてもう1発。

 妹1、2の連係攻撃だった。今度はむちゃくちゃ冷たかった。


「やったなっ。よーし、見てなよっ」わたしは雪玉を転がして、ボーリングの玉くらいに育てる。「これでも喰らえっ!」

 ところが、重すぎて、3メートルほどしか飛ばなかった。せっかく作ったボーリングの玉は、積もった雪の中へと沈んでいった。

「やーい、ぜんぜん届いてないよーだ。早く、喰らわせてみなってば」


 いつの間に出来たのか、あちこちにカマクラが盛られていた。それも、かなり大きい。家代わりに住むことさえできそうだ。

「おーい、妹1と妹2。こっちにカマクラができてるぞーっ」

 妹達は雪をかき分けながらやって来た。

「わおうっ、すっごい。誰が作ったんだろうね」と妹1。

「ねえねえ、このカマクラって、お店になってるよ。ここは八百屋、隣は魚屋だ」妹2は、カマクラを1つ1つのぞき込みながら報告する。「あ、むこうのはアパレルだ。わたし、ちょっと行ってみる」

「わたしもっ」妹1もついていった。


 わたしは「本屋」に入ってみた。棚からレジまで、すべてが雪でできている。

 「今月号の雑誌」のコーナーに、「パンプキン」というマンガ雑誌が置いてあった。

「カボチャのマンガかな?」手に取って、パラパラとめくってみる。エッチな本だった……。


「なんか面白い本とかあった?」背後からいきなり声を掛けられた。妹1、2だ。

「あ、いや、別に、何もっ――」わたしは大慌てで、持っていた雑誌を後ろ手にラックへと戻す。

 さっきうなじに投げつけられた雪が、今になって溶け出し、首筋を伝う。


 背筋をいやあな感じの、冷たいものが滑り落ちていく。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 素朴ですてきなお話だと思いました。 とくに「ぱすぱす」という表現は面白かったです。ぼくの頭のなかに完全になかったものなので、「やられた!」と思いました。
2014/05/21 16:34 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ