みざちゃんは天才です
「1時間経ったぞ。ちゃんと教えたか」
スーツの男がドアを開けて部屋へと入ってきた。
吸っていた煙草を灰皿へと押し付け、火を消した。
「おー、もうバッチリ!はやく続きやろうぜ!」
少女は笑顔で返す。
そして、今度は丁寧にサイコロのスイッチを押した。
【東1局9巡目ドラ6萬】
スーツの男は驚いていた。
たった1時間なのに、少女の手付きはとても自然であり、どこか威圧感を感じた。
どこまで理解しているのか解らないが、先程までとは違う雰囲気を纏っている。
「リーチ…」
スーツ男は牌を横に曲げた。
【スーツ男河】
北南発2筒1筒1萬5索7萬8萬
「へぇ・・・良い手なんだね」
少女はスーツ男の顔を見ながら言う。
そして、5萬を河へと置いた。
「よくそんな牌を打てるな。ふざけてるのか?」
「そういうのは当たってから言いなよ・・・っと、ツモったぜ」
パタリと少女は静かに手牌を晒す。
【みざ手牌】
2346699萬456筒456索 ツモ6萬
「20004000だな」
「・・・は?6萬切れば高め3色なのに・・・?」
「いや、お前6-9萬待ちだろ?69萬が枯れてないのに78萬の順子落しなんて、そこで待ってますって言ってるようなものじゃないか」
煙草を吹かしながら、さも当然のように少女は答える。
「もうひとつに、より好形・好打点への変化が考えられるけど、あって下の3色だが捨て牌から考えにくいしな」
それを聞いたスーツの男は、苦い顔をしてただ黙るだけだった。
【東4局10順目】
「リーチ!」
少女は牌を曲げ、真っ直ぐスーツの男を見据え、言った。
「私のも当ててみなよ」
【みざ河】
9索6萬東6筒6索7索白北4萬8筒
スーツ男はツモってきた9筒ツモ切った。
「さっきのお返しか?さっきの俺と同じ5-8索待ちだと見た」
少女は男の回答を聞くと、おどけた様に笑い出し、
「0点だよ!ロン!一発3色と裏3つで12000」
と言い、ゆっくり手牌を倒した。
【みざ手牌】
34555萬345索34599筒
「6筒を序盤に切った後で最終手出しが8筒って事は、899から8切ったに決まってるっしょ。順子落とししてるんだから変則手と読んで当然。ヤクザってのも大した事ないんだね」
スーツ男は、自分の体に鳥肌が立ったのを感じた。
【南4局6巡目 ドラ2筒】
スーツの男は背中にべっとりとついた汗を感じていた。
その汗は、短時間で自分の技量を遥かに超えた少女を、無意識に畏怖した為であろうか。
部屋へ入ってきた時に垣間見えた少女の澄んだ瞳に、今や歓喜と殺意が混じっているように感じた。
男の点棒は既に5000点を下回っていた。
【スーツ男手牌】
2345556667888筒
「リーチ!」
スーツ男は恐怖を振り払うかのように、リーチをかけた。
清一色の5面待ち聴牌。
和了れば少女に近づける。
直撃もしくは高めツモならば、逆転でもある手。
男の顔が少し綻んだ。だが、それを遮るかの如く、少女は男に言い放った。
「詰んだね。私の勝ちだ」
そう言うと、少女は新しく煙草に火をつけた。
それを聞いたスーツの男は、ふざけるなと言いながら山へ手を伸ばした。
【みざ手牌】
2223456777999筒
その時、少女は滑らせるように片手で牌を倒した。そして、
「ロン、24000」
と言い残し、席を立った。
スーツ男のツモった牌は3筒だった。




