みざちゃんは麻雀に興味深々です
少女は卓へ向かって歩き出した。
だが、途中で足を止めて口元を確認し、辺りを見渡す。
「灰皿ある?」
「・・・おい」
へい、とスーツの男の近くにいた若者が返事をし、少女に灰皿を手渡した。
サンキューと軽くお礼を言うと、短くなった煙草を灰皿に入れる。
そして、コートのポケットから缶を取り出し、中に入っている煙草を取り出して咥え、新しく火を点けた。缶には大きなゴシック体で『Peace』と書かれている。
「んで、貴方と、脇のグラサン二人と私の目の前に座ってる幸薄そうなオッサンは一体なにしてんの?」
少女は興味深そうに卓を眺めながら、スーツの男に尋ねた。
「失礼な奴だなお前。・・・まあ、それはおいといて、これは麻雀って言うんだが、お前は知らないのか?」
スーツの男の変わりに答えたのは借金持ちだった。
「マージャン?・・・いや、初めて聞いたな。」
「ま、小学生じゃ知らなくても無理ないわな」
小学生という言葉を聞き、少女は睨む。
「お前こそ失礼な奴だな。確かに私は9歳の可愛い女の子だが、少なくともお前らより数世紀は長く生きてるぞ」
少し苛々した口調で返し、借金持ちに向かって煙をフーッと吹いた。
借金持ちは少し咳き込み、キッと睨む。
「おー、怖っ」
少女は、男をからかって楽しんでるのか、ニヤニヤしている。そして、
「んで、麻雀だっけ?楽しそうじゃん、私もやりたいぞ。そこ代われ」
と、野球の打者が打つ時のように、日傘を構えながら、笑顔で借金持ちに向かって言った。
先程の事もあってか、男は直ぐ席を立った。周りも何も言わなかった。
皆、『何か言えば殴られるかもしれない』と思っているのだろう。
だが、席を立った借金持ちは不安な顔つきに変わり、
「やるにしても・・・お前ルール知ってるのか?」
と、少女に疑問を投げかけた。
「知らん。が、今覚えるわ」
少女は涼しげな顔で席に座り、返事を返した。
「それに私は、南みざって素敵な名前があるんだ。次お前なんて言ったら怒るぞオッサン」
と、笑顔で付け加えた。
少し渋い顔になりながらも、借金持ちはルールを説明しようとした。
だが、スーツの男が、厳しい声で遮った。
「今はまだ対局の途中だ。どうしても説明したいってのなら、これが終わったら説明する時間をくれてやる。が、このオーラスだけはやり切れ。それとも、軽い説明ならしてやるから・・・みざって子に打たせるか?」
借金持ちは、ちらと少女を見やる。
南みざと名乗る少女は、椅子に座ったまま足をばたつかせて、卓を見ていた。
心なしか眼を輝かせているようにも見えた。
「ああ、そうさせてやってくれ・・・この局はどうしようもないからな」
ため息混じりに借金持ちは答えた。そして、
「取り合えず、絵柄を揃えろ。綺麗なほど強いぞ」
と、少女に言った。
「うーい、オッサンすげー汗臭いからシャワーでも浴びて来い」
少女は間延びした返事を返し、卓へと向き直った。




