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第四話

結果的に言えば珊瑚海海戦にて我々は撤退した、

祥鳳は大破し内地への回航を行っている最中であり、

我々も大破した甲板などを工作艦と共同して直しつつ内地へ向けて出発を始めた、

一方の五航戦はいつも通りに翔鶴が被弾したと聞いている、

横須賀へ這う這うの体で到着するとまずは自分たちの基地へとボロボロの九六艦戦と共に帰還、

基地内の航空機はすっからかんな状態であり、

九七式艦上偵察機もついに中国へと駆り出されたようだ、

これには栗城も我慢が出来ず東京へ出向こうとした、

ちょうどその時に再び辞令などが届いたのだ、

ちょうど本土も先のドーリットルの空襲などもあり一刻も早く米空母を掴まえなければならなかった、


「何ですかこの戦闘機は?」

「書類上に存在した局地戦闘機だ」

「まさか実在しているとは………」


爆撃機専門の愛知航空機が戦闘機部門に参入するためだけに作られた機体であり、

零戦とほぼ同時期に開発されていた、

ヘンシェル社との情報交換もありなんとか形にし、

慣れない水冷エンジンをそのまま作って載せてしまった問題児でもあったのだ、

He112を基にした引き込み脚の近代的な水冷戦闘機、

一式局地戦闘機または一式陸戦と書類上では呼ばれ、

翼は九九艦爆の設計を流用し、

510kmの速度と1150kmの航続距離、

増槽をつけても2000行くか行かないかのギリギリ、

それでも水冷にしては珍しく高い機動性、

そして急降下爆撃機とほぼ同等の頑丈さ、

武装は機首に12.7mmを使うがこれはビッカース社の重機関銃からの改造で、

試作機では陸軍の12.7mmが載せられていたが海軍が難色を示したため究極変更、

後に三式13.2mmに変更される、

翼内は20mm機関砲で初期は12.7mmと合わせて大火力を誇った、

爆装しての急降下爆撃も出来るため急降下爆撃機の迎撃として艦上型も少数試作されている、

世界的に見てもダイブブレーキのある戦闘機という珍しい機体だった、

おそらくこの機体が来たという事はどこかに在庫があったという事だろう、


さらに空冷機体も届いていた、

整備からは統一性がないと文句を言われたがおそらく海軍はまだ使えそうな機体をこちらに送ってきたのだろう、

さながらここは試験航空隊である、


「これって零戦ですよね」

「違う、もう一つの十二試艦戦だ」


零戦の優雅な曲線美とは違いどこか直線的な印象を受けるその機体、

印象としては一式戦闘機と二式単座戦闘機を足して二で割ったような姿をしていた、

つまりずんぐりした胴体と長めの翼といった感じである、


「つまり私たちにはこれらの機体で何をしろと?」

「今回の行き先だ、ここに書いてある」


漢字二文字が書かれていたが平仮名をかろうじて読めるドイツ娘たちには難しかった、

一方の栗城は配属先について難しそうに顔を歪めていた、

何か思い当たる事があるらしい、


「仲間から聞いてたが、各地の航空隊からエースが集められているって噂は本当だったのか」

「つまり?」

「次の戦いは文字通りの決戦だよ」


この時栗城は一種の悪い予感に襲われていた、

しかし、時代の渦は確実に彼らを表舞台へと引きずり出そうとしていた、


「搭乗員は持ち物を整理しろ、明日朝一番にここを出発する」

「今度はどこに行くんですか?」

「連合艦隊のど真ん中だ」


壁掛けの日本地図に赤い虫ピンを刺す、

日本を代表する軍港が虫ピンの根元に記されている、


『柱島泊地』





昭和十七年五月十九日


辞令


第二八〇海軍航空隊


隼鷹ヘノ便乗ヲ命ズ

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