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第一話


見えない坂道が空まで続いていた

陽炎が彼女を包む炎天下

誰もが見守り彼女はのぼっていく

何も恐る物はない

そして舞い上がった


低い倉庫で

彼女はしまわれる前も空を見ていた

今はわからない

あまりにも惜しかった


空に憧れた

空を翔ける事に



彼女の命は一筋の雲






この話は、間違いなくある二機の実験戦闘機に送る、

鎮魂歌(レクイエム)


彼女達は、1930年代後半(昭和10年以降は確実)に産まれた、

日本が昭和10年(1935年)にフランスより購入したモーターカノン砲なる物を搭載するべく空冷式発動機を降ろし、

水冷式発動機を、彼女達は機首にはめ込まれた、


スラリとしたその機体は、

美しいスパッツを履いた固定脚をもっと美しく見せた、

胴体下には冷却用のラジエーターが増設され、

重心調節や計器調節なども行われた、


しかし、この時代になってくると日本の工業能力では水冷式発動機を作るのは困難を極めた、

特に600馬力以上の大出力発動機はどうにもならなくなって居た、


仕方なく発動機は輸入した『イスパノ12Xcrs水冷発動機』を載せた、


ーしかし、この二つの発動機と機関砲がヘボだった!ー


発動機は既に開発している内に旧式化、

モーターカノン砲もドラムマガジンで60発しか搭載出来なく、

おまけに装弾不良ときた、特に日本機必須の巴戦(ともえ)においてその装弾不良を頻発した、

装弾不良が一度起これば、後の弾はただの荷物状態、それも最初の方で起こればそれこそ無駄弾多数である、


そして、彼女達は海軍に諦められ、

再び埃まみれの倉庫に戻された、


しかし、運命の歯車とは奇妙な物である、

1938年、日本は友軍ドイツより二機のメッサーシュミットBf109を購入、


Bf109は当時としては最新鋭であり、あのアメリカすらも警戒してF4Fの計画を見直した程だ、

F4Fは元々複葉機の計画だったが、

ドイツのメッサーシュミット社のBf109、

堀越二郎の九試単戦(これは後のF4Uコルセアに影響を与えたぞ)などが完成したため、

急遽単葉機に設計を変更したのだ、

そして、後にグラマン鉄工所と呼ばれる頑丈野郎が産まれるのであった、


話がそれた、

兎に角日本は必死だった、

見よう見まねで何とか次期戦闘機を物にしようと奮闘した、

しかし、結局努力は空振り、堀越二郎が零戦を設計した事で足りた、


零戦は、

知ってる通り、航続力、旋回性能において他の連合国軍の追随を許さなかった、

しかし、アメリカのスパイの伝え方が不味かった、

当時としては平凡の530km代の零戦をアメリカはスピードだけで判断し、

警戒を怠ったのだ!

当時は700代のF4Uが初飛行したこともあり、

完璧に油断していたのだ、

後にこのつけが回って来て、零戦に手古摺るのは読者も知っているので端折らせていただく、


また話がそれた、

運命の歯車は回り続けた、

Bf109の派遣パイロットを渋ったドイツは民間人を二人徴兵し、

輸送船内で猛訓練を短休憩超集中突貫でやったのだ!

ウーム、流石はドイツ人…、

そのかいもあり、何とか発着艦が出来るようになるまでになった!

そして、見事にBf109は各務原飛行場に降り立った!

そして、日本の蒼空で見事に舞った!


機体に興味を示したのは陸軍だったため、二機のBf109は陸軍に貰われていった、

後に陸軍はドイツからまた三機のBf109E-3を1941年に購入するのは別の話だ、


機体だけ貰われてもパイロットは貰わなかった陸軍は、

パイロットが発着艦出来ると言う理由でさっさと海軍に押し付けてしまったのだ、


ここで漸く本編は登場人物と主人公をむかえる、


シュトゥーラー・ミエール 特務少尉、

今回の派遣パイロットの一人だ、

彼女は堅気の娘であり、父親は町工場の職人、

彼女もまた軍需工場で働いていた、

そんな時に声をかけられたのだ、


二人目は、

ベルダ・アンナ 特務少尉、

サーカスの伝統的な旧家出身で、

曲芸飛行を得意とし、郵便飛行を一時期やっていた、

その為、意外とすんなりと機体の操縦を覚えた、


そして整備員ドーラ、ローザ、ワンガ(何故か男はコイツだけだった)の三人と


日本海軍の予備少佐、栗城だ、

彼は予備少佐だが年齢は34と若いのだ、

何故なら彼は上官の大佐を殴り倒したからだ、

船体や艦体を管理する機関科出身の彼は上官の悪徳大佐が吐いた『機関科なんて足手まといだ』の一言にブチ切れ、

その場で大佐を張り倒した、


そして、彼らに与えられたのが九六式三号艦戦である、

低めのトタン屋根の埃まみれの倉庫から引っ張りだされた彼女は、

戦闘機としては不足の性能だった、

旧式化した水冷式発動機の代用は暫くは無い、

これは後のアツタ発動機を待たねばならない(1943年頃)、

暫くは内地での訓練飛行の毎日をおくることになった、


「整備兵!早くしろ!!慌てるな!!だから違う!!!そこはこうだ!!そこ!!寝るな!!!」

栗城少佐の張り切ったこと、

整備兵は尽くに水冷式発動機の整備方法を叩き込まれていく、

モーターカノン砲も故障が多いが、

これも後の海軍が購入する二挺のMG151/20を搭載して漸く解決する


「馬鹿者!!始動の際はそっとだソット!!シャフトは調節したか!!シャフト!!!」

「あ、まだです、」

『バギギギ…パキン!』

「またやった!!!今月の部品代だけでもやばいんだぞ!!使える物はネジ一本でもいいから回収しろ!!!」

「は、はい!!」

「さっさとやらんかーッ!!!!!」

張り切る張り切る…

やはり若者の力は凄かった、


「訓練飛行は?」

「シャフトが治るまで待て、」




次回へ…

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