第六話 祝祭
ん〜……どうも気になるな…。
何故この世界はこう…なんつーか…いっつも虹が見えとるんだ?
雨も降ってないと思うんだけど…。
それと…いつまで歩かせるのでしょうか?
「そろそろですよ。」
ほほ〜う。俺の心を見透かすとは…なかなかこのお姫様もやりおる…。
「そんなことはないですよ〜。」
………。
「あのさ?周りから見ればミリアは勝手に独り言を言ってる不審者だぞ?」
「酷いです!そんなことはありませんよ!」
ま、いっか…。
それからも姫様曰く少しという時間はあっという間に20分は超していた。
途中何処かの部屋で衣服を着替えて下さいとか言われて、着慣れない服を着せられた。
しかしこれがまた軽くてカックィ〜服なんだなぁ〜。
「お似合いですよ♪」
とかミリアにも言われたのが少々嬉しかったりする。
「どうも。」
「ではこれからアスカ・フウインの祝勝と歓迎を祝して城下祭りを開催する!」
どっかのジェントルマン的な印象を見せるお爺さんが張り切って言い出した。
いやさ…もっと異世界から来た人を怪しいとは思わんのかね?
まぁこれはこれで嬉しいが…。
「す、すみません!握手して貰って良いでしょうか!?」
えっと…多分年頃のお嬢さんが握手をですか……俺、有名人になった覚えは…。
「えっと…良いですよ。」
いや、こういうしか無いでしょ?
するとお嬢さんは俺の手をギュッと握り、キャーとかいいながら走って何処かに行ってしまった。
何なんだ…いったい…。
さて、俺も少し興味が沸いたぞ。
「お!兄ちゃん!あんたがアスカってのか!?」
威勢のいいおっちゃんだこと。
「そうですけど…この武器、みして貰っていいですか?」
「おう!見てけ見てけ!」
「ありがとう。」
そう言って長い剣を手にする。
あっちの世界じゃこんな店一店もないからな…。
成る程……ここがこうなって……。
ん?この短剣……。
「お!兄ちゃん!お目が高いな!それはこっちの剣とセットなんだが、少し扱いが難しいんであまり買う奴が居ない。だがな扱えればかなり強いぞ!」
そっか…やっぱな……。
だってこの短剣…俺の太刀と同じ感じがするんだよな…。
「んじゃこれ……あ、金無かった……。」
こっちの通貨を持ってないじゃん!
いや…元の世界の通貨も持ってないんだが…。
「兄ちゃんはドラゴンをぶっ倒したんだ!それ程の実力があればこの剣も扱えるだろう!だから持って行け!」
「マジか!?サンキューなおっちゃん!これからも武器はここで買うことにするよ!」
「そうか!ならもっと武器を仕入れとかなくちゃなぁ〜!ワッハッハ」
あっちの世界の武器で生き残ってんのはピアノ線とクナイだけだもんな…。
実に有り難いな。
「あ!ここに居たのか…ハァハァ……姫がお呼びだぞ!」
あぁ…この人は俺の看病してくれた…えっと……レミリィーって人か。
「解った。んで何処行けばいいんだ?」
「私が案内するわ。」
「アスカ、貴方はこれから私の親衛隊になって貰います。」
「親衛隊って…あの?」
「そうですが…。」
さて…レミリィーに案内されて王宮だかなんだかに連れてこられた訳だが…。
何故そうなる…?
「そうですね…まだアスカには説明してませんでした…。」
「何を??」
ミリアは、軽く一回深呼吸してまじめな顔になった。
「今この世界では魔族との戦争中なのです。そしてその魔族は時々人間達に奇襲を掛けてくることがあります。私達にもいつその矛先が向けられるか…時間の問題なのです。ですからもしも奇襲があったときは、アスカに私を守って貰いたいのです。」
ふむふむ……そうゆーことね…。
下手に考え込まない方が良いな…。
「解った。だけど俺も早く元居た世界に戻りたい。それに協力してくれたら…その話を呑むことにする。」
「ハイ♪これで決まりましたね。」
そう言うと何処から現れたのやら、さっきのジェントルマン爺さんが俺に変な包み箱を渡した。
「それは貴方がこれから着る衣服です。」
蓋を開けると中にはなにやら騎士っぽい服が入っていた。
「了解しました。姫。」
「何を改まって。これからもミリア、で宜しくお願いしますね♪」
ミリアはクスクスと上品に笑いそう言った。
さてと…俺も歩き疲れたな…。
早く部屋に戻って寝ることにしよう。
少し重く感じる足で俺は歩み出す。
「よっこらせっと……。」
背中からベットにダイブする。
眠い…。
外が騒がしい…。
主役の俺抜きでなに盛り上がってんだよ……。
そして俺は重くなった瞼を閉じた。