第四話 対峙
「うっわ!?なんっじゃこりゃ!?」
一帯に広がるのはゴブリンの屍だった。
一夜共に過ごした少女(決して変なことはないぞ!)の名前はミリア・アリアと言うのだそうだ。
そしてこの世界のことを詳しく聞いた。
最初は何でそんなことを聞くの?と言わんばかりの顔をしたけど、そこは全て気付かないふりをした。
いやいや……そんな昨日ことはどうでも良い!
なんなんだ!この死体の山々は!?
まぁ…ウン…このくらい俺だって昨日ミリアが寝た後に戦わせられたけどさ…。あれはきつかったよ…御陰で寝不足じゃ!ボケ!
「どうしました?」
おっといかんいかん。
つい顔に出る癖が…。
「いんや何でもないぞ!それとあんまし下は見るなよ。」
「ハイ…。」
またか…。
後ろからこの死体の仲間だろうか?同じ姿のやつらが沢山来やがった…。
「うし…ミリア、ちとあそこの茂みで隠れててね。」
「どうして?」
「お兄さんまた面倒な人たちに喧嘩売られちゃったから。」
「そうなの……。早く戻ってきて下さいね?」
「あたりまえっさ!十分くらいで戻ってくるからね。それと後ろには気を付けるんだぞ?なんか来たら大声で叫ぶんだ。解ったな?」
「ハイ。」
「よし、良い子だ。ほら、行って。」
と言うとミリアは茂みに小走りで向かった。
さて…。
「あんまし小さい子にはグロイもん見せたくないんでね。早めに終わらせて貰いましょうか。」
そう言うと俺は太刀の柄に手を添え、走り出す。
100mを2秒台で走れる程の早さで。(氣を使うけど)
いつの間にか目の前に来たことに驚いているゴブリンを横一閃で斬りつける。
周りにいたゴブリンも巻き添えにする。
抜刀したままでもう一度逆方向に一閃する。
今度は少し距離がある。
が、一閃した剣先から氣を噴出。
カマイタチが起き、遠くにいるゴブリン共を横真っ二つにする。
それから数分…。
案外早く終わったな。
さて、ミリアを呼びにいき……
ゴォォォォオオオオ!!!
ハッ、と上を向く。
「聞いちゃいないって!!!!」
上から聞こえた音の正体は、急降下して来るドラゴンだった。
俺は一気に走り出す。
ドッゴーンッ!
さっきまで俺が居た場所はドラゴンが踏みつけていた。
あっぶねええええええええ!!!
「貴様…我の縄張りで何をしている。」
!?
ドラゴンさんがお喋りになすったよ…。
「いんや〜…何をと申されても…。帰り途中?」
「貴様…我を侮辱しているのか!!」
何故そうなる!?
「そう聞こえました?」
「我を恐れぬとは死に値する。今すぐに消えよ!」
そう言うとドラゴンさんは炎を口に溜め始めた…ってなんでさん付けしてんだろ…。
俺は全力で横に走り出す。
「消えろと言われて消える奴はいねーだろ!」
「小賢しい!」
火炎弾を三発連続で俺に向かって撃ちだした。
二発避け、一発は太刀で斬り払う。
「貴様…何故我の火炎を断ち切れる!」
「この刀は実態無き者でも何でも切れるの!」
「面白い…。ならばこれはどうだ!?」
そう言うとドラゴンは火炎を単発ではなく、火炎放射器の様にそのままはき出した。
アハハ…ポケ○ンのかえんほ○しゃみたい…。
「いやいやいや!それは流石にずるいですって〜!」
しかし俺は避けずに太刀を鞘にしまい、空いた右手に氣を集中した。
逃げるよう嫌だしね。
俺の目の前まで来た火炎に俺の手に集まった氣をぶつける。
その瞬間、火炎は俺を避けるように二方向に割れた。
「熱ッ!熱かったぁ〜!」
「貴様…人間か…。」
「それ以外に見える?アチチチ……。火傷した…。」
「良かろう…。ならば万物を砕き、切り裂く我の爪を受けてみよ!」
爪は無理ですって……。
つか受け太刀したら流石に名刀でも刃こぼれの一つはしますって…。
「おお!怖い怖い♪」
横に薙ぎ払うドラゴンの爪をジャンプで避ける。
するとジャンプした俺に向かって翼で叩き付けてきた。
「無理!避けられん!」
そして俺は氣を体中に張り、防御する。
バンッ
叩き付かれた俺は数メートル吹っ飛ばされ、岩に叩き付けられた。
「痛たた……。」
ヨイショ、と立ち上がりまたドラゴンを見る。
するとドラゴンの少し後ろの茂みからこちらを心配そうに見るミリアが居た。
ミリアに向かって俺はニッコリ笑い、また視線をドラゴンに直す。
そして数分間による攻防が開始された。
たまに生き残りのゴブリンが俺の方にばっか攻撃してきたりしたが、俺はそれを薙ぎ払いながらドラゴンと対峙している。
クソ!このデカ物だけでも手一杯だっつーの!
「そろそろ…ハァ…本気で行きますか…。」
ドラゴンにも少し疲れが見えている。
「貴様…手を抜いていたのか…。」
「まぁね…。」
「真に人間か…貴様。」
「何度言わせる。俺は人間様じゃ。」
そう言って俺は太刀を鞘に戻し、居合の体勢に入る。
ドラゴンがそのような技を知る由もなく何かの体勢に入ろうとしている。
流石に俺も真剣になる。
「風韻流奥義……」
今回がドラゴンも本気なのだろう…。
さっきまでの殺気とは比べ物にならない。
「受けてみよ人間!!」
そう言ってドラゴンは今まで二足歩行で使わなかった前足を地面に置き四足歩行にする。
そして姿勢を低くしてライオンの様に猛突進してきた。
「これなら奥義使わなくても行けるな…。」
そう言った瞬間、ドラゴンが自慢の牙で俺に噛み付いた。
しかしそれは残像…。
「何!?消えただと!?」
俺はさっきまで居た場所に残像だけ残しドラゴンの後ろに回り込んでいた。
そして俺はドラゴンの背中に向かってジャンプする。
「チェックメイトだ…。」
ドラゴンは俺の方に振り返ったが既に遅い。
「グォォォオオオオ!!」
俺の太刀がドラゴンの背中に深く突き刺さっている。
そこから噴水のように血が噴出し、俺を乗せたまま倒れ込んだ。
やっべ……流石に疲れた………目眩…する……。
そして俺はドラゴンの背で太刀を突き刺したまま、気を失った。