第三話 グランカリア
異世界 グランカリア
それが飛鳥の来た世界の名前だった。
この世界には人間の他に神族、エルフといった種族がいる。
しかし、この種族と対立した種族がいた。
魔族だ。
魔族は色々と種類があった。
最初に飛鳥が倒したブリア族。
ブリア族は魔族の中で力は物凄く強い。
しかし知能が低く、仲間意識も薄い。
ブリア族の他にはまだ3種類の魔族が居る。
魔族の中でも唯一仲間意識が強い、ゴブリン族。
個々の能力は低いがチームワークが良い。
さらに小さい体での素早い動きなどといった武器もある。
ゴブリン族は魔族の中でも知能は高い。
その証拠にゴブリン族は魔族の中で唯一武器を持って戦う。
次に、動物などを味方にする、獣人族。
獣人族はゴブリン族の様に知恵は高くはない。
しかし動物と話すことが出来る。
体には鋭い爪、牙等があり、それで攻撃してくる。
仲間意識はあるが、ゴブリン族ほどではない。
そして、魔族の中で最も強いく、高い知性を持つとされる種族。
それは、ドラゴン族。
一匹だけでも町を一つ丸焦げに出来、人間の言葉を話せる。
ドラゴン族は味方同士では争わないものの、他の種族や魔族には容赦無く攻撃する。
そう言う点でも魔族や、人間達からは恐れられている。
しかし、希に認めた人間にだけ味方するドラゴンも居ると言う噂がある。
そこはグランカリアの南方、キュルミア大国にある軍司令部の一角で会議が行われていた。
「ふむ…、ではミラレイ荒野の中心部で強力な『マナ』が観測されたというのか?フリク」
白髪交じりの老騎士が、書類に目を通しながら向かい側に座る若い男に尋ねる。
「ハイ、観測班が確かに。」
フリクと呼ばれた若い青年は簡潔に述べる。
そこに別の男が立ち上がった。
「只今受注班から連絡が入りました!」
「今はそれどころでは…」
「いえ!それがその『マナ』が観測された辺りに姫が迷い込んだとの、知らせが!」
「なんだと!?」
白髪交じりの騎士が机を叩きながら立ち上がる。
「今聖導騎士のエリート隊、レミリィーが率いるアイルクルーペ隊を向かわせております。」
「そうか…なら安心じゃ。しかし…あの場所にはドラゴンが…。」
そして会議は更に重々しい空気になってしまった。
ミラレイ荒野 昼
「いい加減飽きてきたわね…。」
そこには調査指令でここ、ミラレイ荒野に来ているアイルクルーペ隊隊長レミリィー・クレミリヤが居た。
そして彼女たち、アイルクルーペ隊を中心に幾つもの屍骸が転がっていた。
「レミちゃん…お腹空いたよぉ〜…。」
彼女はアイルクルーペ隊副隊長、ミラ・シュリフ。
「こんな場所でそんなこと言えるなんて…。」
レミリィー、年は17歳。
戦闘スタイルは片手剣に盾。攻防一対の基本的な戦闘スタイルだ。
そしてミラ、年はレミリィーと同じく17歳。しかし少し童顔なのが特徴だ。
戦闘スタイルは杖を持ち、魔法で戦う。俗に言う魔術師だ。
彼女たちは同期で、聖導騎士の中でも有名で、称号(あとで説明する)もかなり上の方である。
「それじゃ、合体魔法で片付けしちゃいますか。」
「そうしましょ〜♪」
そう言うとレミリィーは自分とミラをその場に残し、アイルクルーペ隊を後方へと後退させた。
「それじゃ、行くわよ!」
「ラジャ〜♪」
そして二人は全く同じの呪文を同時に詠唱する。
それを隙と見たのか、一匹のゴブリンが走り出してきた。
「今よ!」
「了解ッ!」
詠唱が終わり魔法を放つ。
走り出したゴブリンは粉塵のようになり、風で飛ばされてしまった。
そして後ろにいた他のゴブリンも同じように粉塵になった。
「成功成功♪」
「そうね。久しぶりにやったけどまだまだいけるわね。」
「それは良いけど…レミちゃん…お腹……。」
レミリィーは小さい溜息を吐き、
「そうね。」
と言って、アイルクルーペ隊の人数確認と共に見渡しの良い崖に踵を向けた。
「ん?」
崖の頂上に着いたその時、ミラが何かに気が付いた。
「みんな!隠れて!ドラゴンよ!」
前方何km先か、ここからは全然遠いのだが空に何か大きな影が見える。
「各自!下の茂みに隠れろ!」
その声と共にアイルクルーペ隊は茂みに走り出した。
そう、エリート隊とは言えどたった一隊だけではドラゴンを倒すことすら、致命傷を負わせることすら出来ない。
ドラゴン討伐は神族やエルフと協力してやっと倒せる程の強敵なのだ。
空に見えた影は、アイルクルーペ隊がいる茂みよりも少し前で何かを見付け、下に急降下していった。
「ねぇ……ドラゴン…何で私達がゴブリンと戦ってた辺りに降りたんだろ…。」
それはレミリィーにも解らなかった。
それもその筈。
ゴブリンを餌として食べることは多少あり、珍しいことではない…。
しかし幾ら空腹だろうがドラゴンは死体を食べないからだ。
そしてドラゴンが急降下するのは獲物を見付けたときだけ。
「もしかしたら…誰か隊の人間が置き去りに…。」
「それは無いと思うよ。だってさっき確認したじゃない。」
「だったら……。!!」
「どう…したの?」
その時何かに気が付いたレミリィーは走り出した。
「ちょ!?ちょっとレミちゃん!?」
「アイルクルーペ隊は一時待機!私からの連絡が無ければ直ちにこの場所から退避!解ったな!?」
何人からかハイ!、と戸惑いながら言う隊員の声が聞こえた。
「待って!私も!」
走り出したレミリィーと同じ方向にミラも走り出す。
「ちょっと!何でミラも来るの!?」
「理由は二つ!一つはレミちゃんが走り出した理由が分かったこと!そしてもう一つは、危ないときはいつも一緒だったこと!」
その言葉を聞いたレミリィーは苦笑いし、
「どうなっても知らないわよ。」
と言った。
そしてミラも、
「お互い様♪」
と言って笑う。
その時、ドラゴンと誰かが戦う始めた轟音が荒野に響いた…。