第二話 異世界へ
この日、学校はすぐに終わってしまった。
何かを急かすように……。
「それじゃ〜な〜。」
「おう、また明日なぁ〜!遅刻すんなよな!」
「解ったよ!んじゃな!」
「おう!また明日な!」
学校の前で俺と洋哉は別れた。
楓は今日、用事があるとかで先に帰って行る。
「あ!刀忘れた!」
朝、鬼が出た後時間がなかったので太刀をそのまま持ってきてしまっていた。
普通の人には見えないので、銃刀法違反にはならない。
「あったあった♪」
太刀を手にして、俺はまた家に踵を向ける。
家に到着した。
「なんだ。まだ楓帰ってきてないのか。」
と独り言を呟きながら自室に向かう。
自室に着く途端に俺は制服のままベットに倒れ込んだ。
その後の記憶は無い。
ふと目が覚めると深夜の3時だった。
「腹が減った…。」
俺は立ち上がり、ドアを開けた。
その時
バリン!
「あ…、ハァ〜……。かったるいなぁ〜…。」
自室の机に立て掛けてある太刀を手にして家を飛び出す。
と、思ったが今回の霊派は結構大きい。
有りっ丈の武器を持ってから家を出る。
「学校…だよな…。」
霊派の発信源は俺達が通う学校の屋上だった…。
「階段で行くのめんどくさいな…。」
俺は足に氣を溜める。
そして一気に下に放出。
屋上に大ジャンプする。
「あり?鬼さ〜んこっちら〜手ぇ〜の鳴る方へぇ〜…。って居ないし…。」
確かにここから霊派が出ていた。
周りを見渡すも、鬼すら怨霊も見あたらない。
「気の…せい?最近疲れてんのかなぁ〜…。」
その時、いきなり重力が増すような感覚が俺を襲った。
「ななな!?何事やぁ〜!新手の鬼様かぁ〜!?」
すると目の前が風景が急に歪み始めた。
「すっげすっげ!歪んどる!空間が歪んどるよぉ〜!」
この状況を普通に受け止める俺ってやっぱし大物だよな…。
「あれ!あれれ!?体が引きずられてるぅ〜!」
歪みの方に段々と俺の体が引きずられていく。
「アハハ……流石にまずい…?ちょッ!動け!マイブォ〜ディ!!!」
俺の抵抗も空しく、体は歪みの中に入ってしまった。
さて…いつまで続く?
さっきからもう10分は経ったんじゃね?
あの歪みの中に入ってからずっと落ち続けてるよね?
いい加減飽きてきたぞ…。
何で俺がこんな目に遭わなければならんのだ…。
あれか?一昨日に洋哉の家の前に腐ったパンを捨ててやったから?
それとも小さい頃ロケット花火を人に向かって撃ったからか!?
神様ホンットにスンマッセン!
今なら土下座でも何でもやりますから!
何でもって言ったけど『死』に繋がることは無理ですけどね!
って…あり?上…いや頭から落ちてるから下か…。
光ってる?
ちょっと…ちょっとちょっと!眩しいっぜ!光が大きくなってるっぜ!
ちょッ…目…開けてられないし……!
ドゴッ
「痛……って…ここ何処…?」
上を見ると二つの月が俺を照らしている。
そして周りを見渡すと、幾つか枯れ木が在るだけの荒野だった。
「地獄…でしょうか…?」
その時、後ろから大きな陰が俺の陰と重なった。
ゆっくり後ろを振り向くと、そこには大きな大ーきな怪物が立っていた。
「えっと…閻魔大王の場所に案内してくれるの…かな…?」
俺を言葉を無視して怪物は大きな拳を振り上げ、俺に向かって振り下ろす。
「シカト!?なんと無礼なッ!天誅じゃ!」
そう軽口を言いながら怪物の拳を避ける。
家を出るときに持ってきた武器の中から1cm四方の小さな四角形の入れ物をを取り出す。
俺の戦闘スタイルの一つだ。
この入れ物にはピアノ線が入っている。
そしてその中からピアノ線を取り出し、怪物の手足に器用に絡め、
「ふんどこしょ!」
一気に引っ張る。
すると怪物は五体バラバラになった。
ピアノ線は自動で1cm四方の入れ物の中に巻き戻っていく。
「見たこともない怪物だな…。なんか映画とかで出てきそうだし。」
そう言いながら五体バラバラになった怪物を突く。
「大きい割には刀使わなくてもよかったな…。」
パキッ
何か枝を踏んだような音が後ろから聞こえた。
「誰だ!」
後ろを振り向くと、そこには俺より2〜3歳下の少女が、腰を抜かしてこちらを見ていた。
小さい子にはちと刺激が強すぎたかな…。
「お嬢ちゃん。大丈夫?」
と優しく声を掛ける。
すると少女は少し涙目で、小さく大丈夫です、と呟いた。
「それは良かった。起きれる?手、貸すよ。」
と言って俺は手を差し伸べる。
そして少女は俺の手に、戸惑いながら自分の手を乗せた。
それと同時に俺は手を引っ張り、少女の体を持ち上げる。
「どうしてこんな場所に居るんですか…。」
少女は可愛らしい声で聞いてきた。
「え…っと…。それを話すには少々長話になるかと…。」
「それに変な服…。」
ん?そういえばこの子の服装…俺達の服装と全然違うな…。ってか俺の方が変か…学ランだもんな…。
「服はまぁ…置いといて、ここ何処?」
と少し額に汗を浮かべながら聞く…。
「知らないの?『キュルミア大国』よ。」
そっか……いや…ね?…想像はしてたよ…ウン…。
俺はドサッ、とその場に膝を付く。
やっべ…凄い脱力感……。
「ちょっと!?どうしたの!?」
「いや…なんでも。それとなんで「こんな場所」なんだ?」
少女の目が少し下を向く。
何か理由が在るってことか…。
「あなた…聖導騎士の人?」
ハイ?セイドウキシ?何それ。
「人違いです…。」
「だったら何でこんな場所に?」
「だから…それを言えばなが…」
後ろに殺気!?
「どうし……ンン!」
少女の口を咄嗟に塞ぐ。
俺は小声で、
「さっきのバケモン…。」
と少女の耳元で言った後、少女の口を塞いでた手を退ける。
さて…どうしたものか……ん!?
まだいんのか……。
さっき殺した怪物の近くに居た1匹の後ろからもう2匹歩いてきた。
ってか…歩く度にドシンドシンって……どんだけの重いんだよ…。
「ちと、ここで待ってて。」
「え!?でもブリアが三体もいるのよ!」
「ふむ…あのバケモンはブリアと言うのか…。」
そう言って俺は前に歩き出す。
すでにブリアは俺の存在に気付いている。
「人の話を…」
「まぁ見ていなさいよ。」
三体のブリアはこっちに走ってくる。
俺は右足を前に体勢を沈ませて右手を柄に添え構える。
一匹のブリアが長い太刀の間合いに入ってきた。
「まずは一匹…。」
俺が抜刀した瞬間、目の前にいたブリアは横に真っ二つになった。
「それにしても凄い切れ味だな…。」
と余裕を見せていると後ろから二匹のブリアが拳を振り下ろしてきた。
片方の拳をを避け、バク宙するように高く飛躍する。
「後ろががら空きだっぜ!」
頭を下にした状態で抜刀する。
そして二匹並んだブリアの項辺りを切る。
ドシン!
首が無くなった二匹のブリアがほぼ同時に倒れる。
「鬼の方がこいつよか強かったなぁ。」
そう言いながら後ろを振り向く。
そこには大きく目を見開いた少女が立ち尽くしていた。
「あなた……何者…?」
「ごく普通の一般人です。」