第3話 ダンジョンマスター
永遠に続くかと思われた螺旋階段を降りると、外へ続く扉が現れた。そして扉を開けて外に出てみれば、深く暗い森が広がっていた。
森は生き物全てが寝静まったかのように静かで、どこまで続くのかわからない鬱蒼とした不気味さを伴っていた。月明かりだけがキラキラと、地面を照らし、そのコントラストを美しいと感じた。
後ろを振り返れば、先ほどまでいたであろう巨大な石造りの塔がそびえたっており、頂上は霧か雲に隠れているのか、はっきりと見えない。塔の表面には蔦が生えており、レンガ状に積み立てられている石のブロックもひび割れていたり、欠けているところがあったりしている。かなり昔に建てられた塔なのだろう。
果たして自分がいたあの部屋はこの塔のどこなのだろうか……。
私のステータスは呪いによって全て1。この森を抜けて人里に出るなんて夢のまた夢だろう。私が強くなるには純血の華で自らの血を吸い続けて強くなって行くしかない。
1日で2%強くなるから……、
計算すれば2日後には1.04、7日後には1.14、1ヶ月後には1.81まで強くなっているだろう……。
ほんとは1回吸えば2倍とかにしたかったが、神にバレてとんでもない呪いを与えられることを考えて、あえて2%にしておいた。計算上118日目で10を突破、234日目で100を突破、350日目で1000を突破するはず。
4ヶ月くらいはほぼステータスが1から変わらないし、経験値取得効率が悪すぎて戦闘でステータスを上げることもできない。少なくともそれくらいの期間は攻撃を受けない場所で引きこもらなければならない。
不老不死があるから大丈夫と油断してはいけない。今のステータスなら捕縛・監禁は容易。拷問でもして心を折るなり、奴隷契約させたりする選択肢もあるし、何もされなくても自らの血を飲めない状態になるだけで詰むのだ。魔術的な封印をされようものなら一生出てこれないだろう。
純血の華は最強スキルだが、低ステータス時リスキーなのだ。そのカバーとして用意したのがこのスキル【ダンジョンマスター】だ。
【ダンジョンマスター】
スキル
[ダンジョン作製] ダンジョンを作成できる。ダンジョン作製の際は材料となる固形の無機物(材質は問わない)およびダンジョンボスとなるモンスターが必要。スキル行使者がダンジョンボスを兼任可。材料が枯渇しない限り、自由に構造の変更が可能。
[モンスター作製] ダンジョン内で活動するモンスターを作製できる。材料はダンジョンと同様に固形の無機物が必要。ただ、魔法や魔力が必要なスキル・攻撃を行使するモンスターを作成する場合は、そのモンスターの体積に比例した量の魔力を込める必要がある。モンスターはHPが0になれば消滅する。直前に製作したモンスターのHPに比例して次にモンスターを製作できるまでのクールタイムが発生する。
[指揮・監督] ダンジョン内の様子をリアルタイムで把握できる。また、ダンジョン内の罠発動およびダンジョンモンスターの行動を指示できる。
[回収] 侵入者の体から発散された魔力等、ダンジョン由来でない魔力を常時回収、蓄積できる。また、ダンジョンモンスターが行った戦闘で得られた経験値は全てダンジョンマスターのものになる。そのため、ダンジョンモンスターは成長・進化できない。
そう。ダンジョンマスターは経験値獲得効率低下のデバフを受けずに経験値を獲得する手段になるのだ。その代わり自分が攻撃するわけではないので、戦闘などで獲得するスキルなどは得られないデメリットもある。
つまり、ダンジョンを作ってダンジョンで引きこもりつつ、侵入者にはダンジョンモンスターで対抗。侵入者を倒して得た経験値を補充しつつ、純血の華でチリツモを狙う。純血の華のステータス上昇は複利計算だから、元本?のステータスの値が伸びれば飛躍的に成長するはず。
ダンジョンは……、ちょうどいいこの塔があるし、これをそのままダンジョンにしよう。そうすれば、元手なしですぐできる!
「ダンジョンマスター!いでよ、塔のダンジョン!」
そう叫ぶと、目の前の塔が虹色に輝きはじめた。そうさてしばらくすると、光は収まり、元の塔と同じ塔が現れた。
だけど、塔は先ほどと違って、欠けているブロックなどはなく、蔦も生えていない綺麗な外壁になっており、まるで新築の塔といったところ。
扉を開けて中を覗いてみても先はどの薄暗くてカビ臭い螺旋階段ではなく、新築のような澄んだ匂いがした。
すごい!これを使えばリフォームなんて簡単に……!
早速、モンスターを出してみよう。ひとまず1階はスライムとかでいいかな。
「いでよ、スライム!モンスター作製!」
目の前に向かって手を伸ばすと、丸い虹色の光が輝いて……!
光が収まり目を開けてみるとそこには、
……何もいなかった。
すると、頭の中でエラー表示が出た。エラー表示が目に見えるわけではないけど、頭の中で浮かんでくる感じ。
「エラー: 材料の固形無機物がありません。」
サーッと血の気が引いた。もしかして自分やっちまったか……!?
「いでよ、蟻! モンスター作製!」
「エラー: 材料の固形無機物がありません。」
同じ虹色のエフェクトが出たと思ったら、またしても何も出なかった。確実に小さい虫なのに。
そうか……!そうだった…!
普通ダンジョンは崖の脇とかからトンネル状になっていることが多い。それはトンネル状の洞窟がダンジョン化したわけではなく、土の壁がトンネル状にくり抜かれて作られていたんだ……!
そして、くり抜かれた土からモンスターを生み出していたとしたら……。
この塔のダンジョンは、くり抜いたわけでもなく、もとからこの構造だったものをそのまま流用して作ったから、余分な土が全くない………。
それはつまり………。
結論。
このダンジョンはよそから土とか無機物を運び込まないと、スライム一体すら出せない、無人のダンジョンということだ………。
評価・レビュー・感想よろしくおねがいします!
誤字等がありましたら、誤字報告受付機能でご報告いただければ幸いです。
リリィ「詰んだ\(^o^)/ ダンジョンはただの塔に」




