終わりと始まりの日3
年季の入ったサクと信玄の家。木の壁は黒くくすんでいて、たまに水漏れもして老朽化が目立つただ広いだけが取り柄の家。
「あれ?」
家に着くと玄関の前に2つの人影があることに気がついた。
1人は灰色の髪を腰まで伸ばした信玄と同じぐらいの歳の男。信玄に負けず劣らず深い皺を刻んだ渋い男前な顔立ちをしている。
深い緑色をした着物を着込んだその男は視線を一度サクの方へ目を向けた後、信玄を厳しい目で睨む。
もう1人はサクと同じくらいの年頃の少年。柔らかな茶髪が特徴的な子で、隣の男とは違って柔らかな笑顔をこちらに向けている。
「どちらさん?」
険しい顔で黙り込む信玄の代わりにサクが尋ねてみた。
「宗方サク君だね?私は土御門晴影、今日は君の……」
「黙ってろ晴影ぇ!」
閑静な住宅街に怒号が響く。
声の出所を見ると信玄の表情が怒りに染まっていた。
信玄が叫んだのだと気が付いたのは数秒置いてからだった。
「ここで話すのはお前も望まんだろう。まずは上げてもらおうか、信玄」
「……サク。お前は自分の部屋に戻ってろ」
ヒリつく空気に圧倒されながら、サクは信玄の言うことに頷くことしかできなかった。
丸山教頭の小言も涼しい顔で受け流せる叔父にここまで言わせるなんて、目の前のこの男は何者なのか。そしてこの男は叔父とどういう関係があるのか。
10年一緒に過ごして来たサクにも全く想像できなかった。
「それでは晴輝。お前はサクくんと一緒に部屋にあげてもらえ。くれぐれも……な」
「分かりました。父さん」
晴影が何かを示し合わせるように言うと、隣の少年はサクのそばまで歩み寄ってきた。
「えっと、初めまして。僕は土御門晴輝、晴影の息子です」
妙に大人びた態度を見せる晴輝の姿に違和感を覚える。
どこかいいところの御曹司か何かだろうか?同級生に育ちのいい奴がいたような気がするが、彼はもっと偉そうにしていたし、自信に満ち溢れたオーラのようなものを感じさせた。
けれど、目の前の彼からそう言ったものは一切感じない。ただ穏やかで、春風のようだという印象を受けた。
「……宗方サク」
どう挨拶したものかと悩んだが、親同士のよく分からないいざこざに巻き込まれるのも面倒なのでサクは簡単に名乗るとそのまま土御門晴輝と名乗る少年と握手を交わした。




