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終わりと始まりの日1

 外は日が当たると暖かく、風が吹くと寒い。


 桜は蕾をピンクに染めているが、まだひっそりと顔を隠している。


 少し硬い黒髪と、夜の闇のように真っ黒な瞳の少年。宗方サクは桜の蕾に目をやりながら周りの喧騒をどこか遠くに感じていた。


「サク」


 そんなサクの名前を呼ぶ声があった。


 振り返るとそこにいたのは叔父の宗方信玄。先程ひな壇の上のサクを見ていた男だ。


 高そうなスーツはだらしなく着崩されており、上着はしわくちゃになって信玄の肩にのっかっている。


「いいのか?お前は混ざらなくて」


 いつものようにぶっきらぼうな口調で信玄は告げる。


 信玄の指さす先には和気あいあいと3年の年月を噛み締め合う同級生の姿があった。


 「あそこ」とは、あの場所のことを意味差すのだろうか。それとも、かけがえのないであろう彼らの間柄のことを指すのだろうか。


「別にいい」


 微塵も寂しくないと言えば嘘になる。けど、あそこに自分が混ざってしまえばあの輝きが失われてしまうような気がした。


「そうか……ならいい」


 そんなサクの反応を見て信玄は懐からいつものタバコの箱を引っ張り出して1つ口に咥えた。


「ダメだって。ここ学校」


「いいだろ、今日ぐらい」


「今日だからダメなんだっての」


 サクの制止を無視してタバコに火が灯される。いつも家に漂っている煙の匂いが鼻についた。


「お前の……門出ってやつか?まぁめでたい日なんだからちょっとやそっと許される」


 そう言ってどこか遠くを見つめるように信玄は煙を吐く。それは冬の終わりの少し冷たい風に吸い込まれてどこか彼方へと消えた。


「はぁ……」


 むしろめでたい日だから許されないのだと言うことをこの叔父はわかっていないらしい。こんなのはいつものこと。


 信玄の背後からサクの予想通り、顔を真っ赤に染めて鬼の形相で走ってくる丸山教頭の禿頭が見える。


「こらぁぁあ!またあなたですかぁぁあ!!」


 こうしてまたサクは叔父の行動に振り回されて一緒にどやされる羽目になった。

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