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鎧暮らしの首だけ姫〜おひとり様おひとつ限り〜  作者: 風見鶏
第三章「古城ヴィアシェル城下街迷宮でルーンを集めよう」

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2


 ギルドの職員に送り出されて転移門をくぐる。眩いほどの光を抜けると、そこは石造りの家々に囲まれた広場の噴水前だった。


「わっ、人がたくさんいます!」


 ミドの驚きの声に、僕らも頷く。声にはあげなかったけれど、気持ちは一緒だった。

 噴水広場は青空を屋根にした市場になっていた。外縁に沿うように思い思いに色鮮やかな敷き布が広がり、その上で休憩をする冒険者や、食べ物を売る商人や、武器や防具を修理する職人なんかがいる。


「迷宮の中とは思えないわね。冒険者のための街みたい」

「ほんと、そんな感じだ。ここなら住めるかもね」


 クロエに冗談めかして返しながら、僕らは広場を歩く。

 広場からは上下方向に道が伸びていて、街を下って外に出るか、ここからでも目に付く城を目指すか、である。


「本当にお城がありますね……あの中には入れない、というお話でしたけど」


 イリアがしみじみと見上げている。


「入れない方がいいわよ。見るからに危なそうな雰囲気じゃない」

「そうですか? すごいなあ、って思いますけど」

「ミドは純粋すぎるの。もっと警戒心をもちなさい」

「ええっ」

「ふふ、ミドさんはそのままが素敵ですよ」


 いったい女性というのはどうやってこんなに仲良くなるのだろう? 一宿を同じにしただけだというのに、昨日の互いに遠慮がちな距離感はまるっきり消えていた。むしろ僕だけが仲間外れになっている気分だ。

 仕方なくひとりだけちょっと後ろを歩きながら、城を見上げる。


 古めかしい石壁作りの城は、長方形と尖った丸屋根がいくつも組み合わさっていて、縦に長く聳り立つ断崖みたいで物々しい雰囲気だった。


 その城を囲うようにぐるりと壁があって、正面に門がひとつだけある。けれどそれは閉じられたままで、開いたことはないらしい。


 僕らがやってきたのは「古城ヴィアシェル城下街迷宮」と呼ばれる場所。城の周りを囲う、この石造りの街全体が迷宮として扱われているらしい。


 広場を抜けると、やけに幅の広い階段が繋がっている。一段ずつの幅も広く、段も低い。緩い傾斜に段差だけを取り付けたみたいな場所だった。その境界線の左右に緑色に光る石柱が立っていて、ギルドの腕章をつけた兵士が立っていた。彼は僕らに気づくと手を上げてみせた。


「やあ、きみら、新米だろう? 安全基地はここまで。ここから先は魔物が出るから気をつけてね」

「安全基地? この石柱が魔物避けの効果でも出してるの?」

「そうとも。それはすごい魔術師さまが作った、べらぼうに高級な魔道具なのさ。おかげでこうしてゆっくりくつろげるわけだ。君らも怪我をしたり魔物に追われたりしたら逃げ込むといいよ」

「はええ……魔術師さんってすごいんですねえ」


 ミドが大きく頷きながら、イリアに顔を向けた。


「いえ、あの、ミドさん、わたしはもう、魔術師としては端くれも端くれですから……比べちゃだめですからね」

「でも、イリアさんの火槍、凄かったですよ! 格好よかったです!」

「そう言ってもらえるのは嬉しいんですけれども……」


 イリアの気恥ずかしそうな表情に、僕らは笑った。

 そうして何人もの駆け出し冒険者を見送ってきたのだろう兵士さんは、僕らに手を振って見送ってくれた。


 石柱の間を通るときは少し緊張したけれど、出たからすぐに襲われるということもない。古めかしい街並みを眺めながらしばらく歩き、ちょっとばかし観光気分になっていたところで、それに最初に気づいたのはクロエだ。



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