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鎧暮らしの首だけ姫〜おひとり様おひとつ限り〜  作者: 風見鶏
第三章「古城ヴィアシェル城下街迷宮でルーンを集めよう」

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 弓矢というのは強力な武器だ。戦争をするとして、槍や剣だけの兵士と、弓兵がたっぷり揃っている兵士が真正面からやり合えば、どっちが勝つかは言うまでも無い。遠距離から一方的に攻撃できるというのは得難い強みなのだ。


 その利点は魔術師にも言える。遠距離から範囲攻撃ができるとなれば魔術は弓の上位互換のように思えるが、なにしろ燃費が悪い。弓は矢を揃えれば連射できるが、魔術は詠唱に時間がかかるし、発動できる回数は本人の魔力量に左右される。あと、才能がないと無理。


 だから弓と矢というのは、ちょうどよく便利なのだ。魔術に比べるとやっぱり地味なんだけども。でも心配ない。なんたって僕のはランタン・ボウ。着弾したところに灯りがつくぞ。やったぜ。


「……なんだこれ」


 僕は弓を手に思わずぼやいてしまった。二十五メートルくらい先の的に矢が刺さっていて、そこにほんわかと魔力的な光が揺らめいている。そう、あれこそがランタン・ボウの力なのだ。


「おわっ、なんだその魔術! かっけえ!」

「……ども」


 隣で弓矢の練習をしていたハンターっぽいお兄さんに褒められるが、素直に喜べない自分がいる。ため息をついて、次の矢を手に取った。


 弓と矢という新しい武器の習熟のために、僕は朝っぱらからギルドの練習場に来ている。ギルドには土を均しただけの運動場があって、そこでは冒険者たちが勝手に身体を動かしたり、魔術や武器の訓練をできるのだ。

 ギルドが主催する武器の講座なんかもあって、朝でも結構、賑わっている。


 僕は弓に矢を構え、弦を引く。弓には種類がいくつかあって、ロングボウやらヘヴィーボウやら名前がある。おおよそ、弦がどれだけ強く張られているかで区別されるけれど、もちろん強ければ良い訳じゃない。


 弦が強いと威力も距離も上がるけれど、いちいち引くのに時間と力がいるし、そんなことを何度も繰り返していたらすぐにバテてしまう。まだ十五歳の僕の身体では、ゴブリンが引けるくらいの弓でちょうどよかった。


「––––ブレるなあ」


 放した矢は身体を揺らしながら回転し、大きな人型の的の左脇腹に突き立った。ぽわ、とランタンの灯り。気が抜ける。まあ、威力の方は問題ないし、弓自体もしっかりとした良い作りだと思う。こっちは使いやすい。問題は矢のほうだ。


 弓を自分の身体に立てかけ、矢筒から矢を一本抜いて状態を確かめる。


 ギルドの武具屋で、練習のために使い古しの矢筒と矢を買ったのだけれど、現代のリユースショップほど良いものでもない。矢は一本一本が職人の手作りで、しかも消耗品だ。中古で売られている使い古しの矢でも銀貨二枚……大体二千円くらいの価格なのだ。一本で。


 木を削り、そこに矢羽をつけて調整し、矢鍛治が作った鉄の矢じりをくっつける。全部が手作業。良い職人が作るほど、矢はブレなく狙い通りに飛ぶ。ただ、運が悪ければ矢は一回で使い捨てだ。矢じりとの接合部分が折れたり、矢羽がちぎれたり、軸自体が割れることだってある。それでも、もちろん金持ちほど高い矢を使うんだけど。


「……一発で銀貨二枚か。手が震えるな」


 実家を貧乏貴族だと思っていたけれど、自分がいざ冒険者という立場になると、その資産力の違いを実感する。貴族同士で比べれば貧乏というだけで、練習するための矢には困らなかったし、折れたって誰も気にしなかった。


 矢を消耗品と使い捨てられるだけの割り切りは、今の僕には無理だ。だって高いよ、これ。明るくなって便利だねとか笑ってられない。


 矢筒にはあと三本の矢が入っている。五本で金貨一枚。これでどれだけの成果が出せるのか。下手したら赤字だ。


 僕は金欠という重苦しい荷物を肩に乗せたまま、次の矢を弓につがえた。



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