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幻影(短編集1)  作者: 三海怜


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8/10

夏祭りの胸騒ぎ(8)

SFカテゴリーで『光と陰-織りなす夢に形』に、双子の美人をヒロインにして毎日投稿しています。

純文学のエッセイでも思ったことを随時投稿していますが、短編集も書いてみることにしました。

反応が強かった短編を長編にしていこうかなと思っています。これもまた宜しくお願い致します!


彼女に押し切られて、一応そういうことにしておいたのだが・・・

『一体 なんなんだろう?? 何か落とし穴がありそうな・・・』

僕は、『やっぱり、すいません。都合が悪くなりました。』という連絡を待った。

そして、連絡がないまま、1日そして1日と過ぎていき金曜日の朝となってしまった。


すると、やはり10時に内線が鳴った。

「おはようございます!一ノ瀬です。今日の件ですが、18:30に紀伊國屋前でいかがですか?」

「本当にやるんだね?」

「はい、もちろんです!」

「わかりました。」


そして、時間となり、紀伊國屋に歩いていくと、やはり彼女の姿があった。

いつのもようにネイビーのタイトスカートスーツにキャメルのウールコートを着ていた。

「やあ、一ノ瀬さん、お疲れ!」

「あっ 石塚さん!今日は有り難うございます。さあ、行きましょう!」


僕らは千代田線で代々木上原に向かった。

「ねえ、今更だけど、買い出しとかしなくて良かったの?」

「大丈夫ですよ、もう揃えてありますから。」

と、話しているうちに着いてしまった。


駅を出て、住宅地をどんどん入っていき、少し小高い丘のようなところまで上ってきた。

そして急な坂がありその路地を進んでいき突き当たりで止まった。

「ここです!」

「へえ? ここ、一ノ瀬さんの家なの?」

「そうですよ。お上がりください!」


いわゆる豪邸であった。まるでヨーロッパの邸宅のような見え方で門はロートアイアンの鋳物で

できていた。彼女はその門を開けて玄関まで続くフットステップを進んでいきドアの鍵を開けた。

「さあ、どうぞ!」と言ってドアを開けて僕が入るのを待っている。


『ついに来てしまった。これからどうなるんだろうか?』と若干不安になりながら、

「ああ、有り難う、ではお邪魔します。」

中に入ってみると広いエントランスがあり英国調のチョコレートブラウンのフローリングに

ホワイトの塗り壁風の室内であった。すでにスリッパがそこに用意されていたので、

僕は靴を脱いでそれを履いた。


「石塚さん、そこでちょっと待っていてもらえますか? すぐ戻りますので。」

と言って家の奥に消えていったのだった。

置き去りにされた僕は、そこで室内を見回していた。

4、5分待たされただろうか? 奥から足音が聞こえてきた。

するとドアが開いて一ノ瀬さんが普段着に着替えて出てきたのだった。

デニムの膝上タイトスカートにオフショルダーの白いシャギーニットを着ていた。

『なるほど、料理の前に着替えてたんだな!』

「着替えたんだね? そういうカジュアルな感じも似合うね!初めて見たよ。」


「有り難うございます! 実は今日、ご紹介したいものがいるんです。」

『えっもしかしたら・・・親とか紹介されるのか??』と少し焦った。

「皆さん、いいですよ。」と言うと、中からまた足音が聞こえてきた。

また、さらに女の子が2人出てきたのだが・・・


『なんだ、これは???』

その2人が一ノ瀬さんの横に並んだのだった。

「一ノ瀬です!いらっしゃいませ!」と3人が同時に言った。

一人は黒いリブニットのタイトワンピースを着ている。

もう一人は、なんと膝上丈のメイド服を着ているのだ。

そして、顔をマジマジと覗いてみると、なんと同じ顔であった。

『えっ 一ノ瀬さんが3人いる?? これって三つ子ってこと??』

驚いた表情が出たのだろう。

「あら、驚いてますか? 私達三つ子なんです。」と3人が笑っている。

「いやー、びくりしたよー 本当にそっくりで区別がつかないわ。」


そして、いつもの一ノ瀬さんが、

「私は舞と申します。」

隣のブラックワンピースの子が元気に

「私は澪でーす!」

その隣のメイド服の子が、物静かに

「私は萌です。」

「それでは、リビングにどうぞ!」と言って

舞が手を引いて僕を誘導していった。


広いリビングに通されて、僕と2人はソファーに座った。

もう一人のメイド服の子はキッチンに行ったようだ。

「石塚さん、驚きました?」

「ああ、とっても!」

「今、萌が料理していますからお待ちくださいね。」と舞が言った。


「君たち3人でこの大きな家に住んでるの?」

「そうです、両親が海外に転勤になって、その間は。」

するともう1人の澪が、

「ねえ、すでに私ら3人に会ってるんですけど知ってました?」

声は同じだが、口調が少し男っぽかった。

「ええ、そうなの??」

「実はそうなんです。石塚さんとはすでに3回会っていると思いますが、

最初は私、で、居酒屋は澪、トンカツ屋は萌だったんですよ。」

『マジ?全然気が付かなかった〜 それぞれ違う子だったんだ!?』

「えっそうなんだね!? 全くわからなかったよ。じゃ、酔い潰れた子が澪さん?」

「そうなんです。ごめんなさい!!」と言っていきなり祈るようなポーズをした。

「実は、あれ、私の演技だったんです。」


『やっぱり!その線も考えていたんだけど、そうだったのか!? ラブホ行かなくてよかったわ〜』

「やっぱり、そうだったんだ!? その可能性も考えたんだけどね。でも、まあ楽しめたよ!」

と言って追求することは辞めたのだった。


すると、舞が、

「石塚さん、本当に申し訳ありませんでした! 私が気になっている男性がいると他の子達に話したら

舞が付き合う前に私たちも吟味するって言って聞かなかったんですよ。というか、ここだけの話で絶対会社には内緒でお願いしますが、私達会社でもよく入れ変わっているんですよ。わからないでしょ?」

「えっ マジ??」

「石塚さんもリアルに体験されたじゃないですか!違いがわかりました?」

「まあ、そうだね。少し機嫌がいいのか悪いのかの違いかな。」

「ノリがいいのが澪で、ノリが悪いのは萌なんですよ。」と言いながら2人は笑っている。 




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