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夏祭りの胸騒ぎ(2)

SFカテゴリーで『光と陰-織りなす夢に形』に、双子の美人をヒロインにして毎日投稿しています。

純文学のエッセイでも思ったことを随時投稿していますが、短編集も書いてみることにしました。

反応が強かった短編を長編にしていこうかなと思っています。これもまた宜しくお願い致します!

翌朝出勤して10時ぴったりにデスクの上にある内線電話がなった。

「はい、石塚です。」

「あっおはようございます。社長秘書の一ノ瀬です。先日の件でお電話致しました。今お時間大丈夫でしょうか?」

「はい。」

「実は、社長からの依頼なのですが、来春立ち上げる石塚さんがご担当されている新ブランドの件でのお話があります。」

「えっ、社長からですか? 何でしょうか・・・」

「実は、そのマーケットの感想を聞きたいから、私が109に一緒に行って説明してもらえということなのです。」

「えっ僕が一ノ瀬さんとですか?」

「そうなんです。109は恥ずかしくでおっさんは行けないということを言われてました。」

「なるほど、そういうことですね!? わかりました」

「では、6時が定時ですので、6時半に109前での待ち合わせでもよろしいでしょうか?」

「わかりました。6時半に109前ですね。よろしくお願いいたします。」

「有り難うございます。こちらこそよろしくお願い致します。」

と言った内容であった。


僕は会社初の来春立ち上げる109ブランドの責任者となっていたのだった。

それも大手としては、109ファッションの早いトレンドの流れに対応が難しいから

グループ会社として子会社も同時に立ち上げるという構想だ。

今年の春まで担当していたインターナショナルブランドの大成功が買われて、

また事業部長クラスとしては最年少ということもあり、僕に白羽の矢が当たったわけだ。


その頃、僕は、春の人事異動でこの事業を任せられてからまるで社畜のような日々を送っていた。

新たな事業部といっても、人員は僕一人なのだ。

『新規事業なら、大手であれば普通数人で立ち上げるだろう!』と思っていたのが大間違いで、

大手と言えども経費に余裕はないとのことなのだ。


しかし、僕の前には大海原が広がり、また無限の可能性が待ってくれている印象を受けていた。

『これを頑張って成功させれば、突き抜けられるかも!!?』と。

僕は、ブランドのコンセプトワークを固める前に、何度も109に行きマーケットリサーチを重ねることからスタートした。この会社には新規事業用の求人で中途で入っているのだが、前職ではクラブファションブランドを立ち上げた時に、109のB2もマーケットとしてよく訪れていたのである。


『確かに、僕はまだ28だから、109に居ても変な目で見られることはないけど、社長のような年齢のオジサンが居たら不審に思われる可能性もあるな・・・ 多分、去年まで学生だった一ノ瀬さんに代わりに行ってきてもらって僕が説明した内容も加味して感想を聞くつもりなんだろう』と理解したのであった。


その日の業務も秒刻みで過酷な内容であった。一般論で言うと、新規GAL系ブランドのプロデュースだけでも大変なのに、おまけに会社ごと立ち上げるという無謀な計画だからだ。だが、僕は、『実はそれって成功確率が高い!』と実感していたため、この普通無理だろうという事業を成功させるために半ば意地になって励んでいたのであった。


前職でのブランドプロデュースはホールセールの会社であったため、いわゆるチェーン店展開をしている小売企業のバイヤーに提案し仕入れてもらう仕事であった。いわゆる『バイヤーさんは神様』的な対応が強要されるのだ。

自分的には『これ半年後には売れるだろう!』とわかっているデザインであっても、バイヤーのYESがないとマーケットに入って行けないのである。おまけに日本ではお客様は神様だから、僕らのようなメーカーさんには意識的に高飛車な態度を取るのが彼らの常套手段であった。舐められないように!なのだ。


それが、ここに応募した大きな理由である。大手のアパレル会社はSPAという事業を営んでいるからだ。簡単に説明すると自分のブランドが直営店を持って全国展開するというビジネスモデルであり、要するに僕が『これは売れる!』と思えば、誰に相談することなく商品化して展開できるわけなのだ。


まあ、そういう毎日を過ごしていたのである。そして、今は、有難いことにスタッフが3人増えていた。2人が企画担当の20代前半のギャルで、もう一人が僕が教育している20歳の女の子で、まあアシスタントも兼ねている子だった。ユキとジュンとリサの3人だ。


「ねえ、ユキ、ジュン!これから社長に呼ばれて外出するからNRだけど、終わったら戸締りして帰ってね。」

「わかりました、いまのところ何もないです」

「そうだ、リサ!この発注書をメーカーさんにFAXしておいてね。」

という確認をして、6時になったのでそそくさと会社を出て109に向かった。

まあ、会社と言っても渋谷のパルコ付近にある雑居ビルで居酒屋も入っているようなビルの狭い1室であった。


交差点の向こう側は109だ。信号待ちの合間にビル正面を見てみると、すでに一ノ瀬さんの姿があった。

「ごめんごめん!待った?」

「いえ、今着いたばかりです。今日はありがとうございます!」と笑顔で返ってきた。

「一ノ瀬さんと面と向かって話すのは初めてだと思うんだけど、今日はどんなことをすればいいのかな?」

「はい!社長が石塚さんとデートして来い!と言われるているのです。」

「はあ??」

『もしかしたら・・・カップルのように109を徘徊して、そのなかでウチのブランドが売れるかどうかみてこい!っていうお達し??』

「ですので、今日はカップルでデートということでお願い致します。社長命令ですから。」

「面白いミッションだね。わかりました。じゃ109のGAL系ファッションのベースを造ったB2から行こうか?」

と言って、僕が先に立って歩き出した。


すると、後からついてきていた一ノ瀬さんが僕の服をぴっぱっているのに気がついた。

「えっ どうかした?」

彼女は半ば俯きながら、「石塚さん、デートだから手を繋いでもらわないと困ります・・・なんか、そうじゃないと周りからも変な男女に思われますよ。」と言ってきたのだった。

『マジ!? 手も繋ぐの?? この子は本心で言っているのだろうか??? それとも社長命令に実直な超真面目な子なのだろうか?』と不意を突かれたような彼女の攻撃に一瞬戸惑ってしまったのだった。


『まあ、確かにな・・・僕はデニムにMA1だし、彼女は秘書ぽい服装で胸元にフリフリのボザムが着いた純白のブラウスにネイビーのスカートスーツにヒールだからなー』と納得したようなしないような気持ちであったが、

「えっ、手を繋いでいいの? しないと社長に怒られる?」

「ええ、怒られてしまいます。だからお願い致します。」

「そこまで言うんだったら、わかったよ。」と言って僕は彼女の手を繋いだのだった。


よくよく考えると、彼女は今年の3月までは大学生だったわけだから、まあ、男性とデートなんかはもちろんしていて慣れっこなんだろう。異性と手を繋ぐことなんかそんなに深刻には考えていないのかもな。いつもは遠目で眺めていたが、こんな近距離、それも手を繋げる距離にいる彼女をマジマジと眺めてみた。


ヘアスタイルは黒髪のボブ、顔は丸顔で目が大きめであり丸の輪郭の中に鼻と口がバランスよく配置されている。

よくよく見るとまつ毛が長く瞳が黒ではないのだ。『何色なんだろう?』ブラウン?もしかしてゴールド??

角度によって黒っぽく見えたりゴールドぽく光っていたりする不思議な瞳だ。身長は160cmちょいかな?すらっと細身で日本人としては足は長めである。胸もブラウスの上からは膨らみを確認できる。

『なるほど〜 これが会社のマドンナなんだな!』と納得した。


彼女の手は細身で指が長く温かかった。

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