8 不協和音
扉が重い音を立てて開いた
部屋に戻ってきたジアは鋭い視線であみを捉えると
無言のまま扉を閉じた
その表情は険しく、彼女が抱える不安を一層増幅させる
「番がなんなのかわからないのか?」
低く響く声が部屋の空気を切り裂いた
あみは体を硬直させながらも、必死に目を逸らさないようにし
「わからない……」と、震える声で答える
ジアは彼女の答えを受け、一瞬目を細めた
その仕草が、彼の内心にわずかな苛立ちを滲ませる
「お前、人間だよな?なんで獣人の俺と普通に話していられる?」
その問いは、まるで彼女を追い詰めるような強い言葉だった
あみは彼の真意を測りかねながらも
震える手をギュッと握り締めた
「あ、あの……気がついたらあそこにいて、ただ……」
言葉が詰まり、喉が乾く
彼女は一度深呼吸をしてから、なんとか続ける
「獣人だからとか、そんな理由で人を差別するなんて……私には考えられないから」
その言葉に、ジアはわずかに表情を動かした
彼の瞳には疑念が浮かび、しばらくあみを見つめていたが
彼女の言葉をそのまま受け入れることはなかった
「信じられるかどうかは別の話だ」
ジアは冷たくそう言い放つと、背を向けて歩き出した
しかし、あみはその背中に向かって必死に声を投げかけた
「それでも……わたしは、本当にそう思ってるの!」
震えながらも、真っ直ぐに伝えようとする彼女の言葉にジアの足がぴたりと止まった
彼は振り向かないまま、低く短く答えた
「ここから出す気はない。それだけ覚えておけ」
部屋には再び静寂が訪れた
あみはその場に座り込み、自分の言葉がどれだけ彼に届いたのか分からないまま
ただ冷たい空気を感じていた