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狼の耳の番  作者: himi
6/34

6 重なる声



狭く暗い部屋の中に通されたあみは

戸惑いながらも周囲を見渡した


ジアの部屋は、質素で必要最低限のものしか置かれていなかった

金属製の棚には武器が並び、机の上には地図や雑然とした書類が散らばっている

壁は擦り切れた跡が所々に残り、床は冷たいコンクリート

全体に漂う空気は硬質で、居心地の悪さを感じさせた




「あの……ここって、あなたの部屋ですか?」


あみが尋ねる声はかすかに震えていた

異世界での最初の会話

そして彼女の不安が混ざった言葉は

静寂を破るように響いた



ジアは目を細めると、彼女をじっと見つめ

短い答えを返した


「そうだ」


その硬い声が、さらに彼女を緊張させた

意を決して、あみはもう一歩踏み出した


「わたし……あみです。名前を教えてくれませんか?」



ジアは短い間を置き、声を低く響かせた

「俺はジア」


その名前に込められた重さを感じたあみは

言葉を慎重に紡ぐ


「どうして、あの時キスして……わたしをここに?」


ジアはあみの問いに、わずかに表情を動かした

彼は額にかかる髪を指先で払いながら

鋭い瞳で彼女を見据え、ゆっくりと答えた



「お前は俺の番だ。」


「番……?」


あみはその言葉の意味を理解できず

首を傾げながらジアを見つめた



その時、部屋の外からノックの音が響いた



「ジア、至急来てくれ。問題が起きた」

仲間の声が切迫感を帯びていた



ジアは一言も返さず立ち上がり、あみを横目で見た後

そのまま部屋を出ていった

残されたあみは、静まり返った部屋の中で立ち尽くしていた



「あれはどういう意味……?」


彼女は自分の胸の中で繰り返し問いかけた


ここがどこで、何が起きているのか

ジアの謎めいた言葉と態度が

自分の中に混乱と不安をさらに募らせていた



「わたし、これからどうなるの……?」


彼女は冷たい床の上に座り込み

頭を抱えながら考え続けた


この先何が待っているのか

この世界の現実がどれほど厳しいものなのか

まだ知る由もなかった




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