67杯目 さらなる成長
ヒロルの参入は蒼き雷鳴パーティに変革をもたらした。
魔法使いの強力さはミツナギと共に戦って知っていたが、二人いると戦術の幅が大きく広がる。
「背後止めますっ、アースウォール!!」
「助かるっ! サルーン、右からもう一体!」
「任せとけっ!」
「神の奇跡よ、爾が子らに闇を打ち払う力を! エンチャントウェポン!」
「轟雷っ! 雷鳴閃撃っ!!」
ケイトの持つ紅雷が雷を帯び、その斬撃が電化を帯びて敵を切り裂き雷を打つ。
「やるなケイトっ! 俺だって負けてられん! 唸れ猪突っ! 剛力烈波!!」
力のルーンが輝き、振り抜いた棍棒がオーガの上半身を吹き飛ばした。
「いくよミツナギさんっ!」
「準備完了! 「「烈風火焔の舞!!」」」
火と風の合体魔法。風の力を飲み込んだ炎が更に風によって拡大され広範囲を焼き尽くす。そのまま敵を巻き込んで天井まで炎が飲み込んで消えていく。
狭い場所でやったら恐ろしい魔法だが、もちろん制御されているので味方に被害は出ないのだが、殲滅力はやはり魔法は圧倒的だ。
「ふぅ、溜まっていたし追加も来るから少し焦ったな」
「ヒロルが後ろを抑えてくれたから、対処できたな」
「お姉ちゃんの魔法書で覚えた魔法だよっ!」
「ああ、そうだな」
今ではすっかり姉妹の仲も以前のように良くなってくれた。
ダンジョンの中ではとても頼りになる仲間だ。
「しかし、この階層も随分と慣れたな。40階層、行ってみるか……?」
「そうだな、様子を見に行っても大丈夫そうだと思う」
「では、下に向かって行くっス!」
「久しぶりに新しいエリアねぇ、ドキドキするわぁ」
「慎重にいこうぜ!」
「皆さん、怪我などは大丈夫ですか? 今のうちに治療しますよ!」
40階層は30~39階層までの鍾乳洞のような洞窟からまるで巨大な建物の中を歩いているようなダンジョンに変化している。
「これはまた、ガラッと雰囲気が……」
「凄いですね……」
はるか高い位置まで巨大な柱が伸び、破壊の出来ない壁がどーんと高くダンジョンを迷宮へと変えている。
通路は広く、ところどころに松明が置かれて神秘的な雰囲気を作り出している。
「……たぶん、大型の魔物がいるな」
「そうっスね。背中がビリビリするっス」
「まさに、空気が違うってやつだな」
「オーガも弱くない。でも、ここの魔物は」
「危険ですね……」
全員がこの階層の壁の高さを感じている。
乗り越えられるだけの鍛錬も準備も行ってきているはずだが……
「皆、過度な緊張は動きを悪くする。
今日は様子見、手頃な相手と戦ったら引くぞ」
皆が静かに頷く。
慎重に探索をしながら広い通路を進んでいく。しばらく進むとついに40階層初めての敵に遭遇する。
「グレートアリゲーター……竜の亜種とも言われる魔物ッスね」
「凄いな……尻尾まで10mくらいはあるんじゃないか?」
「あれに叩かれたら、痛いだろうなぁ……」
「どうする? リーダーに任すぜ?」
「やろう。戦わなければわからないことも多い」
「よしきた。いつも通り、落ち着いていこう」
タイミングを見計らい、背後から強襲する。
「穿てっアイシクルショット!!」
「突き立てろ、アースランス!」
魔法による上下からの同時攻撃。いくつかの氷塊が硬い鱗を突き破るが、掠めた弾は鱗に弾かれてしまう。下からの土の槍も同様だ。芯を食えばダメージを与えるが、そうでなければ頑強な鱗で弾かれる。
全員がその様から対応を各々判断してくれる。
「行くぞっ!」
全員が飛び出す。その瞬間、ぎゅるんとワニの巨体が信じられない速度で回転する。
「サルーンっ!!」
「わーーーってる!! 鋼鉄防壁っ!!」
サルーンの巨大な盾を大地に叩きつけ固定する。
巨大な大木のようなしなやかな尾の一撃を見事に受けきってくれた。
「かーーーっしびれたっ!!」
鰐は巨大な顎を大きく開いてサルーンに噛みつこうとする。
「させるかよぉ!!」
俺の猪突がその口を叩き潰す。
硬いゴムを叩いたような感触が俺の手に響いた。
一瞬動きが停止したその瞳にポーラの正確な矢が鋭く迫るも、頑強なまぶたが矢を弾いた。
俺の一撃を意にも介さずに鰐はこちらに体位を変えてきた。
「これは骨が折れるな」
ケイトもいくつかの斬撃を決めたが、その鱗の強固さに苦戦している。
「こりゃ俺達で足止めしてヒロルとミツナギの魔法を叩き込むしかないな」
「同感だ。頼んだぞ二人共っ!」
「コーラット、速度重視で、速さで撹乱する」
「わかりました。神の奇跡よ疾風のごとく歩ませよっ! 神速の恩寵!」
身体が軽くなり、一歩踏み出すだけで風を切るように素早く移動できるようになる。攻撃は、力に速さを掛けて技で放つっ!!
「大地震撃っ!!」
敵の尾による攻撃をかいくぐり強烈な振り下ろしを横っ腹に叩きつける。
巨大なゴムの塊を叩いたような感触は変わらないが、今度はその反動をそのまま利用し、回転しながらもう一発後ろ足に叩きつけるっ!!
「大地震撃、回っ!! ってね!!」
冒険者は全員例外なく、技に名前をつけて叫んだほうが強くなるっ!!
これは絶対の真理だ!!
「雷鳴迅撃っ!!」
「シャドウエッジっ!!」
「影ぬいっ!!」
「破岩剣、双牙!!」
「みんな、下がってっ!!
氷の支配者たる氷龍が息吹」
「今我が前に顕現し」
「我らが大敵を討ち滅ぼせっ!」
「「氷龍の怒りっ!!」」
空気が凍てつく。巨大な寒気の塊がまるで龍の姿のように大鰐に喰らいつく。
ジタバタと抵抗する鰐の身体は次第に氷付き、バキンッと大きな音を立てて砕け散り、ビクリと身体を震わせると、そのまま大地に伏してダンジョンに吸収されていった……
「すげぇな……魔法って」
「明らかに弱点有る魔物には強いよね」
「魔法抵抗力有ると、無力」
「よしっ、皆、アイテムと魔石を回収して帰るぞ。
さすがにアイツを蹴散らしながら転移石を探すのは難しい、歩くぞ」
「いい判断だと思う」
「帰りましょう」
40階層、俺達の力は通用するという強い手応えを感じて、俺達はダンジョンを脱出した。




