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54杯目 鬼だらけ

 ほぼ地図が埋まった。そして、わかったことは、最後の最後の一画に上への階段があるだろうということ。そして、その場所に向かうためには5匹のオーガを相手にしなければいけない。この階層、全員オーガなんだが。鬼階層。そして5の倍数の階層でもない。帰還石もなかった。


「あー、やっぱりかぁ……」


 とうとう上へ向かう階段へつながる扉を発見した。反射板を利用して通路の先を確認したが、同時に戦闘が不可避であることを意味している。


「くそ、ここに行くとさっきの3体がいるし、だめだ、うまくいくルートがない」


 地図とにらめっこしてあわや敵と鉢合わせになりそうになったりして、散々考えてみたんだけどもうどうしようもなかった。慎重に動く必要があって、もう随分と時間を浪費してしまっている。眠気はポーションで飛ばしているが、これも3日程度が限界だ、もう、あまり時間はない。まさかダンジョンで寝息を立てるわけにもいかない……このレベルの場所だとな……


「どうする……誰か来るとかそんな調子の良い話を待つわけにも行かないし、しかも今ここに降りてきたらやばいからな、なんで階段部分に溜まってんだよ……」


 構造的に敵がある程度動いてもここに溜まりやすくなっている感じで、何度かいろんな方向から確認しても、どうにも敵がいないタイミングがない。扉が見えて敵からわかりにくい場所を何箇所か抑えて、逃げ回っている状態なんだが、本当に狙っているかのように扉前から敵がいなくならない! そもそも階層降りてきて眼の前に敵がいるなんて珍しいことなのに、5体とか、少なくても3体、たぶん戦闘が始まったらすぐに残りの2体にも発見される……このレベルの敵を楽勝で相手できるようなパーティじゃなければ、かなり危険な状態だぞ。まさかこのタイミングでこの階層に降りてくるパーティなんて……っ!


 思考が加速する。ゆっくりと、間違いなく扉が開いている。そして、まだオーガ共は気がついていないが、現在この位置関係でオーガ3体側が気がつくと、残りの2体がこの階層に降りてくる何者かを挟撃する形が成立してしまう。


 チャンスだ。


 冒険者たちが戦闘を開始してくれれば、回り込んで俺は安全に階段を昇って上に上がれる。この階層に来るぐらいの奴らなら、ここの敵と戦えるから来たんだろう。なぁに、ちょっと5体の挟撃、多少不利があったってなんとかするのが冒険者だ。別にそこに敵がいるのは俺が仕組んだわけでもないから、俺は悪くない。さぁ、戦闘を開始して、俺を上に逃げさせてくれ。


 扉から、ボロボロのパーティが出てこなければ……パーティを確認せずに行動を開始していれば……見捨てて、自分だけ階段を使って逃げていれば……あとから考えれば、いくらでも後悔できる。でも、俺が取った行動は。


「オラっ!! オーガどもこっちだこっち!! 《《奥から来る2体》》もこっちに来やがれ!!!」


 ガンガンと猪突で壁をたたき、敵の意識をこちらに向けさせた。さらに出てこようとした奴らに警告もした。すぐにボロボロの冒険者たちは扉を閉めて戻ったようだ。


「さて、また逃げるか」


 やっちまったもんは仕方ねぇ。俺は、腹をくくる。あーあー、馬鹿だ馬鹿だっ!!


「俺は大バカヤローだぁ!!」


 また鬼ごっこの開始だ。走り出しながら考える。あのパーティはなぜあんなボロボロでこの階層に降りたのか、考えられることはいくつかある。すでに回復する手段を失っている。どうしようもない理由で上ではなく下に向かった。引っ込んだところを見ると、大量のオーガを相手にできる状態ではない。


「つまりここは34階か39階ってことかっ!!」


 前方にオーガが2体っ!! しかもこっちを見つけているっ!! 振り下ろしっ! 振り下ろしだよなっ!! 信じてるぞ!!


 ぶぅん!!


 ギリギリで敵の振り下ろした棍棒を避けて壁に身体を叩きつけるように回転し、オーガの脇を抜け、もう一匹のカウンター気味の振り払いをスライディングからの回転で避けるっ!!


「あはははっ!! 今のは死んだかと思った!! マジで思った!!」


 髪の毛に棍棒が触れていたのを感じるほどギリギリだった!


 ドスドスと背後の足音が増えた。完全トレイン状態、しかも、なかなか良い通路もなく、俺自身の速度で走っているから振り切るのに時間がかかるっ!


「うげぇ!!」


 さらに正面にオーガ、一体。


「一体なら!!」


 俺は猪突を振りかぶり、思いっきり振り下ろすッ


 ガッ!!


 容易く受けやがってチクショウ! でも、簡単に受けてくれてありがとよっ!


 そのまま棒高跳びのように猪突でオーガの頭上を超える。攻撃は、フェイントだっ!


 着地と同時に再び走る! あの通路の先は広い部屋になっている、その先の通路に行けば敵を撒けるルートに入れる。ドスドスと背後の足音は諦めることなく俺を追ってきている。なんとまぁしつこい奴らだ。広い部屋に入ったら猪突猛進で距離を取って、その先の通路を利用して振り切るっ!! 作戦は完璧だっ!!


「っ!! なんでだよぉぉーー!!」


 広い部屋に飛び込むと、先の通路に繋がる場所にオーガが二匹まるで俺に立ちふさがるかのように存在していなければ、完璧だったのだ……


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