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134杯目 ジャンキー

 ホムラの食いっぷりは見事だった。うちのヒロルもかなりのもんだが、種族の差を見せつけられた。


「だからホムラに本気を出させては危ないと申しましたのに……」


 結構な額の支払いを見てサクラは頭を抱えていた。確かにすごい金額で店員さんはキラキラした目で「またお越しくださいね、絶対!!」と送り出してくれた。


「今日は新たな門出だ、ケチケチしたら冒険者の神様に見放されちまう!」


 と、俺は震えながら声を絞り出した。


 酔いが一気に冷めたぜ……


「えー、まだまだイケる口なんですけどー」


「ホムラ、いい加減にせぬとゲンツ殿達も困ります」


「まぁ、ゲンツ、どうする?」


「そりゃぁ……、まだまだ行くぞー!!」


「おー!」


「これは明後日から頑張らないといけませんが、神も今日くらいはお許しになりますでしょう」


 2軒目も3軒目もホムラの食べっぷりはすごかった。なんか人との距離の詰め方もうまくて何人かのオジサマに奢らせたりしていた。一緒に飲んで食べているととても楽しい。サクラもはじめは止めていたが、もう楽しもうと決めてみんなでたくさん食べて飲んで笑った。


「ゲンツっちは、悪い男だねー! こーんな可愛い子たちみーんな夢中にさせて放置プレイとかまじ鬼畜!」


「いいぞいいぞもっと言えーサクラー!」


「そうだそうだー! ゲンツさんは悪い男だー!」


「サクラとホムラはいい人いるのー?」


「いえ、もう男性にはこりごりです」


「でも、ゲンツっちはー、悪い男だけど悪い人じゃないのはわかった」


「え、これ以上ライバル増えるんですかー?」


「うーん、まだわかんないかなー?」


「否定なさらないのですね、これは注意が必要です、神よまた我らに試練を……」


「あたしよりサクラの方がハマると思うんだよねー」


「はい!? なぜ急にそんな珍妙なことを!」


「だって、男と話してて自然なサクラとか久々に見たよー」


「いや、それはこれからお世話になりますし、それにホムラの命の恩人ですよ!」


「まー、そ〜なんだけどさー。ただの勘だし気にしなくていーよー」


「あなたの勘はよく当たるから気にします!」


「ああ、また強力なライバルが!!」


「ゲンツさん、たらしすぎる」


「みんないいたい放題だな……」


「日頃の行いですよ」


 ソフィアのツッコミが冷たい。


「だから冒険して落ち着いたら責任を取るって言ってるだろ……」


「だったら今手を出したっていいじゃないですかー!」


「落ち着けヒロルっ! く、苦しい!」


「このパーティーに入って平気なんサクラー?」


「少なくとも、ダンジョンにいる間は平気だと感じました」


「ふーん、なら、明後日を楽しみにしますかー!」


 その日は散々飲んで食べて解散となった。


 翌日はダンジョン攻略のために準備を進めて、サクラとホムラと合流して初めてのダンジョン攻略の日になる。


「まだ連携が取れてないから80階から始めよう」


 俺は新しい装備を早く使いたい気持ちを抑えて安全に狩れる階層から始めていく。


「おっらぁ!!!!!」


 ホムラの戦闘スタイルには舌を巻いた。早く、鋭く、重い。


 日常とはかけ離れた戦士の姿には感嘆する。


「見事な一撃だな、大太刀だっけ、すごいなそれ」


「やっぱゲンツっちはわかってるねー。炎天鬼剣、うちの家宝だから」


「構えからの抜刀の一撃が最大の威力。そのかわりやや回避と防御に難ありだね。前衛じゃなく中衛で機を伺って必殺の一撃を放つのがベストだから、俺とヒロルが前、その後ろにケイトたち3人が前、サクラとホムラが中衛、それをソフィアが後衛から支えるのがこのパーティーのベストだな」


「……ごめんねみんな、あーし、ゲンツっちのこと好きになるかも」


 みんなの「あーーーー……」って表情が印象に残った。


 それからしばらくダンジョンを探索しながら階層を重ね、100階層に到達する頃にはパーティとしての完成度も高くなっていた。


「ホムラ!」


「任せて!」


 俺たちだけでは苦労するガーディアンのパーティも難なく撃破できるようになっている。サクラだけでも世界が変わったのにホムラの強力な一閃による殲滅力のアップは明らかにパーティーの継戦能力を高めてくれた。


「あーーー、疲れた! ゲンツっちまぢでスパルタなんですけど!! 好きになるとか言った自分を殴ってやりたいんですけどー!!」


 110階層、以前死ぬ気で倒したロードを前回の半分以下の時間で倒して下に降りる階段で休憩した。

 新装備は、想像以上だった。使い勝手はほぼ変化がなく、それでいて打撃などを与えた時の感覚は恐ろしいほどに軽い、軽いのに、相手へのダメージはでかい。今までは崩せなかったような防御を力任せにも崩せる。しかし、軽さを最大限に活かせるのはカウンターだ。精度、疾さ、威力、全ての次元を上げてくれた。


 すでに転送石はあるので111階層を覗いて帰還する予定だ。皆、かなり疲労も溜まっている様子だ。


 新たなメンバーを絡めての戦い方を色々と確かめながら、新しい世界に夢中になってたら一ヶ月くらいダンジョンに籠ってしまった……


「ホムラも凄いな、確かにサクラと二人で冒険できた理由がわかった」


「あ、あざーっす……はぁ、はぁ……」


「恐悦至極……」


「さてゲンツ、そろそろ身も心もぼろぼろだから帰りたいのだが」


「ああ、うん。じゃあもう一戦したら帰ろうか」


「は、ははは、もう一戦ね……ははは」


「神よ、試練が、過酷です」


「よし、じゃあちゃっちゃと倒して帰ろうか! 俺も支払い期日が迫ってる」


「もう少し余裕のある計画を立てたらどうだろうか?」


「今回かなり掴んだから、次はもっと効率良く戦えるから、もっと稼げるな」


「まさかゲンツ殿、もっとペースを上げるのですか?」


「まっさかー、壊れちゃうってー」


「110階層スタートで週の6日潜って1日補給で行けそうだから、こまめに帰れるさ。


 それならいいだろ?」


「……それをどれくらい続けるので?」


「ん? そりゃ目指すは200階層じゃね?」


「……わが命数、ここに尽きる……」


「まじゲンツっち、怖いわ……」


 こうして、俺達の新メンバーでの冒険は無事に終了した。

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