実家の噂、行き着く先は……
翌日からは転居届を出したり荷解きをしたりご近所に挨拶しに行ったりとやる事が一杯で漸く落ち着いたのは1週間経ってからの事だった。
「漸く落ち着いたわねぇ……」
お茶を飲みながらそう呟いた。
「レジーナ様、これからどうなされるつもりですか?」
「暫くはゆっくり過ごしたいわ。金銭的な部分は問題無いし」
私は結婚している時から領地内に雑貨屋を経営しており個人的な収入がある。
勿論元旦那様には了承済みだ。
「でもレジーナ様の噂は貴族社会にも耳に入って来ていますよ」
「私の噂?」
「はい、『公爵夫人の鏡』とか『公爵家を繁栄に導いた女傑』とか」
「鏡とか女傑とか……、私はただ夫人としての役割を全うしただけなのに」
「その代わり、実家の評判はガタ落ちです」
「あら、実家は何かしでかしたの?」
「いえ、何もしていませんが……、とにかくユリア様の評判が悪いんです」
「え? なんで?」
「我儘ですからね、私と一緒に辞めたメイド仲間は『ユリア様の我儘に付き合っていられない』のが理由だそうで」
「そんな人物を王家は嫁に来てほしい、と言っているの? 評判が下がるのは目に見えているけど」
「一応教育は受けてはいるみたいなんですが……、残念ながら余り進んではないみたいです。このままだと破棄も時間の問題ではないか、と噂が出ているみたいです」
「破棄なんてしたら実家の名に傷が就くわね、最悪降爵する可能性があるわね……」
どうやら実家は知らないうちに泥舟になっているみたいだ、当人達は知らないかもしれないけど。