レジーナのこれから
「これで手続きは完了ですね」
トントンと書類の束を机に叩きながら私は言った。
ここは旦那様の執務室、旦那様に離婚届にサインを書いてもらった。
「3年というのは意外と短い期間だったな」
「えぇ、でも非常に濃い3年を過ごさせていただきました」
私がニッコリと言うとハニカムような笑顔で旦那様は笑った。
私がこの家に嫁いでからは公爵夫人として社交パーティーは勿論、領地の発展に力を入れた。
それも今後の私の為でもあるんだけどおかげでこの3年で旦那様は相当な力を手に入れた。
これも私の狙い通りで王家に対して一言言えるぐらいの力は持った。
それを生かすも殺すも旦那様次第だけど、きっと正しく使ってくれるだろう。
「それにミッシェルの事も君には礼を言わなきゃいけない」
「いえいえ、やはり愛し愛される者同士がくっつく事が1番ですから」
旦那様と結婚した後、私はミッシェル嬢に会って話をした。
向こうは警戒していたのだが私は極めて冷静に話をした。
『自分は3年後には別れる予定だ。 貴女には後妻として旦那様を支えてほしい』
『其の為には貴女には足りないものがある、それを私が3年で教えて身につけてもらう』
勿論それはミッシェル嬢にやる気があるなら、の話だけど彼女は私の話に載った。
家柄で旦那様とミッシェル嬢は周囲から反対されていたそうなのでそれを覆すチャンスがあるなら乗ってみたい、そうだった。
ミッシェル嬢には私の秘書として常に私の側にいてもらい公爵夫人としての役割、マナーや知識を教えた。
「ミッシェル嬢は地頭が良かったので教えがいがありました。 彼女ならきっと旦那様を支えてくれますわ」
「君と別れるのが淋しい、とも言っていたよ。すっかり君に懐いだみたいだ」
ハハハと笑う旦那様を見て私は満足だった。
これで私は思い残す事は無い。
「離婚届が受理された時点で私は此処を出ていきます。 今までありがとうございました」
「レジーナ、君はこれからどうするんだ? 一旦実家に戻るのか?」
「いいえ、結婚した時点で私の居場所はあそこにはございません」
「そうだったな……」
旦那様は私の実家について調べてくれたみたいで私の境遇について驚いていた。
私の両親にとって私は出世や権力に使える『道具』として見ていなく愛情なんてこれっぽっちもない。
それに妹を溺愛していて妹はこの国の王家に嫁ぐ予定、というのを聞いている。
「私はもう誰かのために生きるのはうんざりなんです。 私はこれからは自分の為に生きる事にします」
「そうか……、それが1番良いと思うよ」
旦那様は納得した表情をした。
そして、私達は離婚届を役所に提出、受理された。
そして受理されたその日に私は荷物を持って屋敷を出た。