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2発目 戻ってきたよアナログマ

人類と遭遇するにはまだ早いレベルのおバカでトラブルメーカー花丸木(はなまるき)次郎(じろう)

頭の回転は早いおバカな彼のせいで、山の奥地へと花丸木家は家族でニート生活もといお引っ越しすることとなりました。

次郎のせいでたくさんの人を敵に回し、いろいろなものを失ってしまいましたが、生きていればなんとかなる精神の花丸木家です。

次郎をお仕置きしながら、新しい生活に順応するため各々の役割をこなします。


マインクラフト系サンドボックス+MR(複合現実)+ドタバタギャグコメディ小説です。

「あなた、なんでこんな場所に?」

「それは次郎に言うべきだね」

「次郎……」

「…………」

山奥の僻地、息子の次郎のやらかしにより、ほとぼりが冷めるまで身を潜めることにした花丸木家。

木の板を適当に張り付けた家らしきものはあっても、水道もきていなければ、電気も通っていない。辛うじて携帯の電波は入るが、少し山の方に進めば電波は途切れる。

果たして花丸木家は生きていけるのだろうか?


「生きていけるのだろうか?じゃないわよ!それもこれも全部あんたのせいでしょうが!!」

国語の教科書を丸めてマイク代わりとし流暢な実況を始めた弟の後頭部に、姉美はハリセンを世界のオータニーばりのフルスイングで振り抜く。


次郎が原因の何度目になるかわからない引っ越しで、とうとう人の気配がない場所に辿り着いてしまったのだ。

そりゃ、どれだけ温厚な人だってその張本人をジト目で見つめる。


「こっち見ないでもらっていいですか?」

カメラに向かって文句をつける程度に余裕のある、まるで反省する素振りのない次郎に、音速を超えた姉美のハリセンが飛ぶ。



ハードウェアプログラマーで無職の父蔵は、MR技術を完成させるため、解雇された会社のノウハウのすべてと言っていい技術を勝手に組み込むだけでは足りないと、全世界のAR・VRの特許技術にも手を出し、それを次郎がネットに公開し暴露したせいで、全世界訴訟ランキング最上位者に名を連ねるのは時間の問題だった。


スーパーOLでまったく売れない小説家の母絵は、結婚後書いたドキュメンタリーチックの小説があるのだが、自費出版したものの1冊しか売れず、あまりにも陽の目を見なかったためにやけくそになり、改訂版では実名を書いてハードディスクに保存していたわけだが、そのヤバい改訂版を次郎がネットにアップロードしたせいで、日本の国会及び日本経済を揺るがしかねない日本経済界の大不正が白日のものとなり、さらに著者である母絵がなまじ関係者であったために、極めて信憑性の高い内部告発となり、関係者は全員即日懲戒解雇、野党は怒り狂い、与党は泣き叫ぶ、過去の首相から現在の首相まで国会招致されて弁明をするはめとなり、国会が地獄絵図と化していた。


世界にケンカを売った父と、日本の経済基盤をぶっ壊した母に比べたら彼らの娘で、次郎の姉の姉美はまだ傷が浅い。そう、まだ傷は浅い。中学校始業式で一目ぼれした憧れの先輩と組体操している漫画だけしか暴露されていないのだから。

もっとえげつないことをしている漫画はまだ作成途中で暴露できなかったのだ。


「おめえは、マジで自分がなにしたかマントルより深く反省しろ!!」

姉美が肌身離さず持っている、憧れの先輩との愛のノートと書かれたクロッキーノートのラフをこっそりと写真に納め、ネットに流そうと電波の届く範囲に行こうとした次郎だったが、光の速さを超えた姉美に止められた。


「相対性理論って嘘だったんだな」

光の速度に近づくにつれ時間は遅くなるとされる相対性理論の実証できないがゆえの永遠の謎が、光の速度を超えても生命活動を止めなかった=時間遅延が起こらなかった姉美のおかげで、別の理論を作る理由ができた。

「さかさまに吊るされ理論って名付けようと思うんだけど、どうかな~?」

家族を破滅に追い込みかねない、危険な暴露屋はロープで木に吊されながら、相対性理論に変わる新たな理論を考えていた。


でも、バカだから浮かばないけどね♪



「はあ……、あなたの血かしらねえ」

母絵は細い目をさらに細くして、頬を手に当てて困ったポーズをとる。

ちなみに、次郎によって困ることになることには諦めがついている。問題は生活してためのお金の問題だ。

「次郎はここで自主学習してもらうとして、姉美ちゃんが学校に通う手段よねえ」

ミニバンからハイパワー4WDセダンに買い替えさせた母絵は、経験を元に書き上げた行動最速理論が山の麓までの峠道に適用できるか、今夜から走り込むことを誓う。

まず狙うはこの山の主、そして再び全国制覇だ。

「ハイパワーターボ+4WDにあらずんば車にあらずだ。何人たりとも私の前を走ったら、鈑金7万コースでお仕置きよ♡」

伝説の走り屋として名を馳せていた母絵だ。

とりあえずは、山の麓にある学校に姉美を車で送り届けつつ、同じく麓にある小さな工場に通って生活費を稼ぐ旨の手配をした母絵だが、仕事を得るのに使った携帯電話には、先ほどからニュースでなくてもよく見る首相と同姓の方のお名前やら、官房長官や事務次官という役職名のお方が画面に表示され、それを片っ端から迷惑電話に登録しているのはいったいなんでだろう?

「お家のことで大変だから、今はそっとしておいて欲しいのよね~」

どう見ても、1家族より国家の方が大事じゃろがい!と思わなくもないが、母絵は国家という現実から逃避しつつ、家族という別の現実に向き合うことを決めたようだ。

「ペラペラソオオオオオオオス!!」

母絵はチェンソーのひもを引き、チェンソーの悪魔と化して家の周りの木を次々と切り倒していく。

「伐木等作業従事者の資格を取っておいて正解だったわ!」

伐採禁止の屋久杉すら切り倒したとされるいわくつきのマイチェンソーを楽々と振るい、母絵は家らしき建物の周りの木を次々と伐採していく。

「みんな!!丸太は持ったか!?」

プラーガに寄生された村人どころか、吸血鬼も倒せそうな丸太を脇に担いでいるが、いったいこれからなにを始めるつもりなのだろうか?

「夜になったら、明かりのないところにゾンビが湧くから準備は昼のうちにしておくべきなのよ。そうよね、パパ?」

「よし!ここがリンクしたぞ!!」

夜対策(?)として、武器を作る中で出た端材で異常な数の松明を作ると同時に、丸太の先を鋭く尖らせて砦も建築していた建築ガチ勢の母絵は、オンボロな掘っ立て小屋の中からノートPCを持って出てきた父蔵に向かって、マ〇ンク〇フト基礎知識、照明による湧き潰しは基本だよねと同意を求めるが、父蔵は懲りずに家周辺の地形をMR化するためデータ処理を続けていた。

「母絵さん、家の方を僕の作ったアプリで見てくれるかい?」

「え、ええ」

家の中の湧き潰しは基礎の基礎なのだが、冒険ガチ勢だった父蔵なら湧き潰しはむしろ道さえ見えればいい程度とわかっている母絵は機嫌を損ねることなく、父蔵の作ったアプリを起動して言われたとおりに本体背部のカメラを掘っ立て小屋に向ける。

「パパ!凄いわ!」

「ん!?この建築は母絵さんが作ったのか!これも採用しちゃおう!」

画面に表示されているボクセルで表現された四角い家と地形とオブジェクトを生み出した父蔵をいつものように手放しで絶賛する母絵と、母絵の作った丸太の砦を見てインスピレーションが刺激されて新しいアイテムを実装し始める父蔵が絶妙に噛みあってない気もするが、物心ついたときからこの二人はこうなのだから、こうなのだとしか思わなかった。


「相変わらず、パパとママが仲良しってだけでも安心しちゃうわよね」

「うん。2人の子供として生まれてよかったと思う」

木から下され、今度は焚火の上で豚の丸焼きみたいな恰好で木に吊るされながら焼かれながらもしみじみ思う。

「……ん?焼かれてる?」

「いい話風にまとめようとしてるけど、憧れのキタムラ先輩との漫画を勝手にアップロードしたことは私は許してないんだからねええ!!」

「あっちいいい!!!おたすけええええええ!!!」

姉は初恋の先輩との恋路を邪魔された恨みから鬼になっていた。



「(……あれ?)」

実の姉に火あぶりの刑に処せられているというイカれた目に遭っているから見えた幻覚だろうか?



……森の奥でボクセルチックな人たちがこちらを見ていた気がした。

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