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01 健気な妹ちゃん


「ゲホッ! うぇ……」

「大丈夫? 喉痛くない?」

「い、痛い……」


 二日前、一介の男子高校生である僕『冬寺風ふゆでらかぜハル』が、新型コロナウイルスに感染した事が発覚した。

 それからというもの妹である──冬寺風ふゆでらかぜアキに、僕は看病してもらっている。


 彼女に病気をうつしてはいけないので、

 あくまでも扉越しだけれど。


 お粥を作って持ってきてもらったり、体温計を持ってきてくれたり、他にも様々なことをしてくれる妹。


 ……こんな献身的な妹を持って、お兄ちゃんは幸せだよ。


「胸は痛くない?」

「はい、肺は大丈夫だけど。喉が無理かも」

「そう……お兄ちゃんか弱いから、のど飴持ってきてあげるね」

「マジで助かります」


 自室のベットに転がりながら、扉越しの彼女に『のど飴』を頼んだ。

 これは言うまでもないかもしれないが、僕の熱を下げるために言ったギャグは、何のリアクションも無くスルーされてしまった。


 ──肺は痛いですか?


 ──はい。


 どうやら、彼女にとってこの爆笑ギャップはつまらなかったらしい。いや、単純に気付かなかったのかも……?


 なんかすみませんね。


「持ってきたよー」


 あれから数十秒もしないうちに、愛しい妹の声が飛んできた。


「あざす」

「扉の前に置いとくからねー?」

「……あざあざあざっす」

「感謝は一回! 一度で済ませる!」

「はい」


 取り敢えずのど飴を持ってきてくれたということなので、僕は重い体をベッドから起こし、少し歩いて扉の前へと着く。


「ゴホッ、ゲホッ……」

「じゃあ、ちょっと扉から離れてリビングに行ってるから。その間に取ってねー」

「は、はーい……」


 なんというか。

 妹の気遣いが凄い。


 僕は少し待ってから扉を開けて、床に置いてあったのど飴がたんまりと入った袋を持ち上げた。


 扉を開けた先は廊下が横に広がっていていて、右手に行くと行き止まり、左手に行くと……リビングに繋がっている曲がり角がある。

 左に曲がり、右に曲がるとリビング、だ。


 なのだが、その角で──じっ……と、何の音もなく此方を監視している妹を、僕は見つけた。

 彼女の通う中学校のセーラー服を着る、黒髪ツインテールの美少女妹。


 僕はアキを一瞥し、すぐに視線を落とす。


 急なホラー展開だった。


「──」


 とくに反応することもなく、ゆっくりと部屋に戻って扉を閉じる。


 ビックリした。

 まさかまさか、献身的で可愛げのある妹が僕のことをコッソリと曲がり角から覗いているとか、あり得るわけないだろう?


 あり得たんだけどね。


 扉を閉じた後は。

 ゆったりとした足並みで、元いたベッドへと戻った。

 体が重い。喉には嵐。頭には衝撃が響く。視界はぼんやりしている。


「あー……、くそ」


 のど飴を一粒袋から取り出して、口に放り込んだ。これで少しは喉の痛みも軽減されるだろう。

 焼け石に水かもしれないけれど。


 キャンディは口の中で転がって、ハーブのほのかな香りを醸し出す。

 遅れてだが、ミントの爽快感もやって来た。


 いい匂い。

 いい感触だ。


「のど飴、これでハーブミントのやつで良かった?」


 僕が美食家を演じてのど飴を食レポしていると、再び扉の先から可愛げのあるの声が聞こえて来た。

 アキさん! まじで助かってます!


 ……妹相手にそんなことを言うのはちょっと気恥ずかしいけれど、そう感謝を伝えたい。


「助かってるよ」

「本当に!? なら良かった」

「ハーブミントは僕の大好物だからさ。アキには言ったことないかもしれないけど」

「大丈夫、知ってるよ。お兄ちゃんが二ヶ月前に友達と出かけたときあったでしょ? その時の、駅前でその会話してるの聞いてたから!」

「そっか〜」


 そ、そうか……。

 どうして僕が言っていないことを妹が知ってると思ったら、そういうことなんだねぇ。


 ん?


 ──ものすごく自然に。

 妹からのストーカー宣言みたいなものされた様な気がするのだけど。


 ……。


「なぁアキ。アキってさ、お兄ちゃんが友達と遊びに行ってる時に……なんで駅前に来てたんだ?」

「え、なんで?」

「いや、特に深い意味はないんだけどさ。純粋に気になって──」


 喉が痛いなか、口の中で飴を踊らせて、妹にそう聞く。

 すると。


 元気で健気な妹は、純粋無垢に、当然のように答えた。


「──え? そりゃあ、愛しのお兄ちゃんにうざったらしい寄生虫おんな共が付かないか、監視に行ってただけだよ?」


 と。

因みに作者は現在、コロナウイルスに感染しています……。

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