感傷(乱文)
駄文です。
「そこ、危ないよ」
何気なく空を見ていた。
一歩踏み出せば急な坂から転げ落ちるだろうと、思わせる程のところまで足が伸びていることに気付き、焦って影を引っ込める。
背には夕焼けの熱を感じ、顔も少し熱かった。
「ありがとう」
そう返す頃にはその背中は遠く、聞こえてないかとため息を吐くと、くたびれた背広のその人はゆるゆると手を振る。
ただそれだけのことだったのに何故か無性に嬉しくなり、家に着くと真っ先に母親へその話をした。
すると母は顔を醜く歪め、なぜそんな危ないことをしたのか、ぼーっとするんじゃない、と普段から言われてる小言を、機会を待っていたかのようにこれでもかと並べた。
そうじゃないんだ。
ただ私は言葉に言い表せない喜びを誰かと共有したいだけなんだ。
ううん、私の感じた喜びをあなたに一緒に感じて欲しかっただけなんだ。
たったそれだけの願いすらも、私たちは日常に奪われてしまう。
責任、教育、雑務、疲労、悩み、生活。
社会は人を社会人にする。
社会人でなくてはならないと、人は大声で叫ぶ。
社会人じゃなくたって、人は人なのに。
そうやって私たちから一つ一つの些細な幸せを奪うから、私たちは影が差すんだ。
ただ息をしていていればいい、あなたがそこにいてくれればいいと、嘘でも言ってくれたらもっと上手く笑えたのかもしれない。