76話 打ち明け
のんびりと街中を歩くヒョウガ達はというと。
「そう言えばさ、ここってどこで特訓で来るんだ?」
「言われてみれば、教えて貰って無かったね!」
「あ、あそこに地図? みたいな物があるわよ!」
とアミリが指をさす方を見遣ると、確かにそこにそれらしきものが置かれており。
「何々、ふむふむ。現在地がここだから・・・・・・向こうにそれらしきものがあるぞ!」
彼らは地図に従って向かう。
―――街を出て、更にコロシアムのある方まで行き、そこからすぐ右に行ったところに、目的地である建物に辿り着いて。
そこの隙間からのぞき込むと、多くのチームが特訓をしており、諦めて引き返すことに。
そして選手専用ホテルへと戻ると。
「んじゃあ、後でな」
「またねなのじゃ」
ヒョウガ達はリーフと別れると、部屋へ戻って行き―――。
「なあ、皆」
と真剣なまなざしで見つめると、カナミたちは息を呑む。
「今まで隠し続けて来た事を話そうって決めたんだ」
「え? 隠し続けて来たこと?」
「え? ヒョウガ君。何話そうとしてるの?」
ヒョウガがそう切り出すと、カナミだけでなく、シナモンまで聞かされていなかったからか、戸惑う。
「隠していたことそれは―――俺は率直に言えば天使使いなんだぞ」
「天使使いって、あの昔の歴史書とか、童話に出て来るアレですの? ヒョウガがそんな冗談言うとは思わないですけど、本当だったとして何でですの?」
自分は―――天使使いだと言い出す彼に、それを唯々呆然と聞いていた彼女たちだったが、アーティナだけ口を開けて、誰もが知る程度の事を話すも、半信半疑でそう問うと。
「覚えてるよな、始まりでもある、学園を襲って来たライディス基漆魔の件」
「と、突然何を言い出すのよ? 覚えてるに決まってるでしょ!」
「あの時、俺にだけしか見えない少女が何故か現れて、契約をしたんだ!」
突然に過去の事件の事を掘り返され、彼女が忘れる筈がないと言いたげな顔で言い放つ。
すると彼は、自分以外の誰にも見えなかった実態を語り―――。
「契約ってどういうことでしょう?」
「簡単に言っちゃうと、キスだ」
「キ、キキキキス!? キスってあの??」
ふと疑問に思った事を訊ねたミューフィへそう返す。
すると、それを聞いてたアミリは衝撃発言に動揺が隠せない様子。
「で、何処で思いついた話だー」
「そ、そうよね」
「やっぱいうだけじゃ、言うだけじゃ貰えないか。それじゃあ、証明してやるぞ!」
「だから、契約者以外には見えないんだってば」
とシナモンが言った刹那―――。
ヒョウガが謎の力により、天使の周りを光輝が包み込んで、間髪を容れずに文字通り―――彼女らの前で露になった。
「こ、こいつが天使!? ただの幼女じゃない」
「幼女言うなー。天使だもん。…て、あれ」
アミリが本心からそう言うのを聞くや否、シナモンが思わずいつものセリフを言ってから。
「何で見えてるの?」
「ん・・・・・・!? 天使なら天使の力を使えば、もしかすると見えるんじゃないかと思ったんだが、本当に見えるようになるとは思わなっかったぞ」
「こんなの不条理だもん」
と天使が不満を漏らす。
「で、話に戻るぞ! 十悪率いる悪徳罪業団の幹部は残り八体いるみたいだぞ」
「そ、それって前の二体よりも強いわよね!」
「そうなんだよ。これからもっと強い奴が来るんだもん」
「んでもって、俺だけしか現在の天使使いはいないんだ」
と彼が告げた直後、シナモンは「え? 現在は違うよ」と予想に反した事を言い出す。
「実はここ二ヶ月で二人も天使使いが現れたんだ」
「ん・・・・・・!? そうのか!?」
契約者に知らせてなかった情報に、ヒョウガは吃驚仰天していまう。
「そう言えば、あの時運営委員会から盗まれたものって・・・・・・」
「確か交武祭典>」
の仮決定書だよな」
「ソレだけじゃないもん。二人の天使使いの内の片方の天使から聞いたんだけど、どうやら、その交武祭典の決定版と、全ての情報とデータが盗まれたんだって!」
思い出しながら話し始めたアーティナだったが、先にヒョウガに言われてしまい。
天使から聞いた事を皆に話す。
「それってヤバいんじゃないかー」
「ああ、サラの言う通りだ! 二か所で〈交武祭典〉の情報が盗まれている以上、何かが起きようとしているのは間違いないぞ!」
「ヒョウガ先輩の言うことは否定できません。こうなった以上、何かが起きる前に止めなくてはいけません」
慌てふためくサラと、嫌な予測をするヒョウガ。
危惧するミューフィは、未然に防ごうと心に決める。
「元学園長がどういう手段で来たのかは分からないが、何かの目的が有ると言うのは間違いないぞ! そこんところ知らないか? シナモン」
「え~そんなこと知らないもん。でもね、何だか良くないことが起きようとしている気がする」
と神妙な面持ちでそう言い切った。
その次の瞬間―――
天使の力の効果が切れたのかの下、消えてしまっていた。
それから色々と話すうちに、四、五十分が経過した頃。
とんとんと、ドアを誰かがノックする。
そして入って来たのは、小さなメイド―――エーゼルではないか。
「ご主人様、それにお嬢様。夕食のお時間でございます。祝宴場へ来てください」
「ああ、分かったぞ!」
晩御飯のお呼びが掛かり、急いで会場へ向かう。




