75話 密かに動く悪しき者達
時を同じくして、丘の上に佇む小屋の中では。
現在ここには、紺色の清楚ロングウェーブヘアの少女―――ネチスィア。その弟で双子の兄―――オム。双子の弟―――マル。そして、祖父―――せロラン・リュードと、ルームメイトと別れてこっそりとやって来た最後の仲間。
彼の名は―――モリヤマ・レクト。ヒョウガの従兄妹だ。
因みにムフィードと、ヒアイは外で見張りをしている。
「少し遅くなったけど、お昼ご飯だからね♪」
「ほお、クリームシチューかのう」
「外は寒いと思ったんだ♪」
ネチスィアがお昼ご飯を知らせた途端、真っ先に孫の作ったものを見て、そう言う。
すると、その料理にした理由を伝え、それを聞いたリュードは「確かに冷えていたから丁度良いのう」と、嬉しそう伝える。
「それじゃあ、食べよう♪」
「戴こうかのう」
「「戴きます」」
「戴きます」
そう言って食べ始め。
パクッ、
「ん~ん。美味しいのう。久し振りの愛孫の手料理はやっぱ良いのう」
パクッ、
「ん~ん。初めて食べるけど、とても美味しい」
祖父が孫の作ったシチューを美味いと褒めてから、レクトも美味いと表情一つ変えずに言うも。
「美味しそうに見えない」
「ご免。感情移入が苦手で、どうしてもこうなるんだ」
「それなら仕方ないよ」
弟のマルの指摘を受け、訳合いを話したことで理解してもらい。
シチューが無くなり、ご飯も食べ、サラダを間食し、兄のオムが皿洗いをして、席に着き―――。
「では、本題に入ろうかのう」
そう切り出した彼は。
「早速今晩にでも、ターゲットの一人を狙ってもらえるかのう」
「しっかり発覚ないようにしてくれれば、条件を出さなくても、良いさ!」
「それに関しては、大丈夫じゃよ」
そう言って取り出したのは、暗黒色に包み込まれたマントと、本格的な狼の被り物とに、サーベル一つ。
「で? 誰を狙えばいいのさ?」
「それはじゃのう」
祖父は懐から一枚の写真を差し出す。
「了解」
こうして彼は仕事を受け取りーー
「お爺ちゃん。私たちは♪」
「今は無いのう」
「分かった」
「それなら、分かった」
「早くしたいね」
張り切って聞いた姉だったが、リュードはその一言を言い放つと、ネチスィアはしょぼくれてしまうが、弟たちは冷静な声音で返事を返す。
「そうだ♪ 私たちの出番の時は思いっ切りやろう♪」
「そうだね」
「思いっ切りって好いね」
ポジティブ思考な姉に、二人も頷く。
「では、頼むからのう。レクト」
「はい、リュードさん」
そう言った直後ーーー彼は小屋を後にする。
交武祭典の裏で悪しき者たちが、尚に動き出そうとしていることなど、誰として知り得ることなど無いのだろう。




