73話 アクシデントと海底楽園都市《ライシス》
修正とシーン追加しました
出発する前に'妙なもの´に気付いた乗組員さんが、
「え~と、皆さん、先ほど潜水艇内を捜索中、怪しいバッグを発見しました。安全の為に一度外への避難にご協力ください。安全が分かり次第にすぐに出発するよう指示してきますので」
乗組員の男性の一人が血相を変えてやって来た。
それを聞き、慌てふためく人も、驚く人も、理解が追いつくのに手間取っている人も冷静な人も皆、急いで外へと逃げて行く。
そして乗組員のうち三人と、運転手も一時避難を行い。
「あの慌て様は最高だ。さてと」
本性を現した長身の男性の乗組員―――鍵は、元学園長へ連絡を入れ、
「では行こうかのう」
「了解でしょう」
「分かったメア」
元学園長―――セロラン・リュードの合図で、偸盗から生まれた悪魔―――盗魔と、両舌から生まれた悪魔―――裂魔と共に、誰の目にも触れぬ事無く、艇の下部にある荷物入れへ潜り込んだ。
そして発覚ぬよう上手く隠れることに成功。
「これで後は最後まで乗っているだけじゃのう」
「では念のために気を付けましょう」
「確かに必要メア」
などと一人と二体はそれぞれがそう口にし。
「皆様、お待たせ致しました。唯のタイマーとクッションでした。誰かの悪い悪戯でした。でももう大丈夫そうなので、潜水艇に戻って下さい」
乗組員の長身の男性は、全員の目の前に現れ、予め用意しておいたタイマーとクッションをバッグから取り出して見せた。安心させてから他の乗組員や運転手も戻って行き、已む無く潜水艇は出港する。
そして最後に離島へと向かう。
「それにしても驚いたのじゃ」
「ああ、まあ、絶対危ない物だと思ったから、安全なものでよかったぞ!」
「そ、そうね。それにしても一体だれが何のために仕掛けたのよ?」
先と同じ綺麗な景色が眺めれるテラス席に座り、リーフが早速口を開く。それを聞いたヒョウガは危惧しすぎていたと口にした。アミリは仕掛けた人物の理由を気に掛けていた。
「確かに気になるね!」
「何事も無ければいいですの」
「ワタシも同じことを思いました」
「なんだかその言い方だとフラグにしか聞こえないよー」
気掛かりなカナミと、アーティナ、ミューフィはこれからの事を危惧し始めて。
そのセリフを聞いたサラはフラグだと喚く。
「みんな心配のしすぎなのじゃ。唯の誰かの脅かしに決まってるのじゃ。心配いらないのじゃ」
「リーフのそう言う所が、俺は好きだぞ!」
「や、やっぱりヒョウガ先輩は、私よりも積極的でこういう子が好きなのね……」
「ん・・・・・・!? 何か言ったか?」
「な、何も言って無いわよ。聞き間違いでしょう」
幼女が彼らに少し強くそう言うと、彼は大胆にもそのような発言をする。
唇を噛んだ彼女は、自分にない物を持つの事を妬み、疎ましく思う悪い自分がいるではないか。
そんな事をしている内に、何時の間にか離島についており、その島の代表二チームと先生、運営委員が乗り込む。
全学園代表が揃い、潜水艇は―――いよいよ海の中へと潜って行く。
その為先程迄空いていた天井が閉まり始めり出す。
すると早速、辺り一面に沢山の魚が現れて、
「奇麗ですの」
「本当ですね」
「あのお魚可愛いよー」
「ホ、本当ね」
「お魚が一杯なのじゃ。奇麗なのじゃじゃ」
魚の群れを見たアーティナ、ミューフィ、サラ、アミリが見た率直な思いを述べ。リーフは見るのが初めてだったのか、大燥
ぎし、喜ぶ。
「ねえねえ、ヒョウガ君。お魚が沢山泳いでるよ」
「そうだな」
―――本当、普通の子供みたいだな。
とヒョウガは天使―――シナモンの燥ぎっぷりを見て本音を漏らす。
そこで、元学園長らですら予期せぬアクシデントが起きてしまう。
―――その原因は、潜水艇を囲むように三頭の鮫がこちらへと襲い掛かって来たから。
ドォォオオン! ドォォオオン! ドォォオオン!
ガブリガブリと鮫の牙で噛み付かれてしまい。
鈍い音と、その直後に来る大きな衝撃により、艇がバランスを保たれなくなってしまい。
『皆様、お分かりかと思いますが、鮫の攻撃を受けて、墜落して行ってます。慌てず、柱、または丈夫な何かにしっかりと捕まっていてください』
―――落下していかざるおえない。
『ぎゃあああぁ~』
彼方此方こちらから悲鳴が木霊する。
そして海底ギリギリのところで、まるみのある声音で一人の少女がこのタイミングで技を発動。
「精霊魔術<精霊の導き」
そう少女が唱えた直後―――潜水艇の自由落下が止まり、独りでに動き出した。
―――否、違う。
とヒョウガが思ったのもその筈だ。何故なら彼は目にしてしまったから。
彼らが乗る潜水艇が、トラ型の精霊により、目的地へ文字通り―――導かれようとしている所を。
そして精霊使いの少女の技により、創り出された誘導線と、トラ型の精霊により目的地を目指す。
そして後、六分が経過したその時ーーー
「これが海底楽園都市何だね!」
そうカナミが呟くと。
目の前に現れたのは、都市全体が水の結界に覆われ、彼方此方に娯楽施設や遊園地がある。中央にはコロシアムの様な物が有り、他にもいろいろとあって『楽園』と呼ばれるのも分からなくもない。
「ん・・・・・・!? 此処がそうなんだな。中々良い所だぞ」
「確かにそうなのじゃ。沢山遊んで、戦うのじゃ」
「あ、遊んでばかりは駄目なんだからね。特訓もしっかりするのよ」
ヒョウガがどうやら気に入った様子で、リーフも同じらしく、予定を決め、アミリが内容に対して注意をすると。
「では皆さん、到着いたしましたので、皆さん降りて下さい」
と乗組員の長身の男が全員に指示を呷ると、続々と潜水艇を降りていく。
―――水の中でも、結界の中の為普通に歩けるらしく。
その為の結界のようだ。
全員が外に出ると、乗組員の長身の男は準に荷物を取り出した。
全ての荷物を取り出し、潜水艇の乗組員を残し港を進んだ。
「せいぜい残りの時間楽しむといい。でないと地獄のような時間しか残らないからよ。あの人も喜ぶ恐ろしい時間が」
白いフードを被ったマントを纏う少年の姿へ変わった男は、歯揃えの悪い牙を剥き出しに笑う。
マントの胸元には黒い太陽が描かれていた。
少年の姿が本来の姿なのだろうか。
人気が無くなったことを確認した元学園長は、二体の悪魔と共に荷物入れから出ると、目的地である丘の上に立つ小屋を目指して歩き出す。
そこへ責任者らしき人と、二チームがやって来た。
「ようこそ! 皆さん、無事に辿り着いて頂けました。海底王に仕えるものの一人です。そしてこちらの二チームが、海底楽園都市の代表チームです」
海底王に仕える男性が紹介した直後、キャプテンと思わしき人物が口を開き―――
「本当はもう一チームのキャプテンのお話があったんですけどね、時間の都合上そのキャプテンの話は割愛させて貰います。アタシ―――グレナ・マイゲラット率いる、チーム〈混種多族〉。こちらがジャーラ率いるチーム〈魚人族〉です。どうぞ! 宜しく」
亜人の少女―――グレナが、予め了承を得た上で自己紹介とチーム名を口にして、話を終わらす。
それから、海底王に仕える男性に又バトンを託し。
「では、これからの話をさせて頂きます。一先ず、皆さんが宿泊する選手専用のホテルへ案内します」
彼の後に続き、全員が三十分ほど歩いた所に建つ、選手専用には似つかわしい豪華な高層(宿泊施設)に向う。
<交武祭典>《アルージェフェート》参加者専用のホテル前。
「では、先ずこちらの説明からさせて頂きます。部屋割りはこちらになります」
海底王に仕える男性が、部屋割表を全員に見せ。
「この通り、部屋には学園名とチーム名。それから男子と女子と書かれています。では、一度荷物をお気に言って下さい」
と言うことで、荷物を置きに行く。
カナミたちの部屋は、二つのホテルの内、右側で、エレベーターで二階に上がり、その真中だ。
そしてヒョウガの部屋は、その二つ隣りらしく。
部屋の窓からは、今は賑やかな街や店が見え、更に遠くの方には丘の様な物も見える。
「ほら! ヒョウガ、行くよ」
「ああ、そうだな」
カナミの呼びかけにそう返すと、部屋を出てエレベーターで一階に下りて、出口へと戻って行く。
彼らが戻ると、他のチームも全員揃っていた為、海底王に仕える男性が、口を開き―――。
「それでは、簡単に説明します。二日後の午前十時より、コロシアムにて開会式を行います。其方で海底王様から詳しい説明があります。それ迄の間は、ご自由にお時間をお過ごしください。最後にお食事についてですが、今晩は祝宴場にて十九時となります。尚、明日につきましては、部屋食で七時になります。これで終わりです」
説明を一通りした所で、自由時間となった。
乗組員に化けてたフードの少年とは何者なのかこれから章跨いで明かされていきます




