69話 ギクシャクした心
部屋へそれぞれ帰って行く中、ヒョウガはリーフを呼び止め。
「リーフに話があるから先に帰ってくれ!」
「そ、そう? ふーん、分かったわよ!」
彼に言われ、アミリは何故となりつつ承諾し、他の四人と共に先に部屋へ戻って行く。
リーフの方も、仲間に先に帰らせ、ヒョウガと二人で近くにあるベンチにあったため、そこに腰を下ろす。
早速、彼は話を切り出す。
「約束、忘れてないか?」
「勿論覚えてるのじゃ。妾が負けたらヒョウガに貰われるのじゃ」
そう幼女は答えると。
リーフが期待した言葉とは別の言葉が、彼の口から放たれて。
「やっぱり覚えてたか。冗談のつもりで言ったのに。あの時は勝てないと思ったからあんなこと言っただけだ。それにホントだとしても駄目だ。 何せ、未だ君は十一歳だろ。だからあと四年、その気持ちが変わらないでいてくれるなら、前向きに考えてあげるぞ!」
「・・・・ヒョウガの嘘吐きなのじゃ。プロポーズしておいてなのじゃじゃ」
泣きそうな声になりながら、リーフは言う。
一呼吸おいてから、ヒョウガはそんな要求をしーー
「プロポーズになるのか? 冗談てかそんな感じのつもりだったし。けどホントに悪い。代わりに友達になってくれないか?」
「グスグス。もうヒョウガなんて知らないのじゃ」
そう言ってリーフは遂に泣き出し、ベンチから立ち上がると遁走する。
「悪い事しちゃったな!」
とヒョウガはそう呟き、ぎくしゃくした気持ちのまま、自分の部屋へと戻って行く。
リーフの部屋でのこと。
泣いて帰って来たリーフに、コロネは優しい声音で聞いてきて。
「何があったの? リー、どうして泣いてるの??」
「うヴぇ~~~ん。グスグス。ヒョウガに裏切られたのじゃ」
「どう言う事?」
突然そんなことを言われて分からず、リーフはあったことを全て話す。
「それってさ、別に向こうも嫌いって訳じゃないみたいだし、惚れさせちゃえばいいんじゃない?」
「たとえば?」
首を傾げる幼女の耳元で、コロネは呟く。
ごにょごにょ。
「それは良いアイデアなのじゃ」
「じゃあ、試してみれば」
―――あ、やっちゃった。まあ、良いか。
彼女は何かを思い出したが、言うのを止めておくことにした。
「それより、今日の夜ご飯はリーの大好きなオムライスにしよっか」
「わーいわーい。オムライスなのじゃ」
晩ご飯が自分の好物だったのもあり、リーフは#跳梁__ちょうりょう__#して満々の笑みを浮かべていた。
そして夜になり、皆寝寝静まった頃。
場所は、南西南の奥にある森―――悪魔の森。その中でも憩いの場と言われている場所。
そこへライトを持った元学園長。そして悪魔達が集まっていて。
そこで発信器から一本の連絡入り。
「ほほ、アリマ・ヒョウガが・・・・・・そうかのう。それで'アルテミス'。他に情報はないかのう。ふむふむ、そうか、分かった。では、誰にもバレぬようにのう」
アルテミスと呼ばれた人物は、元学園長へ情報を漏洩しているではないか。
その会話を分節的に悪魔の一体―――闇に包み込まれた死神。闇死神が口を開いて。
「誰からの連絡だ?」
「儂わしの大事な教え子で、協力者じゃのう。例の天使使いが、<交武祭典>>《アルージェフェート》へ参加することが決まったらしいのう。ついでに残りの天使使いも」
聞いたことを全て悪魔に伝えると。
「それでのう。誰か儂と行こうと思っているのだがのう。ついでに言うが、向こうにはすでに、孫が言っておるのだ」
話を最後まで聞き終えると、一体の悪魔がアピールをし。
「この盗魔が行かせて貰いましょう。必ずや主人を喜ばせましょう」
と角が無いベリーショートヘアに、吸血鬼が纏っている黒のマントを着ている偸盗から生まれた悪魔。
「ムフィーだけでは物足りないメア。ラスフも一緒に行くメア」
そう言ったのは、盗魔の前に座っていた、パーマでミディアム。髪の頭には四本の角を生やし、恰好はゴスロリ服を身に付けている両舌から生まれた悪魔。
悪魔の名は裂魔だ。、
「では決まりじゃのう。因みにムフィードとヒアイは結界を抜けられるのかのう」
一緒に行く二体が決まり、気になっていたことを二人に聞く。
すると二体が頷いて―――。
「勿論可能でしょう」
「ラスフモ大丈夫メア」
「それでのう。もう明後日には出発でのう。それにコッソリ乗り込もうかのう」
と予定と行動を告げ、彼は森の外へと出て行く。
こうして、元学園長と悪魔達が誰も知らぬ所で動き出しているなど、誰も予想だにして居ないだろう。




