61話 続く葛藤と決勝戦
そして決勝戦当日。午前のこと。
今だにカナミは、トラウマをと葛藤していた。
そんなカナミを見ているだけのヒョウガ達は実に辛い。
ーーー…どうすれば良いんだろ…
カナミは悩みに悩む。
トラウマを乗り越える為にも。
そこへ近付いてきた人影が。
「カ、カナミさん。あんまし考えすぎるんじゃないわよ! 怖いって怯んでてもなにも変わらないわよ」
と、一拍開け、
「勝てないって諦めるのは簡単よ! 誰にだって出来る。けど、本当にそれで良いって思ってるの? 」
アミリは必死になってカナミへ訴えかける。
それをただ聞いていたカナミは言い返せない。
「・・・」
アミリの言葉はまだ続く。
「た、たった一度や二度コテンパンにされたくらいで、諦めるんじゃないわよ! それと考え方を変えなさい。 ポジティブなことも考えてよね」
それだけ言うとそっぽを向いてしまい。
何かを言おうとカナミはするも、言えずに。
その変わりにまたアミリは。
「わ、私達は何があっても優勝するんだから! 信じてるわよ」
そうアミリが言うと、立ち上がって去っていく。
「…信じてるか」
一人寝室に取り残されたカナミは、そうぼそりと呟く。
時間は過ぎていきーーー試合の時間に。
外は晴々としていて雲一つ無いが、この時期とは思えないほどに気温が低く、肌が寒い。
そして試合三十分前のこと。
「んじゃあ、最終確認するぞ! やはりカナミは駄目だったか」
何のことかと言うと、誰が誰を相手するかと言うこと。
ここにいない一人に対し、予想していたのか。そうヒョウガは口にした。
ヒョウガが相手するのは、リーダーである少女―――リーフ・チェレヌで。アミリはエボットを担当し。アーティナがミカネ・コロネを、ミューフィはザクを、最後にサラがライディスとガヴェール。と言う組み合わせだ。
「が、頑張るわよ! 一人欠けてても」
「そうですね! でも屹度立ち直れます」
「頑張るよー。来るって信じるよー」
「可成りの強敵ですけど、きっと大丈夫ですの! カナミがいないのはあれですけど」
と四人が、緊張していることが伝わってくるほどに身震いをし、そんな状態でもカナミのことを思っていてーーー。
しかしヒョウガだけは、緊張を重んずる様子がない。
「緊張するだけ無駄だぞ! 全力を尽くして最後までやりきることが大事なんだ。戦っているうちに勝利に繋がる何かが見つかるかもしれないぞ! カナミのこともただ信じることしか出来ない」
彼の言葉を聞いた他の子達は。
「ヒョウガの言う通りですの! 全力を尽くして頑張ろうですの!」
ヒョウガの思いの篭ったセリフを聞いて、アーティナが強く頷いてそう言う。
それから時間は淡々と過ぎて行き、試合開始五分前になると、彼らは円陣を組む。
「んじゃあ、行くぞ!」
「「「おおー」」」
勢い良く地面を蹴って軽く砂埃を起こさせつつも、ヤル気を示す。
その後時間となり、中央の先生が立つ位置に向う。
「では唯今より、決勝戦を取りわせていただきます」
「それじゃあ、正々堂々頑張ろうなのじゃ。アリマ・ヒョウガ。フヅキ·カナミが居らんのじゃ。逃げたか」
「ああ、宜しくな。リーフ。そう決めつけるのは早いぞ!」
男性教師の試合の合図で、ヒョウガに全力の背伸びをしても届かないリーフが手を伸ばしてくるので、腰を低くして彼がその手を握って握手を交わす。
それに釣られて他のメンバーも握手をかっわす。
握手を交わすと、其々が作戦通りに動く。
「如何やっら個人戦で来るようなのじゃ。まあ、人数はこっちの方が多い」
「それじゃあ、こっちもそれで行きますね」
「そうするのじゃ」
リーフの承諾を得ると、コロネが指示を出す。
最初に仕掛けて来たのは、アーティナの方で。
「行くですの!」
コロネのゼロ距離に移動したたアーティナは技を発動。
「武装魔術<光耀一剣>」
アーティナの魔剣が輝き始めて、コロネへと斬りかかり―――。
「その様な攻撃では私は食らいません。先輩」
そう言ってコロネは、自身の武器である武装霊刀で真っ二つに切裂く。
「驚いてもらえましたか?」
ニカっとしながら、そうアーティナへ。
アキラの方は。
「どこからでも良いよー」
「オレが準備出来るまで、時間稼ぎ任せたぜ!」
「任せてよ!」
準備万端なアキラの一言で、ガヴェールがライディスへ時間稼ぎを頼む。
「それじゃあ、行くよ!」
とライディス害うと。
「武装植物操杖術<植物の楽園>」
杖を地面に突くライディス。
すると地面から、ニョキニョキと幾多もの植物が生えくる。
それがアキラへと襲い掛かってこようとしたが、彼女は妖精を呼び出しており。
「行くよー。妖精」
「はい、マスター。了解です」
マスターからの指示を受けた妖精。
「<フローヌ・ラース・トルリニ>」
襲い掛かって来る植物に向けて妖精は呪文を唱える。
すると、襲いかかかって来た植物たちに光が注がれて、見る見るうちに弱って行く。
軈ては消えていく。
「流石だな。アキラ」
「全然だよー」
嬉しそうにそうなアキラは、ライディスにそう言葉を返す。
そこへーーー
「準備出来たぜ!」
準備を整えたガヴェールが呼び出した。
「妖魔想像<雪女>」
彼が呼び出したのは雪女で、アキラへと凍てつく雪を吹かす。
「妖精何とかしてー」
「はい、マスター。了解です」
マスターからの指示を受けた妖精が呪文を唱えた。
<フローヌ·ラース·トルリニ> 」
すると、雪女は幾つもの妖精の光を浴び、みるみるうちに凍てつく雪が弱まり、雪女もろとも消えていく。
「オレの攻撃を防ぐとは…中々やるな」
「そうでもないよー」
驚きの表情を見せる彼へ、アキラはそう左右にてを振って言う。
ミューフィの方は。
魔笛を口元に構えたミューフィが、
「それでは行きます」
魔笛を吹くと。
「催鳥魔術<炎隼>!」
「僕も行く」
「 武装呪銃術<三千年の怨み>」
炎を纏った隼が上空に出現した。ザクへと襲い掛かろうとすると、彼の技で拒まれてしまう。
そのザクが放った技は、三千年もこの世を恨み続けて来た物たちの怨みがこもった弾だ。
「そう簡単にはやらせないから」
と至近距離までやって来て、そう告げた。
アミリの方は。
「そ、それじゃあ行くわよ!
武装魔銃術<星屑の弾>」
「ほな、行くで!
守護空間壁囲技<#無限壁__インフェニル__#>」
アミリがエボットに銃口を向け、引き金を引く。
ーーーバンバン。
アミリは幾つもの小さな鋭い星を鋭くした弾を、一ミリたりともズレることなく飛んで行かせようとしたがーーー
エボットの目の前に異能で壁を創り出した途端、数えきれない程の壁へと変化して自身の周りを囲み込む。
「甘く見たら駄目やで」
「こ、これがランキング上位の実力ってわけね」
ヒョウガの方は。
リーフを睨み付けるヒョウガに、彼女はニコニコと笑顔を見せてきて。
「んじゃあ、行くぞ!
武装二刀剣奥義<風神の竜巻乱舞>!!」
リーフの目の前に風神を出現させると、彼は踊り狂うように竜巻を起こす。
ゴーゴと音を立てて襲い掛かってきて。
踊り狂うように竜巻が襲ってくるが―――。
リーフが自身の武器である、神の輝きを放つ鉈で切裂く。
「残念だったなのじゃ。
武装神鉈技<#神隠__デューキャッシェ__#し>」
「流石は学園最強ってだけの事は有るぞ!」
「これは未だまだ初盤なのじゃ。初盤!」
ヒョウガはうんうんと頷き、それを聞いた幼女は嬉しそうにしながらそう言い放つ。
一方部屋でトラウマと闘っているカナミは。
「もう皆試合始まっちゃったな」
と呟くカナミ。
ーーー信じてると言われたは良いけど… ポジティブな事か
と先アミリから言われたことを思い出す。
けどカナミにはまだそれが出来そうにない。
しかし乗り越えようとは思った。
試合の方に戻る。
アーティナの戦いは。
「今度は私から行きますね。先輩!」
そう言った刹那―――コロネは片膝を立てて、アーティナの至近距離へ移動し、素早く刀を抜き放つと。
「武装霊刀奥義<#居合閃光__いあいせんこう__#>ッ、」
閃光を纏わせてアーティナを斬り倒す。
「がああぁ~。痛い痛い痛い痛いですの」
アーティナは腹から流血してしまい。
次にミューフィの戦いへ戻る。
「武装呪柔術<#積怨丸__せきおんがん__#>」
ザクが呪銃をミューフィ向け、引き金を引く。
放たれたのは、積とみ重なった怨みの弾で。それが彼女も元へと飛んで行く。
「食らう訳には行けません。
催鳥魔術<燕返し>!」
ミューフィは魔笛を吹いて、燕を呼び出すと、技を返そうとしていたのだが―――。
「ぐああああ~。痛い、痛い。痛い、痛い。もの凄い技です」
返せなかった技がミューフィを襲い。
アミリの戦いへ戻る。
挑発するような仕草をするエボットに、アミリは構ってはいけないと無視を通す。
「い、行くわよ!
武装魔銃術<烈火の弾>!!」
「来たな! ま、効かないけど。守護空間壁囲技<#絶壁__ぜっぺき__#>」
そしてまた銃口を彼に向け、引き金を引く。
ーーーバンバン。
アミリが放った激しく燃え上がった弾が、エボットの異能で創り出された絶壁で打ち落とす。
「甘く見過ぎやで!」
「お、思った以上に凄~く強いわね!」
とアミリは、相手の強さを再度確認した。




