60話 決勝前夜
部屋に戻ると、カナミは一人葛藤していた。
ヒョウガ達は、本人の気持ちの問題だからと、そっとしてのんびりと時間を過ごす。
気が付くと周りは真っ暗になっており。
―――ん・・・・・・!? もうこんな時間か。お風呂入れに行くか。
彼がスイッチを入れに行こうとしたら、既にスイッチが入っていて。
それを入れたのは、アミリだ。
そして今日の料理当番は、アミリだ。
メニューは、前にヒョウガから教えて貰らったドリアを作っていた。
何十分かして、出来上がると匂いに誘われて食立に集う。
が、カナミは未だに一人葛藤気持ちの整理をしているため、五人だけだ。
席についてなり、食べ始め…。
「ん~ん。美味いぞ! アミリが作ったドリア」
パクッ、
「凄く美味しいですの」
「ホクホクして熱いですけど、とても美味しいですの」
「それ分かるよー」
「ホ、ホント? それなら良かったわ」
ヒョウガたちに褒められて、頬をうっすら赤く染めたアミリがそう言う。
そして、ドリアはあっという間になくなり、他のおかずも見る見るうちになくなって行く。
食べ終わるとヒョウガが洗物している内に、一人一人お風呂へと向かう。
洗物を終えた彼もお風呂へと向かう。
お風呂を出ると、洗面所でごしごしと綺麗に歯を磨いて、嗽をし、その後顔を洗ってからタオルで拭く。
それから寝室へ向かい、寝る準備をして、少ししてから横になる。
そして何分かして眠りに就く。
次の日も今日と同じよう・・・否、運悪く荒れ模様で、真面に出れる様子ではなく、外に出るのも危ういため、特訓が出来ない。
なので、彼らは部屋の窓から已む期待を込めた眼差しで見つめたのは良いが、勿論効果はない。
其の儘、特訓が出来ぬまま、一日は終わりを迎えて。
次の日は、嵐が過ぎ去って晴れ晴れとした天気で。
この日は試合前日とあって、何時も以上に張り切って特訓をしており、そこへ差し入れをしに先生が来てくれてて。
「皆さん、差し入れです。やはりフヅキは…」
「んじゃあ、少し休憩するぞ! ああ」
その声に特訓を一次的にやめて、此方へとやって来て。
「はい、これ! 水と甘いドーナツだよ!」
「有難うございます」
「それじゃあ、頂くですの!」
「そ、そうね! 貰ってあげるわよ! ありがとう」
先生からの差し入れを受け取り、彼にお礼をそれぞれ言って、食べ始める。
「ん~ん。甘くておいしいですの!」
「ああ、確かに美味いぞ!」
「あ、甘くてモチモチしてて美味しいわよ! それに冷え冷えの水が喉越しに良いわね!」
彼らの味の感想を聞いて、ニコリと笑いながらそう言う。
そして水分補給を確りして、小腹を膨らませると。
「んじゃあ、摸擬戦するぞ!」
先生達が帰って行くや、ヒョウガはそう指示を出す。
そして組み合わせは、ヒョウガ、アミリ、サラと、アーティナ、ミューフィと言う感じだ。
「んじゃあ、行くぞ!」
「ま、守りなさいよね!」
「ウチもちゃんと守るよー」
彼の合図で二人は行動に移す。
「二人だけだけと頑張るですの!」
「それでは準備しましょう」
アーティナの指示で少女は動く。
「行くぞ!
武装二刀剣奥義<風神の竜巻乱舞>!!」
「行きます。
催鳥魔術<燕返し>!」
ヒョウガはアーティナの前に風神を出現と、ミューフィが彼女の前に立つ。
それを気にせず、踊り狂うように竜巻を起こす。
ゴーゴー。ゴーゴー。と音を立てて。
それをミューフィは、魔笛を吹いて呼び出した燕が技を撥ね返す。
その所為で、ヒョウガの所へと踊り狂う竜巻が襲いかかって来て、それを食らう。
「ゴーゴー。ゴーゴー。グルグル。俺の技を撥ね返すようになるとは、成長したな、ミューフィ」
「ヒョウガ先輩のお陰です。強くなれたのは」
ミューフィに向けてそう声を掛けると、彼女は嬉しそうに返事を返す。
「それでは行くですの!
武装魔術<究極の光魔一剣>」
「い、行くわよ!
武装魔銃術<水神の弾>!」
アーティナがアミリのゼロ距離にして、技を発動。
燐光する光が、突如照らしつけられた。
ーーーその光には、彼女の全てがこもっている。
その燐光を発する光が、光魔剣に降り注ぐ。
渾身の一撃で、少女へと斬りかかろうとするも、アミリは銃口を向けて引き金を引く。
ーーー距離がゼロ距離なだけあって、逃げ場など無い。
ましてや攻撃の最中なのだから。
避けることが出来ぬまま攻撃を食らう。
「がああぁ~。痛い、痛い。凄く痛いですの! 凄い技」
「い、一日特訓が出来ななかったからって、鈍る訳ないでしょ」
驚いた表情を見せるアーティナに、アミリが当然のように言う。
もうやるまでも無いと言う事で、摸擬戦を止めて、部屋へと戻って行く。
――――――――――――――――――――――――――――
部屋に戻ってからは、のんびりと時間を過ごす。
試合前日になっても、未だにカナミは気持ちの整理が付かずにいた。
――――き、気が付くと、陽が沈んでいたわね。
お風呂を入れに言っていたアミリがそんなことを思っていて。
夜ご飯は一昨日スーパーで買ったコロッケとサラダだ。
お風呂を入れている内に、ヒョウガ達は食卓に着く。
「んじゃあ、食うぞ!」
「戴きます」
「い、戴くわよ!」
「戴くですの!」
「戴くよー」
食事の挨拶をすると、食べ始める。
「このコロッケ美味いぞ! 三日前のとは思えない」
「ホ、ホントね! サクサクでホクホクしていていい感じね! 味が落ちてないわ」
「あ! このサラダも全然美味しいよー」
「確かに美味しいですの! 賞味期限も全然」
「ワタシはもこのドレッシング好きです」
其々が食べて思ったことを言うと。
見る見るうちにおかずが無くなって行き、ご飯も無くなったから。
ご馳走様をして、ヒョウガが洗物している内に、一人一人お風呂へと向かう。
洗物を終えた彼もお風呂へと向かう。
そのうちにカナミは、一人寂しくご飯を食べ…
お風呂を出ると、洗面所でごしごしと綺麗に歯を磨いて、嗽をし、その後顔を洗ってからタオルで拭く。
遣ることが全て終わると、リビングへと向かう。
今からは、明日の決勝戦の為に作戦会議をするらしく。
「そ、それで今回はどうするつもり? このままカナミさんが出ないってなったら…
」
「そうですのね。そうなった場合はどうするのか? 用意しとかないとですの! 相手は最強とその仲間なんですもの」
深刻な状態を予想したアミリの発言に、アーティナも悩む。
そこでヒョウガは、人差し指を立てて言葉を放つ。
「カナミが参加出来るのなら個人戦で行く! 駄目なら何処かを二人いれて個人戦はどうだ? 相手を倒したら状況に応じて、応戦と言う感じで行くのはどうだ?」
その彼の考えた作戦を聴いて、少し考え込んでから。
「屹度大丈夫だと思うですの! それに本領を発揮出来るから嬉しいですの!」
「そ、そうね。カナミさんのことは信じるわよ! あ、近距離モードにすれば大丈夫よね!」
「ワタシも頑張ります」
「ウチも超がんばるよー」
前向きな言葉をそれぞれが口にすると。
それを聞いていたカナミは、トラウマを克服するため考え込む。
ーーーどうすれば言いかは分からない。けど、私のためにそこまで考えてくれてるなら…
そう思うカナミではあるが、身体はガタガタと震えている。
どうすべきなのか。ただただ考えるが、その答えーーートラウマを乗り越える方法は見つからない。
このトラウマを乗り越えた先に一体何があるのだろうか。
彼らは寝室へ向かい寝る準備をして、少ししてから横になる。
そして何十分かして眠りに就く。
そして決勝戦前夜が、終わりを迎えた。
そう、終わりをーーー。




