44話 少女の葛藤
二戦目を無事突破した日の三日後のこと。
この日の予定は、二戦目を突破したチームが、三戦目の相手を決めることになっている。
そしてヒョウガ達は、掲示板の所へ向かう為に準備をしていた。
「よし、準備が出来たから行くぞ!」
とヒョウガが、身支度を済ませて他の皆にそう声を掛ける。
現在の時刻は、十一時十分を回った所。
「そ、そうね!」
「行こうですの」
「次はどんな相手か楽しみだね」
「楽しみです」
「ほら行くよー」
という訳で、ヒョウガ達はエレベーターに乗って、一階まで下りて行く。
そして掲示板の前に辿り着くと、そこには先生と男が一人立っていて。
「来るのを待っていたんだ。アリマ・ヒョウガ。他のメンバーたち」
「あっ!?」
謎の男が、ヒョウガ達が来るのに気付くと声を掛けて来た。
見覚えがあったらしいアーティナは、男を見るなり少し驚く。
「アーティナ。その反応は、僕の事を覚えていてくれたんだ!」
「ち・・・・・・違うですの。人違いですの!」
「それならそれでもいい。今はだ。次の対戦相手になってもらう僕たちの」
「良いですよ。受けて立ちます」
男が嬉しそうに言うと、慌てて誤魔化す。
返って来た言葉に対して、別に今は気にしていないと言う。
ーーーそれから、男はヒョウガに指をさして、戦いを申し込んだ。
断る理由が無いため、その戦いを承諾する。
「決まりみたいだね! それじゃあ、先生がここに書いて置くよ。日程は、四日後の午前十時。場所は競技場。もう行って良いよ」
先生が二人の部屋番号に印をつけて、日程を告げる。
それが終わると、部屋へと戻るように言う。
「じゃあ、当日だよ。アーティナ」
「・・・・・・」
謎の男の呼び掛けを、、黙り込んだ彼女は目を合わせようとしない。
表情は凄く曇ってしまっており。
――それ以上は何も言わず、男は帰って行った。
「んじゃあ、俺達も戻るぞ!」
「―――そ、そうね」
ヒョウガの言葉を聞いて、アミリはチラッとアーティナを見て答える。
そして全員で部屋へと戻って行く。
部屋に着くなり、アーティナはササッと手を洗い、嗽をして、寝室へと向かってしまう。
「ねえ、ヒョウガ」
「ああ、言いたいことは解っているぞ! 色々起きてごちゃごちゃだけど、アーティナとあの男には何かあるぞ」
「そ、そうよね」
様子を見ていたカナミが、アーティナの異変に気付く。
それを伝えようとするが、ヒョウガが言わなくても分かると言う。
更に原因についても、先ほどの男だと、二人は予測して。
-――あの二人はどういう関係なんだ? ただの同じ三年生って関係だけではないのは確かだ
とヒョウガは、腕を組んで考え込む。
「ちょ、一寸行ってくるわよ」
「 ちょ・・・待て! 今言ったって・・・・・・」
ヒョウガの言葉を最後まで聞く前に、リビングを出て行く。
ガチャッ、ドアを開けて寝室へと入って行く。
「ね、ねえアーティナさん」
「なん、ですの」
アミリの声掛けに対して、アーティナは布団から顔(今にも泣きそうな)を見せて尋ね。
「あ、あの・・・・・・今先会った先輩は誰なのよ?」
「そ・・・・・・それは知らないですの」
「そ、それは嘘よ! その証拠に凄く哀しい顔してるわよ」
「い・・・・・・言いたくないですの」
アミリの質問に対し、彼女は首を横に振って答えた。分かり易い嘘を淡白と見抜かれた為、布団に顔を隠してしまう。
―――こ、これ以上は駄目みたいね!
アミリは寝室を出る。
「言っただろ! 最後まで話し聞かないと駄目だぞ。ああいう時に行っちゃ駄目だ」
「そ、それはそうなんだけど」
「けどじゃ無いぞ! 今はそっとしておいてやらないと駄目だぞ」
ソファーに腰掛けていたヒョウガが、思った通りだと言う。
「そっとしておくとは言っても、このままずっとは駄目だぞ」
「そうだよね」
それを言ってからどうしたもんかと考え込む。
「仕様が無いぞ! 俺が何とかしてやるぞ。と言っても、俺に出来る事は無いんだけど」
「何をするつもり? ヒョウガ」
「それは決まってるぞ! 自分で解決させるんだぞ」
「そ、それはそうだけど・・・・・・大丈夫な訳?」
自信が無さげに言うアミリにヒョウガは、
「まだ今日の抜いて三日あるぞ!」
―――残り三日の間に、アーティナが何時もの元気な彼女になってくれれば良いぞ!
「それよりも、これから特訓如何どうしよっか?」
「ん~ん。そうだな。特訓は必要だぞ!」
そう言うと、ヒョウガは寝室へと向かう。
ガチャッ、ドアを開けてかれが入って行く。
「何回来たって何も話さないですの」
「別に良い! それで」
「―――ヒョウガだったんですのね」
布団を被かぶったままの状態で、アーティナは何度来ても同じだと言う。
聞こえてきた声で、誰が来たかのか漸ようやく気付く。そして布団から顔を出して。
「だけどだ! 今日抜いてあと三日間の間で何とかして欲しい。じゃ無きゃこっちの集中が途切れて狂っちまうからさ」
「・・・・・・分かったですの」
彼女の返した言葉を聞いて、ヒョウガは戻ろうとしたがふと思い出したようにいう。そしてアーティナの方に話を戻す。
「忘れてた。 今から俺達は特訓に行って来るぞ!」
「・・・・・・」
ヒョウガの言葉を聞いて、アーティナは俯いたまま押し黙り。
それを最後に、彼は寝室を後にする。
「んじゃあ、どっちが空いているか分からないけど行くぞ!」
「そうだね」
「そ、そうね。行くわよ」
「分かりました」
「よし、行くよー」
リビングに座っていた他の子達に、ヒョウガは声を掛ける。
ガチャッ、玄関のドアを開けて部屋を出る。それからまず競技場へ向かう。
一方。部屋の寝室で一人残ったアーティナは。
「どうすればいいんですの?」
アーティナは誰もいなくなった部屋で、自分にそう問い質す。
―――どうすればいいんですの・・・・・・
自分なりの答えを出そうと考えるが、出ず。
どうすれば良くなるのかを模索し続けーーー
――心の整理が出来たら皆に話すですの。
と彼女は、全てが終わってから話すと心の中で決める。
二人の関係はいつから始まったのだろうか。
話はヒョウガ達の方へと戻る。
「競技場に来たのは良いけどね」
「ああ、人が多いぞ!」
ヒョウガ達が競技場に着いた時には、他のチームが使っており。
「んじゃあ、バトル施設に行くぞ!」
「わ、分かったわよ」
と言う事で、ヒョウガ達はバトル施設へと向かう。
距離はそこまで遠くなく、あっという間に着くと、四階を目指す。
目的地について、人がいるかどうかを確かめるため、中を覗き込む。
「大丈夫みたいです」
「んじゃあ、やるぞ!」
そう言いながら中へと入って行く。
入ると、直ぐに全員が武装展開を済まして、何時でも準備バッチリ。
「武装展開!!」
「武装展開!!」
五人は武装を展開する。
「んじゃあ、行くぞ!」
「準備オーケーだよー」
今回の特訓は、一対一で戦う時の為の特訓。
「風双刃剣技<炎交刃の風>!!」
「《エ・アノーク》! 行くよー」
―――はい、マスター。分かりました。
アキラの前に、契約している真っ白な妖精が現れた。
「守護魔甲術<妖精の輝壁
ヒョウガが二刀剣で炎が交じり合った風を発動すると、透かさずアキラが右腕に力を集中させて。
発動した技は、妖精の持つ力で、光り輝く壁を創り出す。
妖精の力だから、ヒョウガの放った技など容易たやすく打ち消してしまう。
「中々の技だ。 まさか俺の技を消すなんて凄いぞ!」
「そうでしょー。そう言われると嬉しいですよー」
ヒョウガがアキラを褒めると、とても嬉しそうに喜んだ。
「んじゃあ、次はミューフィだぞ!」
「宜しくお願いします」
ヒョウガに呼ばれて、アキラと交代する。
「行きます」
「ああ、何時でも良いぞ!」
ピィ――――ッ、ピッ!
ミューフィが魔笛を吹いた。
「催鳥魔術<炎隼>!」
空から突如現れたのは、燃え上がる炎を纏う隼だ。ミューフィが呼び出した鳥だ。
そしてそいつが、ヒョウガへと襲い掛かって来るも。
「能力<鎌鼬>!!」
隼に触れも打ちもせずに、大きな切り傷を付けて消してしまう。
「流石はヒョウガ先輩です」
「んや、今のは技の威力が弱すぎるぞ!」
「そうですね。今では、ルームメイトの中でワタシが一番弱いですから」
彼のと言葉を聞いて、彼女は、一番自分が弱いんだと言う。
「んなら、俺が強くしてやるぞ!」
「宜しくお願いします」
「まあ、後でだぞ!」
ヒョウガがミューフィに強くしてやると胸を叩いて言った。
ミューフィが一礼してから頼み込む。
「もう準備出来てるから行くね」
「何時でも良いぞ! カナミ」
何も言われずに出てきたカナミが、そう呼びかけ。
「武装想像<朱雀>!」
カナミが想像したものは、南方の守護神で鳥の形をした空想上の生き物。
「行け!」
指示をだ受けた朱雀は、真向から襲いかかってくる。
「風双刃剣技<風・林・火・山二刃斬り>!!」
四つの属性が、それぞれ二つの刃となって朱雀に斬りかかる。
がががががが。
全ての攻撃を食らった朱雀は、薄れて行き、最終的に消えていく。
「やっぱ、ヒョウガって強いよね!」
「ん……!? そうか」
カナミが彼にそう声を掛けると、悔しいが間違いではないため、物凄く自信有り気に言った。
「んじゃあ、次はアミリだぞ」
「・・・・・・」
「アミリ」
「ふぇ!? そ、そうだったわね」
二度目のヒョウガの呼びかけで、驚いたアミリは、それから彼の前に立つ。
「まあ、アーティナ先輩の事が心配なのは分かるぞ! んでもだぞ。今は特訓に集中しろ!」
「わ、分かったわよ」
そう言って、彼女は攻撃の準備を取る。
「い、行くわよ」
スコープからヒョウガを覗き込んだ。
「武装魔銃術〈氷雪の弾〉」
狙いを定め、引き金を引く。
ーー銃口から撃たれた弾丸。
撃たれた弾丸は、氷と雪へ変化する。
氷と雪に変化した弾丸が、ヒョウガへと飛んでいく。
「能力<暴風>!」
強い風がヒョウガの体を中心に吹き荒れて、飛んで来た氷雪の弾を吹き飛ばす。
「さ、流石ね。ヒョウガ先輩」
アミリが彼に流石だと褒める。
「んでもまあ、やっぱりアーティナ先輩が心配だから、今日はここまでにするぞ!」
―――や、やっぱり、ヒョウガ先輩もアーティナ先輩のことが心配だったわね。凄く。
胸に手を当てて、何故かホッとしてしまうアミリ。
「んじゃあ、部屋に戻るぞ!」
彼の言葉を聞いて、他の子達がうんと頷いた。




