番外編 ババ抜き
学園選抜バトル一回戦突破してから三日目のこと。
―――この日は、一回戦を突破した者たちが次の相手を決める日。
そして、ヒョウガ達は、人混みが無くなるまで待とうと、部屋の中で休んでいた。
―――三、四十分が経ったからもういいな!
という訳で、皆に向けヒョウガは言い放つ。
「んじゃあ、そろそろ行くぞ!」
「そ、そうね。先は人が凄かったからもう大丈夫よね」
「そうだよー。先のに並んでいたら人混みに殺されるところだったよー」
これの言葉を聞き、アミリは賛成とのこと。
更に、先程と違い今は大丈夫だと、そう口にして。
―――アキラも同感らしく、人混みに殺されそうになると、まるで何処かで経験があるように言う。
後の三人は、
「私も良いよ」 「アタシも、先の様な人混みは無いと思うので行くですの」 「ワタシもです」
と、賛成の様子。
そしてヒョウガ達六人は、学生寮一階にある掲示板前に向かって行く。
♢ ♢ ♢ ♢
学生寮一階掲示板前。
―――彼らが来た時には、既に先生だけしかおらず。
「アリマ。お前と戦いたいって言うチームが、八チームある訳だが、どうする?」
と先生は、ヒョウガへ問い掛けると。
「―――誰でも良いぞ!」
「そう言うだろうと思ったよ。だから、候補者達で戦ってもらう事にした。観に行くなら明後日だ。で、残った一チームとその二日後に戦う事になるからな。場所はバトル施設だからな」
二年D組を担当している男性教師が、彼から返ってきた言葉に、手を叩いて思った通りと言う。
それから予定を伝える。
「す、凄い事になってるわね」
「本当ですの! そんなに増えたんですの!?」
「んじゃあ、明後日の試合を観に行くか!」
初めての経験だったのか、挑んでくる相手が出来た事が嬉しいようで。
ヒョウガは、二日後の試合を観に行くつもりのようだ。
「んじゃあ、部屋に戻るぞ!」
「次に会うのは、五日後の試合だな。じゃあ、次の試合も頑張れ」
―――俺は、先生に部屋に戻ることを伝えてから、先生とお別れしたぞ!
と言う事で、ヒョウガ達は部屋へと戻って行く。
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450号室。
―――きょ、今日はこれからどんな特訓するのかしら?
とアミリは、ヒョウガの行動を凝視していると。
「今からトランプするぞ! んで、ジョーカーは三枚入れるからな」
「トランプするのかー。でも、どういうとランプだー」
「い、今なんて言ったのよ! トラン、プ? って聞こえた気がしたんだけど」
予想外な言葉に、アキラとアミリの二人が戸惑う。
「ん……!? ああ、言ったぞ! トランプってな。それに、偶にはこういうのしたって悪くないぞ!」
「そうだね! 偶には良いよね」
「そうですの! 楽しもうですの」
彼はアミリに返答を返し、そして言葉を紡ぐ。
―――良し、上手くいったぞ!
しめしめと、ヒョウガは目だけで皆を見る。
彼がカードをシャッフルし―――皆に配った。
ヒョウガ、カナミ、カナミ、アミリ、ミューフィ、アキラには九枚。アーティナだけは十枚だ。
ババ抜きのルールに則のっとって、同じ数字を捨てて行く。
―――アミリとアキラが残り七枚。アーティナが六枚。残りの三人が残り三枚。で、ジャンケンの結果、アミリ、カナミ、アキラ、ミューフィ、アーティナ、ヒョウガの順に。
(わ、私が抜いたのはKよ! あ、あったわね)
アミリは揃ったのでKを捨てる。
カナミがアキラのを引く―――が減らない。
アキラはミューフィから引く。Aが来てあったので捨てる。
ミューフィはアーティナから取り。
(ん……!? さては、アーティナが持ってたジョーカーを引いたな。表情が微妙に変化してるぞ)
とヒョウガは、気付いた。
「なあ、ミューフィ。今ジョーカー引かなかったかだぞ?」
「否、引いていません」
「んや、引いたぞ! 表情に出ているぞ。全然変化してないように見えてな」
「・・・・!?」
―――少しではあるが、彼の真の狙いに気付いたよう。
アーティナは、ヒョウガから引くも揃わない様子。
ヒョウガはアミリから引くのだが―――
「なあ、アミリ」
「な、何よ!」
「ジョーカー持ってるだろ! 絶対」
「な、何でそう思うのよ!」
「表情、目線で大体分かるぞ! 見抜かれないように気を付けるんだぞ!」
(わ、分かったわよ! ヒョウガ先輩の意図が・・・)
―――見抜かれたアミリも、彼の意図に気が付いたに違いない。
そしてヒョウガは、アミリから引く。取ったのは九だ。
次にカナミからアミリが引いた。四を引き、揃ったので捨てる。
アミリは残り三枚。
カナミの番が来てアキラの方から引く。出たのは九。揃わない。
アキラはミューフィから引いて、二が来て揃ったので捨てる。
ミューフィがアーティナから引くが揃わない。
アーティナがヒョウガから引くが揃わない。
(ん……!? どれが大丈夫なんだ? 先と違って表情が読み取れなくなったな)
悩んだ末に引いたのが、Kだった。揃ってくれたので捨てる。
アミリがカナミから引くが揃わない。
カナミがアキラから引いたも、揃わない。
アキラがミューフィから引くが揃わない。
ミューフィがアーティナから引いた。揃った残り二枚。
アーティナがヒョウガから引く。揃った残り四枚。
ヒョウガは、アミリからQを引いて揃って捨てる。
次にアミリが、カナミから引いて揃う。
カナミがアキラから五を引いて揃い捨てる。
アキラがミューフィからジョーカーを引いて、揃い捨てる。
ミューフィがアーティナから引くが揃わない。
アーティナからミューフィが引くも揃わない。
アーティナが十を引いて揃う。
ヒョウガがアミリから引いて、アミリが上がった。
カナミがヒョウガから引いた。出たのはジョーカー。
カナミのをアキラが引く。揃わない。
アキラがミューフィのを引く。出たのはJだ。揃い捨てる。
ミューフィのをアーティナが引く。その時点でミューフィが上がるのは決まり―――。
アーティナは、八が揃い捨てる。
アーティナのをヒョウガが抜いて、その時点で二人とも上がる。
(ど、どっちが勝つのかしら。アキラ? それともカナミさん?)
カードの数で長く続き―――。
―――そして、等々数が二、一になった。
(右がジョーカーかな。じゃあ左だね)
カナミの勘は運よく的中。
「ウチがビリになったよー」
悔しそうに嘆くアキラを余所に、ヒョウガが口を開く。
「このババ抜きの目的が分かったみたいだぞ!」
「アタシの想像はこうですの。バトル中などで、表情で思っていることを読まれないようにする特訓」
「まあそんなところだぞ! 相手に行動を読まれたら勝ち目なんて無いだろうし」
自らそう切り出すヒョウガに、アーティナが導き出した答えを口に出す。
それを聞いたヒョウガは、良い所を突いていると言った後で、補足し。
―――お、思った通りね! その為にババ抜きをさせるなんて、ヒョウガ先輩も考えたわね。
アミリは、彼の顔を凝視する。
「それでどうでしたか?」
「ああ、最初はバレバレだったぞ! あれを気付かない奴は余りいないと思うぞ!まあ、後半からは良くなったぞ」
「やっぱそうだよね」
「本当意外だったなー」
ミューフィは特訓の結果を聞くと、ヒョウガが思ったことを伝え。
彼の言葉を聞いて、最後に残っていた二人が成程と言う風に納得した。




