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この運命を天使《キミ》と共に  作者: 事故物件住まいの伽藍鳥
2章 怨みの象
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終幕 殺戮者を守る者

これは、猟魔が生み出された話と十悪内の話しである。


話しは二千年以上前に遡る。


 猟魔が生み出されたのは、まだこの国が一つだった頃だ。


 そして、猟魔を生み出すことになる青年は、何人もの人を殺して、何体もの動物を手に掛けて来た、殺人鬼である。


 彼がその行為に及ぶのは、ゾッとする様な理由であった。それは、人の死ぬところが見たかったとか、動物の憐れむ姿が見たかったからと言う殺戮者の様なモノであった。


 そんな彼は、捕まることを恐れて、森を逃げ続けて、山奥を逃げ続け、挙句に果てに山小屋に身を潜めることにした。

それから何日も身を潜め続けていた。食事には困らない。何故なら食料が沢山あるからだ。

だがある時、招かれざる客がそこを訪れた。


 トントン。トントン。ドアを叩く音が響く。


 「ここに居るのは解っている。捜査隊だ!」


 「こんな所で終わるわけにはいかない。もっとこの手で人の殺めて、死に逝く顔が見たい」


 「何馬鹿な事を言ってる。さっさと出て来ないと、突入する」


 青年の強い思いに応える様に、突然黒い光が心の中から出て来た。

 見る見るうちに形が出来て行く。


「君は誰だい?」


 「しゃあ、しゃしゃ。デニアにも分からないしゃあ」


 青年の目の前に、黒い光から現れた禍々しい雰囲気を醸し出す髪が肩まである、人外と思わしき者がいる。


 「何独り言行ってるんだ。突入だ!」


 忠告をするも、一向に出て来ないのに痺れを切らして突入した。


「何だ、お前は?」


 「しゃあ、しゃしゃ。聞くなしゃあ」


「まあ良い。そこを退け!」


 「しゃあ、しゃしゃ。デニアを生み出した人間に、手を出したら許さないしゃあ」


 それだけ言うと、猟魔は、捜査隊の一人に触れる事無く吹き飛ばし、更に皮膚を傷つけた。他にもいた捜査隊も同じように。


「君強い。一体何者?」


 「デニアにも分からないしゃあ」


 余りの強さに圧倒される青年は、その正体が気になった様子。


 そこに捜査隊の中で偉そうな男性が一人来た。後ろには、人型の魔物が付いて来ている。


 「人外の者を連れた人殺しの青年が、この小屋に居るって、態々係長の俺が駆けつけてやって見れば」


と、一旦区切り、


 「そう言う事か。俺が連れてる奴とにたような奴か」


 「マフと同じ十悪の一体ライ。きっと殺生から生まれたんライ」


 係長の隣に並んだ同じだと伝えられた。

 そう告げられて、嫌そうなそぶりを見せない。

それどころか嬉しそうである。


 「マフは、妄語から生まれた吐魔(ライ)。お前は?」


「デニアの名前は・・・・」


「猟魔でどうだい」


 係長の隣にいた悪魔が自己紹介して、殺生から生まれた悪魔に名前を聞く。


 戸惑う彼女に変わって青年が名前を付けた。


 「リューナしゃあ。その名前で良いしゃあ」


 こうして、猟魔と言う名前になった。


 それから二人は小屋を出て、誰にも見つからぬように森の中を歩いていた。すると、悪魔の足が止まった。


 「マフとリューナはここでお別れライ。元気でいてライ!」


「どういう事かな?」


 青年の問いかけに、吐魔は答えた。


 「仲間やボスの所に行くライ」


 「そうか、分かった。じゃあな」


「またなしゃあ」


 それを言い終えると、空へと飛んでいく。


 その別れを最後に、生みの親とは一度も会う事は訪れはしない。



そして話は、現在に戻る。


 場所ーーー南西南都市最奥部。通称悪魔の森。

 ここで今、十悪全員が集まって話をしている。


 「漆魔(シェイマ)がやられて、更には、勝手な行動をしていた猟魔(リューナ)までも勝手にやられちゃって。一体何をしちゃってるのよ。もう。(しっか)りしなさいよね!」


 「しゃあ、しゃしゃ。確か、アリマ・ヒョウガ。って言ってたかしゃあ。それとあの天使は、中々の強さしゃあ」


 その中で、見た目は幼い幼女で、服装は、お姫様が着る派手なドレスを纏っている。手には扇子を持っている少女、邪姫(じゃき)が二人を叱咤する。


 猟魔は天使使いで可成りヤバい男の名前を出す。


 「マフもそう思うライ。リューナ、そんなに強いライ? アリマ・ヒョウガと言う輩は」


 「しゃあ、しゃしゃ。そうなのしゃよ。漆魔よりも全然強いデニアが勝てなかったしゃあから。彼奴は油断が出来ないしゃあ」


 隣に並んでいた吐魔が、猟魔に問うと、どれだけの相手かを伝える。


「それは興味深いライ」


 「それはもういいから。他にないの。その人はもう飽きたから。他のこと!」


 吐魔は興味有り気ではあるが、邪姫の方はヒョウガのことに飽きて来たので、別のことを言うものが出た。


 「ここ何日ですが。別の天使使いが現れたようだ」


 「何それ!? どんなやつ? ワクワクしちゃう♪」


 別の天使使いの話題が出て来たからか、邪姫は凄く楽しそうだ。


 「一人は動物を連れた天使使いだ。そいつの強さは半端なかった」


と綺語から生まれた悪魔が言うのであった。


 あっと言う間に、十悪内では、その天使使いが現れた話しだけが広まって行った。

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