番外編8 幼馴染みの片想い
時刻は三時五分。
アミリとアキラの二人は、其々終わったプリント類をファイルに仕舞う。
他の雑誌と共に鞄の中に入れて、帰ろうと部屋を出ると。
「一寸待って! おやつでも食べて行って」
「い、良いわよ。そこまでしてくれなくてね」
「そうだよー」
ヒョウガの母がに足止めをされた二人に、おやつに誘う。
二人を断りを入れるが、
「お願いだから食べて行って! じゃなきゃ買って来た意味が無いわ」
そう、ヒョウガの母は、気付かれぬ僅かな時間で、コンビニまでスイーツを買ってきていたらしく。
「何時の間に-!?」
「しょ、仕様が無いわね。食べて行ってあげるわよ」
ヒョウガの母の、執念と用意周到さに負けて、二人はおやつを食べて行くことに。
なので、リビングに戻って行った。
リビングルーム
ヒョウガは、冷蔵庫の中から、買って来たと思わしき、ダブルチーズケーキとマンゴープリンを机の上に出す。
「こ、このダブルチーズケーキ、美味そうよ」」
「ああ、本当だぞ!」
アミリが口から涎を出してそう言うと、ヒョウガも美味しそうだと賛同する。
「じゃあ、食べるよー」
「い、戴くわよ」
「んじゃあ、俺はカキ氷食うか」
二人が食べ始めるのを見て、俺は、椅子から立ち上がって冷蔵庫に向い、冷凍庫の方から、 抹茶小豆のカキ氷を取り出したぞ!
と、ヒョウガは解説した。
パクッ、
「……ん~ん。美味いわよ!」
パクッ、
「……ん~ん。美味いよー。マンゴープリンサイコー!」
「シャリシャリ。……ん~ん。冷たくて美味いぞ!」
三人がそれぞれ感想を言う。
ヒョウガの母は、アイスコーヒーを飲んでいるだけ。
パクッ、パクッ。パクッ、パクッ。シャリシャリ。それぞれの、食べる音が聞こえて来るだけ。
「ふう~~。う、美味かったわね」
「う~ん。美味かったよー」
「カキ氷って夏らしくて、其れに美味かったぞ!」
食べ終わってから、それぞれ思い思いのことを言う。
それからヒョウガが、アミリのフォークと、アキラの使っていたスプーンを回収して、洗い場に持って行った。
ダブルチーズケーキの入っていた、入れ物と、プリンの入っていたカップをゴミ箱に捨てた。
ヒョウガの母が、自分のコップと一緒に、他の物を洗う。
ゴシゴシ、ゴシゴシ。ざあざあ。ゴシゴシ、ゴシゴシ。ざあざあ、ざあざあ。を何度も繰り返し繰り返し行く。
時刻は四時を回った所。
アミリとアキラは今度こそ帰ろうと、玄関の方へと歩いて行く。
「あ、ありがとうよ。それと、お邪魔したわ」
「今日はありがとー。御陰で終わったよー。じゃあ、お邪魔したー」
「うん。此方こちらこそ久し振りに勉強できたわ。ありがとう。じゃあ、また何時でも御出でだわ」
アミリとアキラが、玄関の所でヒョウガの母にお礼と挨拶をすると、何時でも又おいでと言ってくれ…
玄関の扉を開けたところ、ヒョウガも外に出て見送りに行く。
「んじゃあ、また明日な!」
「きょ、今日は勉強教えてくれてありがとうよ。感謝するわ! また明日」
「また明日だよー」
「気を付けて帰るんだぞ!」
ヒョウガが二人にお別れを言うと、二人はお礼を言う。
すると今度こそ、
「わ、分かってるわよ。じゃあ、今度こそまたね」
「ウチも分かってるよー。じゃあ、本当にまた明日だよー」
背を向けて二人はそれぞれの家の方に向って帰って行く。
それを見送ったヒョウガも家の中に入って行く。
こうして、夏休み最後の大仕事は終わりを迎える。
黄昏時。
デパートの帰り道、カナミはエイトとバッタリ一緒になった。
「やあ、カナミ。終業式振りだね、買い物?」
「エイト、こんにちわ! うん、直ぐそこのデパート迄ね。 エイトは?」
「僕はのんびり近くの喫茶店でコーヒーを飲んできんだよ。 普段は落ち着けないからね」
カナミが手に持つ袋から、そう尋ねると。
デパート帰りだと伝える。
エイトのルームメートは世話しないらしく、憩いの場として喫茶店へ行ったようだ。
「コーヒーって良いよね! 私も良く飲む。リテルーコーヒー昨日飲んだよ! あれ美味しいね」
「カナミも分かるかい!? コーヒーの良さ。リテルーコーヒー確かに美味しいよね、僕も良く飲む。他のも」
「家で淹れたりもするからね! 市販も多いけど」
「じゃあ、今度飲ませてくれないかい?」
と珈琲の話で盛り上がり、カナミの意外な特技が顕に。
そんなエイトの提案に、
「じゃあ、今から家来る? 何ならコーヒー淹れてあげる」
「カナミが良いなら行くよ」
「じゃあ、決まり」
カナミの誘いに乗る。
二人はそのままカナミの家に向かう。
歩くこと十分足らずで到着。
住宅街に入って直ぐのところに佇む一軒家。
「只今」
「お邪魔します」
「おお、久しぶりだね、エイト君。いらっしゃい。この時間と言うことは晩ご飯食べていくよね」
玄関を空けてカナミに続いてエイトも入っていく。
すると、カナミの父が挨拶を交わす。
そう、カナミの家に来るのは始めてではない。
昔はヒョウガと二人で良く来ていたから。
中に入ると、タイミング良く料理が出来上がった頃で。
早速リビングへと案内され…
食卓に並んでいるのは、グラタンに、鶏肉の赤ワイン煮、シーフードサラダ、お味噌汁だ。
「あら、エイちゃん久しぶり! ささ、座って! ご飯盛そって上げる」
「ありがとう!」
カナミの母は、エイトに挨拶を交わすと、座るように促す。
カナミと父も椅子に座る。
そしてお茶碗にエイトの分のご飯を大盛盛そう。
母も自分の分を盛そい終わると、席に着く。
「「「戴きます」」」
そう言って食べ始めた。
「大分久々にカナミの母さんのご飯食べたけど、凄く美味しいよ」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
カナミの母の料理はどれも美味く、流石としか言えない。
何故なら料理の先生だから。
だからか、料理がどんどんと無くなっていく。
そして間食すると。
「で、二人は付き合ってるの?」
「やっぱりそうなのか?」
「全然そう言うのじゃないからね! 偶然デパートの帰りにバッタリあって話してるうちにそう言うことになったわけ」
母の思いがけない一言に、父も予想してたのだろうか。
がーーーカナミは違うと言い、経緯を説明する。
すると、
「そうだろうと思った」
「何だ、違うのか」
と両親は言う。
少ししてから、カナミがコーヒーを四人分淹れる。
「それじゃあ、頂くよ」
「どうぞ召し上がれ」
ゴクッゴクゴク、
「ん~。薫りも良くて、何より味も良い! とても美味しい」
「それは良かった。ヒョウガたちにはまだ飲ませてないんだけどね」
「あ、飲むとしてもヒョウガとミューフィちゃん位かな」
エイトの飲んだ感想に、カナミは嬉しそうに言う。
飲ませたのは両親以外初めてらしい。
「ホント、カナミはコーヒー淹れるの上手のよ! お父さんの影響かしら」
「確かに教えたのは僕だけどここ迄上達するとは思わなかった」
どうやら父親の影響らしく、積み重ねた経験で父すら驚く程に迄なったようだ。
「そうだったんだね! 通りで美味しいわけだ」
美味しさの秘訣を、エイトは知れたらしく。
「後は愛情を感じる。何時も飲んでるのとは違う」
カナミが顔を赤らめながら。
「違うって、何時もと変わらないって」
そう否定するが、どこか世話しない。
そんなカナミをおいといて、両親に挨拶をして、荷物を整えで玄関へ行く。
そこへ遅れてカナミもやってきて、
「じゃあ、僕は帰るよ」
「じゃあ、また明日ね」
「また明日。今日は楽しかった」
「私も楽しかった。じゃあお休み」
「お休み」
二人は言葉を交わす。
二人とも夏の思い出を少しでも作れたらしく。
別れを良い、エイトはカナミ家を後にした。
そして、カナミはもどかしさを残して夏休みは終わりを向かえた。




