31話 夏祭り2
ヒョウガとアミリは唐揚げ屋さんに向う。
何人もの人が並んでいた。自分達も並んで、番が来るのを静かに待つ。
何分か経つと、漸く番が来た。
「唐揚げ二つ下さいだぞ!」
「分かりました。八百円ですよ」
ヒョウガとアミリは、自分の分である四百円づつ払う。
「丁度ですね。どうぞ!」
店員のオジサンが唐揚げを手渡して来る。
「どれどれ。ふう~ふう。パクッ・・・ん~ん。美味いぞ」
「ホ、本当! ふう~ふう。パクッ・・・うん。熱々で美味しいわね」
唐揚げ屋さんの近くの、ちょこっと座れるところがあったので、二人は今かった唐揚げを食べる。
二人ともとても美味しそうな顔をする。
「それ貰うぞ! 捨ててきてやる」
「そ、その、ありがとうよ」
「どう致しまして!」
ヒョウガに、空の紙コップを渡す。それから、戻って来るのに気付いてアミリは立ち上がった。
――そ、そう言えば今更だけど、ふたりきりになるのって一緒に……寝た時以来よね。意識するとすごく緊張するわね
すると、アミリが少し頬っぺたを桜色に染まっていく。
「んじゃあ、次はどこ行こうかだぞ!」
「ふぇ!? ああ! い、今のは何でもないわよ。忘れなさい。そうね、ライスボール屋さんがある。買って来るわね」
「ん……!? ああ、分かったぞ!」
アミリの慌てっぷりに、何も聞かないでおいたヒョウガ。
左右を見回しながら、次はどの店に行くか聞くと、アミリが、買いたいものを見つけた。
なので、少ない列に並ぶ。
待つこと数分。ライスボールを買えて戻ってくる。
「それ、美味しいのか?」
「お、美味しいに決まってるわよ! 一口上げるわよ」
「ふう~ふう。パクッ・・・ああ、確かに上手いぞ! イケる」
優しいアミリが、一口くれたので食べてみると、癖になる味。
勿論だが、残りは全部アミリが食べた。
カナミ達の方はと言うと。
「今頃、アミリちゃん達も楽しんでるだろうね」
「そうだよー。先ずは、焼きそば買おう」
と言う事で、焼きそばの屋台に向っていく。
「焼きそば一つくださーい」
「はいよ。三百円だよ」
列に並んで何分かして、アキラの番が来た。
アキラが注文を言うと、焼きそば屋のお兄さんが値段を伝える。
「これでー」
「はい、丁度ですよ」
隣で焼きそばを焼いていた、お姉さんがプラスチックの容器に入れて、箸と一緒に渡して来た。
「私も食べよっかな。お兄さん、此れください!」
「はいよ。三百円ね」
「済みません。五百円でお願いしますね」
「はいよ。二百円のお返しですよ」
ピッタリないカナミは、五百円を出す羽目に。
そしてお釣りの後で、焼きそばと箸を受け取る。
座れる場所を、アキラが見つけていて、そこで焼きそばを二人は食べる。
紅生姜と青海の苔りの香りが強い。
「美味しー」
「うん。美味しいね! やっぱお祭り来たら、焼きそばだよね」
「カナミ先輩の言う通りだよー」
アキラが味わって出た感想に、カナミも同じように感じた。お祭には欠かせない物だと付け加えていた。
それを聞いたサラは、共感を得たように言う。
食べ終わると二人は、ゴミを捨てに行く。戻って来ると、四人は動く出す。
「次は、どこに行きましょう」
「アタシ、あれ買ってくるですの」
そう言ってから、アーティナは揚げ蛸の屋台に並びに行く。
並んで後、六分が経過すると、番が回ってきた。
「野菜たっぷり揚げ蛸をくださいですの」
「毎度有り。お一つですね。四百五十円になります」
「分かったですの。確かあったような。一、二、三百。百円足りなかったですの。済みませんが、五百円でお願いですの」
「はい、五十円のお釣りです」
お財布に五十円玉を仕舞って、揚げ蛸を受け取る。
後ろの所で待つカナミ達の所に戻り、しゃがみ込む形で食べ始めた。
「ふう、ふう。パクッ、・・・・ん~ん。熱い。でも熱々で美味しいですの」
凄く湯気が立ってるので、吹いて、少し冷まして口に入れ。
野菜の甘みと、蛸の旨みが引き出されて口の中に広がって行く。
あっと言う間に間食した。
立ち上がって、近くにあったゴミ箱に捨てた。
「それじゃあ、この後は、どこに行こうか!」
「そうですのね」
カナミが聞くと、アーティナが悩み込む。
ヒョウガとアミリの現在はと言うと。
射的屋の中に居た。
「む、難しいわね。思ったより。私の武器は銃だって言うのに、もう~。何で全然当たらないのよ」
「こういうのは、コツがいるんだぞ。こうやってだな‥…」
前のめりになって、的を狙うアミリであったが、どれだけ狙っても当たらない。凄く悔しそうにしている。
その光景を、直ぐ近くで見ていたヒョウガが、腕を使って体で教えた。其の時。
バンッ、ポトン。
アミリが、何度も狙っていたウサギのぬいぐるみに命中して倒れて落ちて行く。
「そ、その、ありがとう。教えてくれて」
「ああ、どう致しましてだぞ!」
キュンってしてしまいそうなほどに可愛い微笑みで、ぬいぐるみを抱きしめる。
――ん……!? 何だ、この胸が締め付けられるような感じは?
何時もの様に、ヒョウガは言葉を返す。
ーーーだが、心の中で言葉に出来ない突っかかりを覚える。
「んじゃあ、次はどこ行きたいんだ?」
「そ、そうね。チョコバナナが食べたいわよ」
「んじゃあ、俺も食おうかな」
なのでチョコバナナの店を探すこと数分。ついに見つけた。
そして少しの列に並ぶ。
「チョコバナナを二つくれ!」
「そ、その・・・・・・一寸待ちな……」
「はい、七百円になります。どうぞ、チョコバナナ二つ」
ヒョウガが財布を出してるので、アミリが言おうとするも店員がそれを邪魔して、奢ってもらう事に。
アミリがチョコバナナを二つ受け取る。
「ひ、一言も奢って何て頼んでないんだから。で、でもありがとう」
「俺の気持ちだから良いぞ!それに、どう致しましてだぞ」
と返すと。
「は、はい、これ」
「ああ、ありがとだぞ」
ヒョウガがお礼を言うと二人とも食べ始め。
パクっ、
「……うん。ん~ん。う、美味いわね」
「ああ、美味いぞ!」
二人は同じように感じていたのだった。
「チョコ落ちたぞ!」
「あ、ホ、本当ね。やっちゃったわよ。浴衣の上じゃなくてよかったわ」
「そうだな。浴衣の上だと、後で大変だぞ!」
チョコバナナのチョコの部分が落ちたので、ヒョウガが言った。浴衣の上じゃなくてよかったと安心していた。
ヒョウガは、アミリの顔へと近付いていく。手も一緒に。
――な、何よ。ま、まさかキスするつもり? 人目が無い事を良いように。で、でも急すぎるわよ。未だ告白もまだされて無いんだから
ーーー口にチョコついてるぞ! 気付いて無いな! 仕方ないから取ってやるか!
アミリの妄想を余所に、頬っぺたに着いたチョコを見て、ヒョウガは思う。
アミリは、キスの衝動を待つが一向にやってこない。代わりに頬っぺたに手が触れた。
「な、何したのよ。今!」
「何って、ほっぺについてたチョコを取っただけだぞ。パクッ・・・・・・」
「な、何してるのよ。た、食べたわよね。今!? か、間接キスよね」
「もったいないから食ったぞ。間接キスでも良いぞ!」
目を開けてみると、ヒョウガが指にチョコをつけて口に入れ。
何も気にする様子が無い。
アミリは頬を赤らめて恥ずかしそうにする。
――ど、どういう事? 間接キスで良いって? 間接キスで良い? 間接キスで、間接キスで良い? 間接キスで良い? どういう事よ。
アミリは、頭の中で何度もその言葉を繰り返すが、どう意味か分からない。
そして、二人は動き出す。
途中で棒をゴミ箱に捨てた。
辺りが真っ暗になったからではない。花火がもう直ぐで始まるから。
丘の方へと、彼はアミリの手を引っ張って急ぎ足で駆け出す。
「ぜえ~ハ~ぜえ~ハ~。急いだから疲れたぞ!」
「はあ、ハア。つ、疲れたわね。腕引張り過ぎよ。痛いわよ。後、もう離しても良いわよ」
「ああ、分かったぞ」
ヒョウガが、急ぎすぎて疲れてると、アミリも疲れている。それに引張り過ぎと怒った。
流石にやり過ぎたと後で気付く。




